c0166264_14414150.jpg中選挙区制から小選挙制に変わって20余年。今度は、線香・衆議院手帳ばらまき大臣の登場だ。

数年前、ワインだ、うちわだ、カレンダー だ、SMバーだ、キャバクラだ、と騒がれた大臣や議員がいた。ワインは小渕優子経済産業大臣、うちわは松島みどり法務大臣、カレンダーは御法川のぶひで議員、SMバーは、小渕大臣が辞任した後に就任した宮沢洋一経済産業大臣。 そして、キャバクラは、東京都板橋区から出た太田順子さんの選対を務めた民主党区議会議員たち。

いま問題になっているのは茂木敏充経済再生相だ。茂木大臣は、自らの選挙区(足利、佐野、栃木)で、何年間にもわたって、有権者に線香や衆議院手帳を配って歩いたことを、国会で追及されて、それを認めた。実質的買収行為をしていたのだ。

ところが、茂木大臣は、「政党支部の活動として行っている」と言い訳をした。この政党支部がたいへんな曲者だ。政党支部という名から、わたしたち市民は、政治活動を幅広く行う立派な組織と思ってしまう。

c0166264_13575357.jpgしかし、小選挙区制のもとでは、政党から立候補する衆議院議員候補は1人。つまり、政党支部の代表は1人の衆議院議員(または公認候補)であり、要は、政党支部事務所は茂木敏充議員の個人事務所なのである。そこに、政党交付金(私たちの税金)が振り込まれる。そこで働く人は、政党支部の党員というより、茂木議員の秘書といったほうがあたっている。

その秘書たちは、毎日、何をしているか。政党活動というとばくぜんとしていてわかりにくいが、具体的には衆議院議員の顔と名を売る活動を朝から晩まで日々行っている。思い出すのは、あの「違うだろーッ」と怒鳴り散らした豊田真由子議員。秘書に「支援者のバースデーカードの宛名」を書かせて、配らせていた。

こうした職にある茂木大臣秘書が、有権者の家や葬儀場にひんぱんに足を運んで、線香や衆議院議員手帳を遺族などに手渡す。名乗る必要もないほどわかりきっているから、物品に名前を書くなど野暮なことはしない。

c0166264_13584250.jpgそれに、見ず知らずの人から、黙って線香や手帳を受け取る人がどこにいるだろうか。国会で、野田聖子総務相は、秘書が氏名の表示のない政党支部からの寄付を持参することは、「氏名が類推される方法とはいえない」などと茂木大臣をかばった。ぜひ、彼の選挙区に行って「類推できない人がいるかどうか」を調査したらいい。

20余年前、小選挙区制に変えようとしていた自民党は、「政治改革大綱」という文書を出した。そこには「中選挙区制は、政党本位でなく個人中心の選挙になりがち」だと書かれている。さらに「利益誘導や、後援会組織の維持と膨大な有権者への手当のため、多額の金がかかる」とも。だから中選挙区制をやめて小選挙区制にしなくてはという理屈だった。

そして世は「政治改革」の熱狂のもと小選挙区制選挙へと変わって20余年。

「個人中心の選挙」はなくなったか? 「膨大な有権者への手当に多額の金がかかる」ことはなくなったか? 「政党本位」になったか?

得票率と議員数との絶望的乖離に加えて、死に票の多さなど、民意を反映しない小選挙区制の弊害は多い。それに、この実質的買収行為の多発。

やはり、小選挙区制はやめるべきだ。

小選挙区制のワナ
2017衆院選 微動だにしない男性偏重政治
絶望の小選挙区制選挙(2017衆院選)
国会議員年収も政党交付金も世界最高額
案内「選挙が変われば政治が変わる」
2017衆院選の政党別・性別候補者
女性議員増「比例代表制&多数定数選挙区で」
比例代表制は女性や弱者が当選しやすい
底なしの政治腐敗と女性議員
女性閣僚辞任と政治資金

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▲かもがわブックレット 203号、定価600円。

[2018.2.3 更新。写真は1月31日放映の国会テレビ中継より接写。公選法責任者の野田相とヒソヒソ話をしたり笑いあったりしている、線香配布の茂木相]
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by bekokuma321 | 2018-02-02 14:54 | その他

小選挙区制のワナ

今年の政党交付金は、8党に対して317億7300万円が行くとの報道があった。

最も巨額の政党交付金が行くのは、もちろん自民党で、およそ175億円。2位は民進党。2017年衆院選の分裂騒動で、議員が大幅に減ったものの、35億6900万円。3位は希望の党30億4200万円、4位は公明党29億4800万円、5位は立憲民主党27億6400万円。共産党は申請していない。
 
ところで、昨年暮れ報道された「2016年の政治資金報告」を覚えている人も多いだろう。

自民党は23億2000万円という巨額の寄付を受けていた。さらに、「~先生を励ます会」などのパーティで飛び交う札束。17人の大臣が集めた寄付だけでも9億円近い。さらに、違法のにおいがプンプンする国の補助金受給企業からも寄付を受けている議員の多いこと。

何を隠そう、こうした企業献金や団体献金という利益誘導につながる政治資金を絶とうーーこれが目的で新設されたのが、政党交付金だった。金丸信という政治家が、政党交付金を「泥棒に追い銭」とうそぶいたというが、ピンポーン! 

