2018年7月6日、長野県の「女性ゼロ議会」川上村を訪ねた。レタスで成功した富裕な村として知られる。12人議員はすべて男性のみ。女性は候補にも出ていない。

役場の応接室で行政担当から、実情を伺った。

中島企画課長(男)、由井係長(男)、原男女共同参画担当(女)の発言を要約する:
「(女性議員ゼロの件)隔絶されてる地理的特徴から、外の情報がはいってこなかった。封建性が残る」
「(昔は嫁が来なかったという佐々木都さん(注)の話に対して)今は、川上村に魅力があり、外から嫁になる人が多いようだ。後継者不足はない」
「女性は出ていっちゃう。農家の後継者に女性しかいない場合もいるが、後継女性が、男性に負けないくらいやっている人は、知らない」
「(家族経営協定に対して)やっていない。そんなことするとギクシャクするのでは。うまくいっている。若夫婦、老夫婦という分け方はあると思うが、嫁に対して給与とか休暇とかということはない。まったく、うまく行っている」
「(DV、セクハラについて)デリケートな問題なので私どもは把握していない」
「(DVセクハラの中身ではなく窓口の有無は)保健福祉課が担当。窓口はあると思うが…」
「(男女共同参画計画・条例)つくってない」
「(男女共同参画施策について)元気づくり支援金を活用して、女性が参加できるイベントをした。外部から講師を呼んで、女性が女性を支援するもの。『もうそう会議』という名。こんなことをしていきたいねという女性の声を出し合った」
「川上村女性応援チームWAO ができた。よそからきた若いお嫁さんが中心」

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レストラン「樹木里(きぎり)」で村の女性たちから実情を伺った。そのポイントを要約する。

「子育てで忙しくて、村の議会に興味を抱くことはなかった。選挙がやってきても、男の人が出るもんだ、と見ていた。何か言ったところで何か変わるのかな、という思いはある」
「県外から川上村に嫁いで、一番びっくりしたのは『まけ』。親戚グループでつくる集団のことで、要するに苗字でまとまっている組織。昔から村にある。その『まけ』から今年は議員を出す、と決める。その『まけ』に女性がはいることは絶対ない」
「今年はうちの『まけ』から選挙に出るとすると、1000万くらいかかるらしい。立候補する人が用意する。選挙の前の飲み食いに使う。『まけ』の代表になるまでにカネがかかるということだ」
「(飲み食いや会合に)長靴をはいて行くと聞いた。長靴だと中にお金をいれてもらえるのだ」
「(議員は月16万1000円だ)初めて議員がいくらもらっているかを知った。けっこういい額ではないか。他人ごとだから、全然知らなかった」
「この『まけ』にオンナの人がはいることは絶対ない」
「何につけ、女性が出るという風習は、この村には絶対ない。女性が一歩出ることは絶対ない。子どもは男女別なく宝だ。でも、大人になって、嫁さんになったら夫に従うものだ、と観念している」
「葬式など行事も『まけ』が手伝う。葬式でも女性が後から食べたりする。お手伝いするのが女の人だから」
「男尊女卑大好きな村だ」
「農業の家の嫁の待遇が過酷だ。嫁は舅姑から、遊びに行ってはいけないとか言われる。農家の嫁というスタイルが確立していて、はずれると変な目で見られる。3世代同居もあり、昔はこうだったと、今の女性たち(嫁)の生活を制約しようとする」
「当主が座る場所や嫁が座る場所が決まっている。嫁の位置は決まっている。一番身分が低いのは嫁」
「夫が死んでも、長男が喪主になり、彼女は喪服も着られず平服で参加、葬式にも参加させてもらえなかったと聞いたことがある。川上村は8地区あり、その中でも封建的な地区ではそうだった」
「出る勇気が出ない。疲れるんです。ある会議に行って、相手の人が私に先にあいさつした。それを見た〇〇という肩書の男性が、私に『今度、〇〇に出たらいいじゃないか。女の〇〇に出てみやがれ』と言った」
「昔、この村では、郵便で新聞に投稿するとき、自分の近くのポストには入れないと聞いた。誰かに見破られないように」
「自殺された方が何人かいると聞いた」
「女性同士で、文句言ったり、愚痴をこぼしたり、しょっちゅう。それが外にもれて大騒ぎになった」
「父ちゃんをさしおいて何事かと言われる」
「お姑に止められたとも聞いた」
「男の人だけからの声を聞くと、農家がうまく行っているように思ってしまうのでは」