政党交付金の制度が成立したのは、20年以上前のこと。中選挙区制から小選挙区制に選挙制度を変えたときに、そのどさくさ紛れに誕生したらしい。中選挙区制は「政党本位でなく個人中心になりがち」で、「多額のカネがかかる選挙を生み政治の腐敗につながる」が理屈のひとつだった。今となっては笑うしかない。

小選挙区制中心の選挙になって20年。全国280あまりの選挙区で、最も票を取った候補者1人しか当選しない。その1人以外に入れた有権者の票はすべて死に票となってしまう。さらに第1党は、取った票がわずか4割台でも、その議席数は7割になる。票と議席にあきれはてるほどの大きな乖離を持つ。

こんな民意の反映しない選挙制度はないと思う。その破綻した選挙制度の結果に従って、政党交付金が配分されるのだ。政党交付金も破綻していると言える。

そして、こうした政治の世界に女性が入っていくのはどれだけ困難か。日本の女性議員割合は、世界193カ国中150番目~165番目をさまよっているのも、むべなるかな。


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 ▲かもがわブックレット 203号、定価600円。
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by bekokuma321 | 2018-01-21 20:24 | その他

衆院選で、自民党は、289小選挙区のうち、218議席を獲得した。これは75.4%に当たる。自民党の得票率は48.2%。全体の半分に満たない票で、8割近い議席を分捕った。

これが「作られた多数派 manufactured majority」と言われるものらしい。

小選挙区制は、第1党に不当に多く議席を与える不公平な制度だと批判されてきたが、今回もそれがはっきり証明された。

また小選挙区制は「死に票」が多い。今回は、全国で2661万票の死に票が出た。全得票の48%だ。投票した人の半数に近い票がどぶに捨てられたことになる。なんとまあ、もったいない!

もったいないどころか死に票の多い選挙制度は「違憲」だという憲法学者もいるという。石川真澄が著書で紹介している。

日本国憲法は、「民意の正確な反映」を要請しているという。憲法学者の長尾一紘は「それぞれの選挙制度を区別するメルクマールは、死に票率のいかんであるということができる」。だから、小選挙区制は違憲であり比例代表制が合憲であると指摘する(労働旬報社『この国の政治』)。

石川真澄は、小選挙区制選挙を「邪悪な選挙」だと批判し、民意をほぼ正確に反映する比例代表制にすべきだと多数の著書を世に出した。

比例代表制のよさは、女性やマイノリティを議会に送りやすいということもある。これを石川はそれほど強調していないが、私には大問題だ。

比例代表制にしたら、政党が候補者名簿をつくる際、男、女、男、女と男女交互にならべるだけで、女性議員が確実に増える。政党で「クオータ制」(どちらかの性を例えば40%以上とするルール)を尊重すればいい。そのほか、政党の姿勢次第だが、3番目には障がい者、4番目にはアイヌ民族・・・というように候補者を多様にしやすい。

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 ▲三鷹市の衆院候補ポスター。自民党は小選挙区で、立憲民主党は比例で当選した。希望の党と共産党は落選した。公報を見る限り、希望の党の女性候補(弁護士)は男女平等推進に関心が強いと私には思えた

案内「選挙が変われば政治が変わる」
絶望の小選挙区制選挙(2017衆院選)
2017衆院選 微動だにしない男性偏重政治
国会議員年収も政党交付金も世界最高額
選挙制度は政治を根本から変えた(ニュージーランド)
イギリス6割が選挙制度改革に賛成 
小選挙区制は女性の声を捨て去る
比例代表制は女性や弱者が当選しやすい
女性の衆議院議員は1割に満たず
1年前の今日、政党交付金裁判を終えて
票数が反映しない選挙結果のゆく先は


【上記の2017年衆院選統計は時事通信ウエブページを参照した】
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by bekokuma321 | 2017-10-29 01:09 | その他

衆院選投票率50%台か

NHKによると衆院選 「投票率は53.60%前後の見込み」だという。戦後最低の投票率と言われた2014年(平成26)の52.66%からやや増えた。しかしなんとまあ棄権の多いこと。

小選挙区制という選挙では、最高得点をとった一人しか当選しない。自分の1票が政治に反映されない可能性があまりに高い。だから馬鹿らしくて投票所に行く気になれない人も増える。

先月、取材してきたノルウェーの最終投票率は78.2%だった。ノルウェーは比例代表制選挙だ。

c0166264_23511488.jpgこれまで、小選挙区制は、得票率が議席数に反映されないことが指摘されていて、民意の反映しない選挙だと強く批判されてきた。

たとえば2012年の衆院選を見る。自民党は小選挙区で得票率43%だったが、小選挙区議席の79%をかっさらった。投票した人の2人に1人に満たない票で、8割近い議席を得たのだ。絶対得票率(上の表[朝日Web]。注)となると、自民党はわずか24.7%で4人に1人に満たなかったが、比例区あわせて全議席の6割を超えた。そのかげで、他候補に入れた3000万以上の票はすべて死に票となった。

一方、比例代表制のノルウェーはどうか。政党ごとの得票率と議席占有率を見る。最大政党の労働党30.8%で33%、保守党26.8%で28%、 進歩党16.3%で17%、中央党5.5%で5.9%・・・。比例代表制という名の通り、得票率に議席数が比例している。大政党は大政党なりに、小政党は小政党なりに得票に応じて議席を出せるのだ。これが、1人1票を生かす選挙というものだろう。

自分の1票が確実に議席に反映する選挙制度をとるノルウェーの投票率が高いのは当たり前だろう。

今回の衆院選では、どれだけ死に票が出るのか。

【注】絶対得票率は、有権者全体の得票率で,棄権した人も含めて有権者全体のなかでその政党 が何%票を得たかを示す

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 ▲衆院選の投票率の移り変わり。小選挙区制が始まったH8(1996)から投票率がガクンと下がった

投票率アップのカギは「優しさ」 総選挙で80%近く ノルウェーに学ぶ(東京新聞)
2017衆院選の政党別・性別候補者
案内「選挙が変われば政治が変わる」
絶望の小選挙区制選挙(2017衆院選)
日本の「自書式」ハンディキャッパーに不利
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by bekokuma321 | 2017-10-23 00:37 | その他

c0166264_2362234.jpg希望の党の小池百合子党首に、記者が「前原さんをだましたんでしょうか」と尋ねた。9月29日の記者会見だった。彼女はそれを否定せず、首を斜めに傾げて満面の笑みを浮かべた。その後、笑いの浮かぶ口元から出てきたのは、「(リベラル派は)排除いたします」発言だった。

小池は根っからの右派政治家だから、これは予想されたことだ。むしろ私は、民進党の節操のなさを呪った。選挙で勝つために、結党精神もイデオロギーも、国会での過去の発言も、日本津々浦々で頑張ってきた地方党員の縁の下の活動も、きれいにご破産して、他党に身売りを申し出たのだから。

しかし、もっとも呪われるべきは、20余年前に「政治改革」とやらの熱狂の中で成立した「小選挙区制中心の選挙制度」だろう。

選挙は、国会に主権者の意思を反映させるために行うものだ。それなのに、小選挙区制は民意を反映しない。

小選挙区制は最高得票をとった一人しか当選しない。食うか食われるか、究極の弱肉強食の制度である。1001票とったら当選し、1000票なら落選する。その1票差で負けた次点候補に投じた1000票は、すべては死に票となる。他のミニ政党候補に入れた票は言うまでもない。つまり自分の1票が政治に反映されない可能性があまりに高いのだから、馬鹿らしくて投票所に行く気になれない人が出るのは、当たり前である。

2012年の衆院選で、自民党は小選挙区で得票率43%だったが、議席の79%をとった。投票した人の2人に1人に満たない票で、8割近い議席をとった。その結果、死に票は3730万! 2014年も似ていて、自民の得票率は48.1%だが、議席は75.3%、死に票は約2541万! 3730万人、2541万人という人たちの投票用紙がゴッソリどぶに捨てられたようなものなのである。

小選挙区制導入は、“健全な2大政党制”を根づかせる制度なのだそうだが、もはや2大政党政治どころか自民1強政治に落ちぶれた。こんな無節操選挙制度のなにが健全だというのだろう。

自民党の衆議院議員鈴木貴子は、2012年衆院選で新党大地から立候補して自民前職に敗れた。2014年には民主党に移って民主党公認で立候補。僅差で落選したが比例区で当選した。その後、自民党に入党した。

民進党の衆議院議員長島昭は、2017年の都議選前、離党届を提出した。民進党公認で都議選に立候補した人物2人も長島と行動を共にし、離党した。長島は希望の党の結成メンバーとなった。

希望の党結成メンバーには、民進党の要職にあった松原仁や細野豪志がいる。松原仁は都議時代自民党だったが、その後、新進党→自由党→民政党→民主党→民進党と所属を変え、都知事選では、民主党東京都連会長となって小池百合子の対抗馬である鳥越候補の旗ふり役をした。細野は民進党幹事長、副代表を務めた党を代表する人物だ。

今回は、個々人の離党ではない。野党第1党の民進党が事実上解党されて、できたてほやほやの小池党の軍門に下った。その心根にあるのは、「都知事選・都議会議員選で連勝した小池党なら自民党に勝てるだろう」という打算だ。その打算は、野党共闘運動のなかで交わしてきた公党同士の約束すらほごにした。

さらにニッポンの悲劇を増幅させているのが、小選挙区制と抱き合わせで導入された政党交付金制度だ。

政党交付金は、全国民が1人250円を出し合った国費で、年額が320億円。これは世界一の高額だという。その配分は、各政党の得票数に加えて、民意を反映しない議席数に応じて計算される。当時、「250円なんてコーヒー1杯で政治がクリーンになるなら安いものじゃないか」と言われたが、クリーンどころかキャバクラ代、ガソリン代、妻への給与、顔・名入りワイン代など、野放図な使われ方は底なしだ。