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 ▲全国フェミニスト議員連盟「女性ゼロ議会撲滅キャンペーン」のメンバー(20180706)

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▲「女性ゼロ議会」の長野県川上村村議会(「2017川上村要覧」 p27)

【注】佐々木都さんは長野県佐久市の老舗旅館「清集館」の女将。佐久に根をはって女性の地位向上に発言してきた。川上村で、かつて審議会員として働いたことがある。今回、全国フェミニスト議員連盟の「女性ゼロ議会撲滅キャンペーン」プロジェクトが企画した川上村訪問団に加わった。



候補者男女均等法は我々が望んでることではない(長野県自民党)
「政治分野における男女共同参画推進法案」可決
徳島県北島町「女性ゼロ議会」脱出なる
4月7日(土)は奈良に行こう!
女性ゼロ議会をなくそう!(岐阜県関市)
藍住町長・町議会議長に謝罪要請(フェミ議連)
報告「なくせ女性ゼロ議会 増やせ女性議員@群馬」
政界への女性進出を促す法案、国会へ
今治市に女性議員誕生
女性ゼロ議会「栗原市」を訪問して
女性ゼロ議会、5議会にひとつ
サロン下諏訪にて女性と政治談議
女性議員日本一の影に女衆(おんなしゅう)あり!
アテネ宣言

[2017.7.15 更新]
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by bekokuma321 | 2018-07-07 12:07 | その他

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「候補者男女均等法なんて知らない」(長野県下諏訪)
長野県の女性ゼロ議会撲滅&女性議員増を求めて(岡田夫佐子)
候補者男女均等法は我々が望んでることではない(長野県自民党)
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by bekokuma321 | 2018-07-05 14:24 | その他

「聞いたこともない」「知らなかった」「どんな法律かわからない」

6月25日、長野県の下諏訪で、先月施行されたばかりの「候補者男女均等法」の勉強会があった。冒頭、元下諏訪町議の樽川通子さんが、「残念ながら、これが、わが町の声だ」と紹介した。

「候補者男女均等法」は、選挙の際の候補者をできるだけ男女同数にするよう政党などに求めた法律だ。この5月、国会で成立、施行された。何度もマスコミに載っていたので、よく知られているだろうと思ったが、甘かった。

こんな一般市民の無頓着を知ってか、長野県議会の自民党萩原清幹事長は「国で法律を決めて勝手にやっている話で、我々が望んでいることではない」とバッサリ。国民民主党の下沢順一郎幹事長は「やる気があっても気持だけではむずかしい」と消極的だ。2人の幹部の本音をスクープをしたのは、朝日新聞長野版 2018.5.25

長野県議会には女性議員は5人、わずか9%。市町村議会は10%~15%だ。男性議員だらけの「女性ゼロ議会」は11町村ある。嘆いていても女性議員は増えない。集まった人たちで、法律を読み合わせをして、内容を確認しながら、知恵を出し合った。最後に、長野県会の自民党や国民民主党に対して、法律を守ってほしいというような要望書を出そうと、皆で決めた。

このような会が、日本列島津々浦々で開かれるべきだ。女性たちから開催企画が出たら、行政や政党は必要なサポート(PR代、場所代など)を出すーーこうしたことも法は期待している。

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 ▲長野日報。2018.6.26

長野県の女性ゼロ議会撲滅&女性議員増を求めて(岡田夫佐子)
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by bekokuma321 | 2018-06-30 22:01 | その他

c0166264_6243927.jpg6月25日(月)、「候補者男女均等法ができた!さあどうする? 樽川通子さんに三井マリ子が聞く」と題した会合に名古屋から参加した。

会場は、JR下諏訪駅から歩いてすぐの食堂「サロンしもすわ」で、樽川通子さんが運営する。

「女性100年会議」のメンバー、「長野県長寿社会開発センター」の日本一の長寿社会への施策に取り組む方とか、「アートミーティングすわ」の方などに加えて、今井正子県会議員や周辺自治体の現職・元職議員、新聞2社の記者など、多彩な顔触れであった。

まずは「候補者男女均等法」を知らなかった、話題になることはなかった、との声があがったので、新聞のコピーや候補者男女均等法の要約が配布され、皆で読みあわせした。三井さんの簡単な解説があった。