政党交付金は、政党中心の比例代表制選挙に使われるならわかる。しかし小選挙区制では政党の公認候補は1人であり、その人物が代表する「政党支部」に政党交付金が送金されるので、その組織を牛耳る1人の人物の自由になるのだ。もっとはっきり言うと、「政党活動の自由」を盾にすれば、何に使ってもいいのだから、寄付の形をとれば、「私腹肥やし」も可能なのである。おそらく、希望の党に移った多くの国会議員は、政党交付金が原資のカネを貯めこんでいると想像できる。

民進党本部には、約140億円が貯めこまれているらしい。2017年分87億円余りは、4分割されて4月、7月、10月、12月の各20日に振り込まれるので、形式上、民進党が存続していれさえすれば、10月分も振り込まれる。12月分は10月22日の総選挙後、新たに計算されるのだが、民進党が解党していなければ、衆議院議員がいなくても参議院議員の分は振り込まれることになる。その間、民進党に残った政党交付金を政治団体に寄付してしまえば、国庫返還せずに民進党代表の管轄下に置くことが可能となる。

20年経って、「結果として、政党の活力が奪われました」と言ったのは、細川内閣で制度設計に関わった成田憲彦さんだ(朝日 2015.10.17)。

「小池百合子都知事 男社会をリセットします!」などともちあげるメディアも有罪である。小池百合子は憲法改正に賛成し、日本の核武装を容認する発言をしてきた右派の政治家である。そして女性差別撤廃条約や男女共同参画推進法を目の敵にする「日本会議」につらなる政治家でもある。つまり彼女は男社会を維持補強するチアリーダーすぎない。リセットとは、ちゃんちゃらおかしい。

c0166264_2315745.jpg1970年代、社会学者のアーヴィン・ゴフマンは、女性は、首を傾けるというしぐさで、相手に対して従順であり、警戒心がないと印象づけることを明らかにした。多くの男性は、それを愛らしいと感じるのだという。この21世紀に、微笑んで首を横に傾げるという“女らしさの武器”を使って印象操作をする女性に騙されるほうが悪い、と私は思う。

そういう人物に騙されようとも、辱められようとも、選挙に勝つためには背に腹は代えられない。これが小選挙区制の正体なのである。ああ、絶望。

この絶望の淵からはいあがるただ一つの道、それは、比例代表制選挙に変えることである。


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▲両グラフとも出典はFEM-NEWS「国会議員年収も政党交付金も世界最高額」。グラフのもとになった統計資料も同記事参照を。

「どうする政党交付金」
女性議員増「比例代表制&多数定数選挙区で」
共謀罪可決と選挙制度:イギリス選挙から考える
豊田真由子議員の暴言暴行と選挙制度
選挙制度は政治を根本から変えた(ニュージーランド)
小選挙区制は女性の声を捨て去る
政党交付金裁判
フランスの政党交付金は男女平等化資金に
男女平等を嫌う反動勢力の実像
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by bekokuma321 | 2017-10-06 23:41 | その他

豊田真由子衆議院議員の暴言暴行を報道で視聴した。すさまじい罵倒ぶりだ。問題なのは、被害者の身体の特徴をあげて怒鳴ちらしていることだ。彼の心をどれだけ傷つけたことか。これは、欧米ならヘイトスピーチとして違法になると思う。自民党を離党したらしいが、被害者に謝罪し、議員を辞職すべきだと思う。

豊田議員は2012年、自民党の衆議院議員候補公募に応募して選ばれて公認で立候補したという。選挙区は埼玉4区。暴言暴行を受けた人は、豊田議員の政策秘書。彼は、車を運転中に後部座席の豊田議員から受けた仕打ちを、ひそかに録音していた。この録音がなかったら秘書がたとえ診断書を出して暴行被害を訴えても、「やってない。嘘だ」と否定されただろう。逆に豊田議員から「誹謗中傷」「名誉毀損」と訴えられる恐れさえある。そして豊田議員はケロリとして自民党公認候補でまた衆院選に出るだろう。

ネットをにぎわしているコメントの中で、河村建夫元官房長官のコメントがおもしろい。

「選挙を戦う者とすれば、あのようなことは起こる。たまたま彼女が女性だからこうしたことになっているが、あんな男の代議士はいっぱいいる」と彼は豊田議員をかばった。衆議院における女性議員の割合はわずか9%しかいない。だから目立つのは当たり前だ。おそらく「あんな男の代議士がいっぱいいる」のだろう。そういう男性議員なら全て議員辞職すべきだ。

彼のコメントで注目すべきは性差ではない。「選挙を戦う者」という言葉だ。キツイ選挙戦をくぐりぬける者に、暴言暴行は避けられないというのである。恐れ入った。

口利き収賄疑惑で辞任した甘利大臣を思い出す。記者会見で、甘利大臣は「良い人とだけ付き合ってたら選挙落ちちゃう、小選挙区制だから。来るものは拒まずってしないと当選しない」と言った。50万円入っていた虎屋の羊羹を受け取った事件だが、甘利大臣は、その弁解に「選挙」を口に出した。