長野県内「女性ゼロ議会」11町村に女性議員を誕生させるには、長野県議会に女性議員を増やすには、という難問に、樽川さんは、経験をもとに「女性議員を増やすことが大事だとアピールしてマスコミに報道してもらう、そして、女性議員を増やすための組織力」だと強調した。

次に地元長野県議会の自民党議員幹事長や、国民民主党幹事長による「候補者男女均等法」を無視するかのような発言を放置しないためにどうすればいいか、について意見交換した。

議会で質問をすることに加えて、市民として2人に発言撤回を求める「要請文」または、各政党に「公開質問状」形式で尋ねる、などがあがった。結論は、「集会参加者一同」として、「要請文」または「公開質問状」を出すという提案を、全員一致で決めた。

「だれか文案を書いて下さる人いませんか」との呼びかけに、間髪を入れず手をあげる人もいて、とんとん拍子に話は進んだ。長野は「長寿日本一」だけではない。樽川通子さんが、過去10年間に渡って取り組んできた女性議員を増やす活動が根をはっている、と感じた。有意義な会だった。

岡田夫佐子(全国フェミニスト議員連盟世話人、さみどりの会


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【写真上:樽川通子元下諏訪町議。撮影三井】
【写真下1,2:「どうしたら候補者男女均等法を生かせるのか」と参加者。撮影岡林】
【写真下3:1999年3月全国一斉に行った「女性と政治キャンペーン」長野版。サロン2階に飾っていた思い出の写真。接写三井】
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by bekokuma321 | 2018-06-27 06:43 | その他

「候補者男女均等法」が国会でやっと成立した。

各地の政党幹部は、いったいどう考えているのか。

たとえば長野県。長野県議会の自民党議員は全員男性だ。朝日新聞(2018.5.25)によると、萩原清幹事長は、女性議員が誰もいないことを悪びれるどころか、法律をこうバッサリ。

「国で法律を決めて勝手にやっている話で、我々が望んでいることではない」「(女性に)積極的に出てもらいたいということはないし、特段の働きかけはしない。とにかく地方はそんなに簡単にはいかない」

また、長野県議会の国民民主党も女性議員はゼロ。下沢順一郎幹事長は「やる気があっても気持だけではむずかしい」ときわめて消極的だ。

長野県議会の女性議員は、56人中わずか5人。割合にして1割以下だ。世界193カ国中160位と烙印をおされた衆院における女性1割より少ない。

県議会ばかりではない。男性議員だけの「女性ゼロ議会」は12町村もある。

「候補者男女均等法」も施行された。政党こそ、男性偏重政治を反省し、改善のポーズぐらい見せてくれるはず、と思いきや、この堂々たる無反省ぶり。頭がクラクラしてしまう。


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 ▲「女性議員 県内は『輝いてる?』」朝日新聞 信州プラス 2018.5.25

【追記】朝日記事の筆者岡林佐和記者は長野県の市町村議会における女性率の高さに注目する。そして、その牽引力の一つとなった樽川通子元下諏訪町議による「女性議員をふやすネットワーク・しなの」の永年の活動を紹介している。

「政治分野における男女共同参画推進法案」可決
徳島県北島町「女性ゼロ議会」脱出なる
4月7日(土)は奈良に行こう!
女性ゼロ議会をなくそう!(岐阜県関市)
藍住町長・町議会議長に謝罪要請(フェミ議連)
報告「なくせ女性ゼロ議会 増やせ女性議員@群馬」
政界への女性進出を促す法案、国会へ
今治市に女性議員誕生
女性ゼロ議会「栗原市」を訪問して
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サロン下諏訪にて女性と政治談議
女性議員日本一の影に女衆(おんなしゅう)あり!
アテネ宣言
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by bekokuma321 | 2018-06-16 13:18 | その他

1人の女性がこう言った。

「今日、ここで『人形の家』のノラに出会うとは! 衝撃です。『人形の家』は高校生の頃の愛読書なのです。何回も繰り返し読み、気づいたら、いつも私の傍にはノラがいたという感じでした。私に自分と言うものを大切にしなくては、と教えてくれた1冊なのです」

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7月末、岡谷市で行われた「北欧からの風:三井マリ子のノルウェー取材より」という映像つき講演が終わった後だった。主催は長野県婦人教育推進協議会。やや興奮気味に、半世紀ほど前(おそらく)の青春の思い出を披露してくれたのは、その組織を束ねる横川靖子会長。

ノルウェーの文豪イプセンが戯曲『人形の家』を世に出したのは、130年前だった。

弁護士の夫は、妻ノラを「うちのヒバリ」と呼んで可愛がった。しかしノラには隠し事があった。病気だった夫を救うため、借用証書にニセのサインをしてお金を工面した。妻は、夫の許可なしには借金をする権利すらなかった時代のことだ

偽署を知った夫は、ノラをののしり、「おれがお前の犯罪行為に加担していたと世間から疑われるんだ」と激高する。

夫の愛は、「寄る辺ないちっちゃな赤ちゃん」への愛であったと、ノラは悟る。そして「私は、何よりもまず人間です。あなたと同じくらいに」と言い残して家を出てゆく。夫と子どもを捨てて。

北欧といえども、『人形の家』がすんなり受け入れられる時代ではなかった。反家庭、反社会的書物と非難されたという。

イプセンが作品に込めた問題意識は、今日でもあまりうすれていない。今夏、ロンドンでは3回、上演されるらしい。130年前、イプセンが問いかけた女性をとりまく社会状況が、時代を超え、国を超え、いまだ普遍性を持っているからだろう。

私は、岡谷市での講演の中で、ノルウェーの変革には、文学の力があったと紹介した。その一例にイプセンの『人形の家』をあげた。それが、「自分というものを大切にしなくては、と教えてくれた1冊」だったという。うれしい偶然だった。


◆イプセンを上演する会
http://www.ibsenkai.com/
◆Why A Doll's House by Henrik Ibsen is more relevant than ever
http://www.theguardian.com/stage/2013/aug/10/dolls-house-henrik-ibsen-relevant
◆北欧からの風を吹かせて日本の議会を変えよう
http://frihet.exblog.jp/20557144/
◆7月27日、岡谷市で「北欧の風」
http://frihet.exblog.jp/20454166/
『ノルウェーを変えた髭のノラ:男女平等社会はこうしてできた』(明石書店)
◆ノラの国の130年後: 書評『ノルウェーを変えた髭のノラ』
http://frihet.exblog.jp/18236159/

【写真はヘンリック・イプセン。オスロにあるイプセン・ミュージアムで撮影】
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by bekokuma321 | 2013-08-12 17:18 | ノルウェー

今回の参院選の投票率は52%。自民圧勝。女性議員もさほど増えなかった。そんな選挙が1週間前に終わった7月27日。三井マリ子さんの講演会が岡谷市であった。東京に行くついでに、立ち寄った。

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演題は、「北欧からの風:三井マリ子さんのノルウェー取材より」。とくに女性の政治参画についてだった。まず、スクリーンいっぱいに広がる、“黒の議会″という写真から始まった(上)。

今から約130年前のノルウェー・オーモット市の市会議員が一堂に会した白黒写真だった。女性議員は1人しかいない。

続く2枚目は、現在のオーモット市議会(下)。ちょうど男女半々だ。130年という時間経過は、同じ市議会をどう変えたか。三井さんは、「長野県中川村は、10議席中女性は1人だそうですね」と、ノルウェー130年前と同じである長野の様子も混ぜながら・・・会場の参加者に問いかけて、答えを引出しつつ、その変化をこうまとめた

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男性ばかりの議会が、男女半々となった。そして、真っ黒な背広にネクタイという制服のような服装が、色とりどり、ポロシャツあり、ブラウスあり、Gパンあり、となった。かしこまった容貌から、くつろいだ格好となった。

男女半々の議会は、ノルウェーの一地方議会だが、この変化は、決して特別な地域の特別な自治体の特別な例ではないそうだ。

次に、世界の女性議員増員運動ポスターの紹介にはいった。三井さんが足で歩いて集めたものだという。

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1枚目はノルウェーのポスター(上)。1960年代から起こった女性を議会に増やそうという運動の1枚だ。スローガンはズバリ「女性に投票せよ!」。投票箱の上で北欧の妖精が「女性候補に入れなさいよ」と見張っている。手書きの素朴な絵から、当時のノルウェー女性の心意気が伝わってくるようだ。

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デンマークのポスターは、「ヨーロッパの風景を綺麗にしよう」(上)。男性が軍隊のように整列する写真と、ラフな格好の男女が肩を組んで笑っている写真の2枚が並ぶ。なんとここに書かれたデンマーク語の「綺麗に」は「平等に」と同じ単語だという。つまり、このポスターは、「ヨーロッパの風景を平等にしよう」を叫んでいるのだ。