悪い人ともつきあわないと小選挙には勝てない、と正直に白状したのだ。小選挙区制の弊害をこれほど雄弁に語った人はいない。

豊田議員の暴行暴言事件の背景にも小選挙区制がある、と私は思う。

c0166264_16265153.jpg小選挙区制では、最高得票の候補たった1人しか当選しない。ほかは死に票となる。ヨーロッパの多くの国々が、不公平な選挙制度だと19世紀から20世紀はじめにかけて捨て去ったが、日本は、20年ほど前、“政治改革”の熱狂のなか、新たに採用した。

小選挙区制は、「まさに勝つか負けるか、食うか食われるかのきわめてシビアな選挙戦が繰り広げられる」(阪上順夫『小選挙区制が日本をもっと悪くする』)。

私も2012年、秋田3区で小選挙区選挙を体験した。朝7時から夕方6時まで車で遊説して、休憩をはさんで夜7時から集会、というのが日課。宣伝カーの助手席に座り、左側の窓を開けて左腕を振りながら右手でマイクを持って連呼する。手袋が雪で真白になりしばらくするとカチカチに凍る。凍った手袋を車内のヒーターで暖め、予備の手袋に変え、また手を振る。2,3日で腕があがらなくなったため、毎朝セーターの左そでにホカロンをベタベタ貼って、その上からコートを着た。窓はあけっぱなしのため、ヒーターはほとんど効かない。凍傷寸前、シモヤケ覚悟の連呼マシーン。それが選挙運動だった。わずか1カ月ほどだったから体がもったのかもしれないとも思った。

豊田議員は、選挙期間中ではなかった。だけど現職議員は、給料をもらって合法的に選挙運動をしているようなもので、再選を念頭に、ありとあらゆる方法で顔と名前を有権者に売りまくる。よくあるのが挨拶回り。午前と午後に各何十件、やれ夏祭り、やれ商工会式典、やれ野球大会、やれ卒業式、やれ葬儀と予定がびっしりだ。

豊田議員は、こうしたことに加えて秘書に「支援者のバースデーカードの宛名」を貼らせていたらしい(宛名とカードが違っていたのが怒りの原因とか)。国会議員が支援者にバースデーカードを出すなんて、初耳だ。そういえば、支援者をバスに乗せて明治座観劇に連れて行ったりワインや下仁田ネギを配ったのは小渕優子議員、うちわは松島みどり議員、カレンダーは御法川議員・・・こうした行為が問題にされたから、バースデーカードが出てきたのか。とにかく、1人でも多くの有権者の心をつなぎとめようという、違法すれすれの、いじましい、あの手この手。

政策秘書が選挙区の運転手をしていることにも驚いた。政策秘書とは、議員の政策つくりを補佐する人だ。国家公務員に準じており、国民の税金から給与を支払われる。その人が、バースデーカード書きや、支援者回りなど、選挙運動員的役回りをさせられているのだ。

小選挙区制は、民意を反映しない歪んだ選挙だ。2014年衆院選での自民党の絶対得票率(棄権者も含む全有権者に占める割合)を見ると、小選挙区は24.49%、比例区は16.99%だ。明確な自民党支持は5人に1人ほどしかいない。それでも自民党はいま衆院の6割余を占める(そのうちの1人が豊田真由子議員)。

それに加えて、小選挙区制は、犯罪まがいの事件を誘発する要素のより多い、醜悪な選挙制度だ、とつくづく思う。


民主主義コンテスト 世界1はノルウェー、日本は20位
国会議員年収も政党交付金も世界最高額
比例代表制は女性や弱者が当選しやすい
Countering Hate: Nordic Conference on Hate Speech
Hatefulle ytringer er forbudt også på Facebook
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by bekokuma321 | 2017-06-29 16:44 | その他

6月15日、共謀罪が、委員会採決をすっとばして本会議で可決された。この腹立たしさをどうしてくれよう。

次の選挙で共謀罪に賛成票を投じた議員を減らせたら少しは癒されるだろう、が、その選挙制度は私たちの民意を反映しない小選挙区制ときている。衆院選で、自民党に投票した人は、2012年43%、2014年48%。過半数に満たない。しかるに、その議席は、2012年79%、2014年76%だ(注)。

6月8日に選挙があった、小選挙区制の母国イギリスはどうか。

保守党は、330議席から318議席に議席を減らし、労働党は229議席から262議席に増やしたが、政権交代とはならなかった。ハング・パーラメント(宙ぶらりん国会)と呼ぶらしいが、「小選挙制は強靭な安定政権をつくる」という説は嘘ではないか、と思える。

投票日の朝、「さあ投票に行こう。だが、このグロテスクな選挙制度は改革を必要としている」と題した刺激的論説がガーディアン紙に載った。

筆者は専属コラムニスト ポリー・トインビー(Polly Toynbee)。彼女はのっけから「選挙に関わった人たちは、戸別訪問で、『投票しても変わらない』とか『政治には関心ない』と言われただろう。実際、その声は当たっている」とキッパリ。