ベルギ―のポスターは、「政治の風景を変えてみよう!」。そのスローガンの横には、首から下は背広姿の男性、顔の部分だけが女性の写真に変えられた1人が立っている。言語がわからなくても、言わんとすることは一目瞭然だ。

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次はフランス。「政治は、男性の問題ではない―自分の地域で運動しよう」 (上)。こんな刺激的なスローガンが書かれたポスターから、こちらを見つめている女性は、魅力的なパリジェンヌ。

「こんなポスターが、選挙の前に町に貼られ、社会全体で女性議員を増やそうと頑張ってきたのです」と三井さんは強調する。こういうポスターが貼られていたら、選挙もちょっと楽しくなる。

そして、話はクオータ制へと続く。物事を決める場には一方の性が4割から6割いなければならないという制度だ。ノルウェーで始まったこの制度が国連やEUなど各国に見習われるようになった。

こうした世界各国の女性の政治参画運動を概観したあと、ノルウェーを20年以上取材してきた三井さんによる「ではなぜ平等の社会をつくることができたのか」に移った。

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最初に、三井さんが視察したケアを必要とする人たちのセンターで撮影した1枚が登場した(上)。場所は、特別養護老人ホームのサロンみたいなところ。三井さんを案内した市長が壁際に立ち、高齢の利用者二人を囲んで、ナースかヘルパーか4,5人くつろいでテレビ観賞をしている。休憩中のようだ。

「このサロンではなく自室にいる多くの利用者をケアする職員がほかに十分いるということです」と三井さん。「市長が来ているのに、職員はとくに立ちあがりもせず、脚を組んで笑ったり…リラックスしたままの態度です。市長も後でニコニコ。これが、ノルウェーの平等を表す象徴的1枚です」と力を込めた。

社会民主主義の国、ノルウェーの福祉社会・政策の原則を示す文字がスクリーンに大きく映る。

「貧困は社会の問題である。個人の失敗ではない」「個人や社会が貧困に陥らないようにするのは、国の責務である」「貧困は根絶できる」――短くて、分かりやすくて、力強い。こんな素晴らしい理念をノルウェーは何年も闘って作ってきたのだ。

地方議員はほぼ全員ボランティアであること、選挙制度は国も地方も完全比例代表制であること、政党がつくる候補者名簿(リスト)には男女交互に名が並ぶこと、などなど。三井さんの近著『ノルウェーを変えた髭のノラ』(明石書店) を読んでいた私だが、あらためて感動した。

さらにスクール・エレクションと呼ばれる中・高での「模擬選挙」。なんと生徒会が、本物の政治家たちを学校の体育館によんで、生徒たちと選挙討論会をするのだという。

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女性ロックバンドのメンバーである女子高校生は、サッカーに予算がついてロックバンドに予算がつかないことをどう思うかと各党代表に堂々と質問している。その写真(上)には、会場からため息がもれた。

この1枚だけではなく、全体に、あまりの日本の選挙制度との違いにショックを受けたという参加者が多かった。

質問タイムでは、①投票率を上げるためにはどういう対策をとっているか ②ボランティア議員はなぜ務まるのか ③日本の議員は調査をしたりするのに大変経費がかかり、ボランティアではできないのでは、などがあがった。

投票率に関しては、ノルウェーに限らず北欧では、投票率が8割を切ると「民主主義の危機」という認識があり、対策をとるための委員会が設けられる、という答えだった。地方議員が無報酬であることは、北欧だけでなく多くの国に例があり、日中は公務員や会社員など普通の仕事についていて、夜に議会が開かれる、のだという。「政治をタブー視して、公務員の政治活動を禁止している日本のほうがおかしい」と三井さん。

名古屋から参加した私は、河村たかし名古屋市長が議員報酬半減を掲げて市長に当選したこと、彼は、集会で“ヨーロッパの議員はボランティアである”と発言したこと。矢祭り町の議員報酬日給制など日本の例を紹介した。

三井さんの講演が終了し、講演内容が詳しく書かれている『ノルウェーを変えた髭のノラ:男女平等社会はこうしてできた』(明石書店)は、即完売。7冊しか持参しなかったことが悔やまれる、と三井さん。

末筆になったが、三井さんの講演会を主催した長野県婦人教育推進協議会に、心から感謝したい。

岡田ふさ子筆(写真は全て三井マリ子)

◆9月にむけて、選挙運動始まる ノルウェー
http://frihet.exblog.jp/20421022/
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by bekokuma321 | 2013-07-28 14:19 | ノルウェー