そして、小選挙区制選挙に致命的欠陥があることをあげる。

「2015年の総選挙では保守党が7ポイントリードしたが、保守党から労働党に639票移れば、労働党が6議席増え、ハング・パーラメントになっていた。わずか639票だ!」と、選挙改革協会(electoral reform society)の調査結果を紹介。

次に、「前回、有権者の多くは、勝者となった候補者の票数に無駄に票を上積みしたか、落選候補へ入れた」とし、「票の74%が無駄に投票された。その無駄は2200万票」とはじき出した。2200万票の無駄を出す選挙ーーこれはグロテスクだ。

小選挙制は死に票が多いのが欠点だ。日本でも死に票の多さは指摘されてきたが、その死に票だけでなく、1票でも多ければ当選なのだから勝者への上積み票も無駄な票である、と彼女はいう。なるほど、なるほど。

加えて、当選者の多くは「当確」候補者であり、中には民主主義が誕生した時代から「当確」と言われる政党の候補者もいた。1945年から一度も変化がない選挙区が保守党103議席、労働党67議席もある、という。これでは、「投票しても変わらない」。

そのうえで、彼女は、「小選挙区制から比例代表制に変えれば、1人1人の票が無駄になることはない」と結論づける。

北欧の選挙制度を取材してきた私は、この主張がよくわかる。彼女のいう「選挙区から6人当選とすると、比例制選挙なら、支持政党議員を1人は国会に送ることができる」を、私はノルウェーで何度も見てきた。

そうなると、生活保護受給者の厳しさに同情しない保守党議員しかいないとか、相続税を減らしたい富裕家族の困りごとをとりあげない労働党議員しかいないということもなくなる。

それに、小選挙区制よりずっとらくに女性や社会的弱者の代表を増やせる。比例制選挙では、有権者は個人を選ぶのではなく政党を選ぶのだから、政党は印象をよくするため、男性だらけより男女バランスを考えたリストを作成するだろう。それにブラック企業も真っ青というような選挙運動は無用だから、ハンディをかかえる人たちも立候補できる。

これらは、国会にも地方議会にも、右から左まで多様な政党の代表がいて、4割ほど女性議員が占める北欧諸国ーー比例代表制ーーがちゃんと実証している。

比例代表制による多様な民意の反映が生み出した福祉と平等の国々を、FEM-NEWSは何度も紹介してきた。だが、何と言っても、小選挙区制の母国イギリスの小選挙区制否定論は傾聴に値する。


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▲ノルウェーのソール・トロンデラーグ県トロンハイム市。同県は国会議員10人の選挙区。労働党、保守党、進歩党、中央党、左派社会党の5党から国会議員が出ている。


This new parliament provides a clear opportunity for electoral reform
First Past the Post’s Third Strike
Scotland’s multi-party system can never be represented by First Past the Post
Five things we have learned from the election
Go out and vote today, but know this – our grotesque system needs reform
Election 2017: Record number of female MPs
Election 2017: A big Conservative win could see fewer women in parliament
Diversity deserts: 7.5m people can’t vote for a woman this election
小選挙区制が生んだ共謀罪
選挙制度は政治を根本から変えた(ニュージーランド)
あざやかな歴史
比例を切るな!
安保法案の成立は小選挙区制のせいである
イギリス6割が選挙制度改革に賛成
小選挙区制は女性の声を捨て去る
比例代表制は女性や弱者が当選しやすい
比例制選挙がいい

【注】日本国憲法には、イの一番に「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し」と書かれている。これだけ民意とかけはなれた結果を産む小選挙区制は「正当」な選挙ではなく、現国会議員は「正当に選挙された代表」とは言えない。
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by bekokuma321 | 2017-06-15 21:56 | ヨーロッパ

共謀罪に対する国民の疑問や怒りを代弁した野党議員の質問にまともに応えず、自・公・維は、強行採決した。野党質問は単なる“通過儀礼”のようだ。自・公・維に所属する議員の数が圧倒的に多いからだ。

しかし、この議席は、得票33%で議席61%を獲得となった自民党から明らかなように(2014年衆院選)、私たちの投じた票に比例してはいない。民意を反映しない議員の「数」で、民意をしばることになる深刻な法律を決めたのである。

c0166264_15493424.jpgその上、何度も繰り返すが、人口の半分以上を占める女性がわずか1割以下しか衆院にはいない。

日本の女性割合は、世界194カ国中164位である(2017年5月、IPU)。国連から幾度も是正勧告を受けてきた。政府ですら、「党員・役員に占める女性割合や、衆議院議員及び参議院議員の選挙における女性候補者の割合、地方公共団体の議会の選挙における女性候補者の割合が高まるよう」にという文書を政党に向けて出した。しかし、1強しか当選しない小選挙区制での女性当選は難しく、9%だ。この「極端な男性偏重の場での法律は無効!」と叫びたいくらいだ。

共謀罪と似ているといわれるのが治安維持法だ。この法律があった戦前の日本女性はどうだったか。

何しろ女性には投票する権利も、立候補する権利もなかった。権利がないのだから義務もないのならしかたがない。が、全く違った。女性たちは、「皇道精神および日本婦道の奨励」をする大日本婦人会という組織の下、天皇の赤子を産み育てて兵士として送りだす戦争支援義務を徹底して負わされた(若桑みどり『戦争がつくる女性像』、写真)。

女性による社会主義団体「赤瀾会」は、憲兵隊によって拉致虐殺された伊藤野枝に代表されるように、会員たちが検挙・投獄されたりの迫害を受けて、創設後、数年間で消滅せざるをえなかった。反体制とも言えない矯風会の機関誌『婦人新報』さえ、「ページ数が減らされ、のちに発行部数を半減して会員には回覧で読むように乞うたのだが、ついに紙の配給の割当が受けられなくなり、出版統制のため休刊のやむなきに至った」(久布白落実『廃娼ひとすじ』)。

戦前の日本女性には、人権など、かけらほども存在しなかった。

日本女性が、表現の自由、思想信条の自由、政治参加の自由を獲得したのは、戦後の憲法によってである。「人類の多年にわたる自由獲得の成果」(憲法97条)なのだ。

その自由をしばることとなる共謀罪を、まともな質疑もせずに強行採決とは。その道筋をつくることになったのは、小選挙区制という選挙制度による”歪んだ多数制”だ。承服してはならない、とあらためて思う。

「魔女狩り」と「共謀罪」
小林多喜二から共謀罪を思う
安保法案の成立は小選挙区制のせいである
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by bekokuma321 | 2017-05-27 16:08 | その他

あけましておめでとうございます。

FEM-NEWSは、世界中から届く女たちのニュースを和訳して届けるブログです。編集責任者は三井マリ子です。

2017年のロゴ写真は、ノルウェーの画家クリスチャン・クローグ(1852-1925)による絵「アルバーティン」の一部にしてみました。少女アルバーティンが、性病検査のために警察官に促されて医務室に入ろうとしている瞬間が描かれています。

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 ▲「アルバーティン」(1887年)。画面を占める派手な衣装の女性たちは売買春婦

作家でもあったクローグは同時に「アルバーティン」という同名の小説を表し、女性が貧しさゆえに売春婦とならざるえない社会を告発しました。アルバーティンは、貧しいお針子である母を助けて朝から晩まで働きますが、金はすべて病気の弟の薬代に。ある日、警察官に騙され酒を飲まされて強姦されたアルバーティンは、売春婦の道に入っていきます。

本は、道徳心を損なうからと発禁処分。それに怒ったジャーナリストは大衆の前でその内容を伝え、新聞では売春問題について大論争が展開されます。それが絵画の人気を高めることとなり、公娼制廃止は国を揺るがす大きな運動に発展していきます。首相は、ほどなく公娼制廃止に踏み切ったとされています。

私は昨秋、オスロの国立美術館でこの絵の前に立ちました。現在もいる、おびただしい数の「アルバ―ティン」のことを思いながら・・・。

1928年、私と同じ場所に立って、この絵を鑑賞した日本女性がいました。久布白落実(1882-1972)です。当時の日本は公娼制が野放しでした。女性には参政権がありませんでした。そんな社会を変えようと、久布白は運動していました。そんな彼女が、ノルウェーの公娼制は1枚の絵に触発された市民たちの運動によって崩れ去ったことを知ったのです。

帰国した彼女は、女性参政権運動にのめりこみます。秋田市民1000人を前に「第1回 公娼廃止大演説会」で講演。翌1929年再び秋田入りして、秋田県初の女性参政権を要求する講演会で「公娼問題よりとき伏して、婦人参政権の必要なることを力説」します。彼女から影響を受けた人の中に、女性運動家和崎ハルがいました。後にハルは、戦後初の女性代議士39人の1人となります。

c0166264_9555847.jpg私が、ノルウェーのクオータ制を初めて日本に紹介したのは1980年代です。女性を政策決定の場に増やして、男女平等社会にしたいと思ってのことでした。

その後、ノルウェーの政治・福祉制度に関する書籍を刊行し、講演もしてきました。今も、女性やマイノリティを議会に増やさない限り民主政治はないと思っています。

ただ衆院選を経験した私は、「小選挙区制はクオータ制という種をまく土壌にふさわしくない」と確信できます。ここにメスを入れなければ、と考えるようになりました。そのモデルは、100年ほど前、小選挙区制から比例代表制に変えた国、ノルウェーです。

さて私は、東京都立高校教員を経て東京都議会議員(2期)。法政大学講師から大阪府豊中市男女共同参画推進センター初代館長、福井県武生市初代男女平等オンブッド(オンブズマンのこと)などの職を経てきました。そのかたわら、NGO「全国フェミニスト議員連盟」を中心に女性運動を続けてきました。お茶の水女子大学を卒業した後、フルブライト奨学金をいただいて、アメリカのコロンビア大学でMAを修了しました(家族・地域教育学)。