2007年4月8日の44道府県議選で、女性当選者が190人と、過去最多を記録した。全議員に占める割合は7.47%にすぎないものの、男の牙城は少しずつだが確実に崩れてきた。

女性議員の割合が日本一高くなったのは長野県で、19.0%。それは「女性議員を増やすネットワーク『しなの』」の長年の運動の成果だった。

長野県議会の定数は58で、15人の女性が挑戦した。結果、現職7人、元職1人、新人3人の計11人が当選した。改選前は8人だった。今回、改選がなかった東京都議会は補選で女性が当選して127人中22人となったものの17.3%で、長野県には及ばなかった。
 
女性県議の躍進を促した「女性議員を増やすネットワーク『しなの』」、略して「ネットワークしなの」は、1996年創立された市民組織だ。目的はひとつ、女性議員を増やすこと。会長は下諏訪町議を4期務めた樽川通子さん(77歳)だった。組織は会員800人にまで成長したが、昨年、10年の節目迎えて解散してしまった。

その後の動向が気になってしかたがなかった。「女性議員率、日本一」と新聞が報道したその日、下諏訪町に樽川通子さんを訪ねてみた。

樽川さんは、やはり、眠ってはいなかった。地域に密着した新しい運動の拠点として、だれもが気軽に集える場所『サロンしもすわ』を4月15日にオープンさせるべく、準備中だった。JR下諏訪駅にほど近い古びた空き店舗を安く借りて改装し、昼間は軽食堂兼お惣菜屋、夜は居酒屋となる。しかし、二階には大きな和室もあって、誰もが気軽に集まれる場所にするという。

店を守るのは、主に「ネットワークしなの」の残党の女性たちで、手弁当ないし準・手弁当で働くことになる。こうして、多少とも利潤のあがる店にして、改装費用の償却も目論んでいる。

樽川さんは言う。「女性議員率日本一にすることができました。やっとです。ここまでには、10年間の『ネットワークしなの』の運動、いや、その前からの運動があったからです」。女性県議当選者11人中9人までが、「ネットワークしなの」の会員だった。

「ネットワークしなの」は、「女性が議員になりやすい土壌と支援体制づくり」を目指して1996年、産声をあげた。女性の地位の向上を掲げた学習組織「長野婦人問題研究会」が土台だった。樽川さんのような現職議員、元議員、立候補したが落選した人、立候補擁立に苦労してきた人など30人の女性たちが呼びかけ人になった。

樽川さん自身、1983年に初めて立候補し、「おぞましい選挙の掟を味わった」。地域推薦を受けた候補に対する応援の強要、応援しない場合の制裁。そうした土地の因習とは異なった手法を選んだ樽川さんは、嫌がらせや誹謗中傷を浴びた。女性だけの選対をつくり、下諏訪の女衆(おんなんしゅう)中心の応援を受け、嫌がらせなどものともせず闘いぬいて、上位当選を果たした。

そして議会。巨額の予算が男性だけの話し合いで決まり、執行されていくのを目の当たりにしてショックだった。わが町の女性たちは、自分も含めて「なぜ、この不条理に気づかなかったのか」と慙愧の気持ちが体中を走った。

「質の高い女性を大勢議会に送りだせば、政治を変えることができるのでは……」と考えるようになった。そんな思いが、「ネットワークしなの」誕生への誘い水となった。

当時の長野県の女性議員数は、県議2、市町村議員82の3.9%で、全国12位。トップの東京の4分の1にすぎなかった(市川房枝記念会調査)。

樽川さんは「もう学習の時ではない。行動の時だ」、と考えた。女性議員を増やし、長野県選出の女性国会議員を出し、長野から初の女性首相を出す……そのためには、女性たちが実践力をつける組織が必要、と仲間を叱咤激励した。

具体的には、①選挙体験者による選挙ノウハウを提供する ②候補者を擁立支援する ③選挙を支援する ④政治について学習する ⑤「女性と政治キャンペーン」を張る ⑥情報誌を発行する、などの行動にうってでた。

こうした運動の成果は目に見えて現れた。

1999年の統一地方選挙で、女性の県議が2人から4人に増えた。女性の市町村議員が29人増の79人当選した。さらに4年後の2003年の統一地方選挙では、県議が8人、市町村議員は186人に増えた。
日本一の長野に到るまでには、日本一の女衆の運動があったのだ。

(三井マリ子)

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by bekokuma321 | 2007-04-12 23:47 | その他