東京都議時代、東京都労働局にセクシャルハラスメント防止施策を初めて実施させました。当時、ILOから発行されたセクシャルハラスメントをなくすための政策についての国際調査報告書によると、日本で初めて、唯一の公的制度でした。東京都のセクシャルハラスメント政策は、全国の自治体に影響を与え、次いで国のほうも関心を持つようになりました。『セクハラ110番』(集英社)に詳述されています。

著書は
『バックラッシュの生贄――フェミニスト館長解雇事件』(共編著、旬報社)
『ノルウェーを変えた髭のノラーー男女平等社会はこうしてできた』(明石書店)
『女たちのパワーブック』(ノルウェー労働党女性局編)(共訳、かもがわ出版)
『ママは大臣 パパ育児ーーヨーロッパを揺るがす男女平等の政治』(明石書店)
『男を消せ!--ノルウェーを変えた女のクーデター』(毎日新聞社)
『セクハラ110番』(集英社)
など多数。

記事についてのご質問・意見や、講演・執筆のご依頼は、mariko-m(a)qa2.so-net.ne.jp までお気
軽にどうぞ。(a)をアットマークに変えてください。

2017年のある日の、あるひとときのあなたに、FEM-NEWSがお役に立てたら、うれしく思います。
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by bekokuma321 | 2017-01-03 23:19 | FEM-NEWSについて

c0166264_125889.jpg2015年11月30日、秋田で、政党交付金をめぐる裁判の最後の報告会をした。

ちょうど1年前の今日だ。

裁判長の強い要請を受け入れて、私は和解をした。足かけ3年、自宅のある長野から秋田に通った。その距離4万余キロ。地球一周だった。そんな裁判を支えた弁護団や友人たちが集ってくれた。

私が提訴したのは、国民の税金でつくられた「政党交付金」が、選挙に手慣れた人たちの手で、不当な使われ方をしている、と、わかったからだ。

裁判長は、私の言い分をほぼ認め、被告側の行為を「不適切行為」とした。被告は私に詫びたため、不本意だったが和解に応じた。

政党交付金は、その後、やれ、ワインだ、うちわだ、カレンダーだ、SMバーだ、キャバクラだ、と騒がれた大臣や議員が大きく報道された。

ワインは小渕優子経済産業大臣、うちわは松島みどり法務大臣、カレンダーは御法川のぶひで議員、SMバーは、小渕大臣が辞任した後に就任した宮沢洋一経済産業大臣。キャバクラは、東京都板橋区から出た太田順子さんの選対を務めた民主党区議会議員たち。

そうそう、舛添都知事事件もあった。彼は政党交付金を美術品や自宅内の事務所家賃に使っていた。先月は、民主党(現民進党)富山県連が、組織ぐるみで政党交付金を不正に使用し、その額「少なくとも計4525万3468円」と報道があった。最近では、政党交付金を含む政治資金を使って高級ホテルでグルメ三昧の国会議員がズラリと報道されている(注1)。

私の場合、ことの始めは、民主党支持率が最低を更新していた2012年秋。秋田3区の民主党国会議員が離党し、そのポストが空いた。2カ月にわたる要請を受けて、私は秋田移住を決意した。そして解散総選挙。落選は覚悟のうえだった私は、落選後、再挑戦する意思を表明した。

ところが選挙後5日目の夜、5人が自宅(兼事務所)にあがり込んで、「あなたがいると票が減る、出て行くように」と追い出し宣告。さらに「あなたやあなたの友人たちは選挙違反をした。家宅捜査だ、連座制だ」と脅した(後、選挙違反は事実無根と判明:注2)。収支報告を見せてほしいという私の要請には、だんまりを決め込んだ。

裁判でわかった(注3)のだが、被告側は、私の政治活動に使うべき「政党交付金」を十分に使わずに、「基金」として貯めこんでいた。

どうしてそんなことがやれたか。

それはこうだ。衆議院議員候補は政党支部長に就任する→支部長名義の口座をつくる→党本部から政党交付金が口座に送金される→口座の通帳やハンコを一手に握る議員秘書が勝手に出し入れする。

政党交付金は、全国民が1人250円を出し合った血税だ。「政党の健全な活動」のためと、1994年創設された。「民意をひどく歪めた政党の勢力分布をつくってしまう、非常に悪い制度」(石川真澄)である小選挙区制と抱き合わせで導入された。年間320億円、世界一高額だという。

20年経って、「結果として、政党の活力が奪われました」と言ったのは、細川内閣で、その制度設計に関わった成田憲彦さんだ(朝日 2015.10.17)。

政党交付金は小選挙区制とは相いれない。政党中心の比例代表制選挙ならわかる。それに「政党活動の自由」を盾に、何に使ってもいいとされているのだから、選挙にたけた人たちの手で、候補者の選挙マシーンに流されたり、「私腹肥やし」にされるだけだ。

女性や少数派の民意が反映されない小選挙区制、政党活動を停滞させる政党交付金制。これは、絶対、絶対、間違っている! 

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【注1】自民党有力国会議員の場合、収入にはパーティなどで集めた政治資金がはいっているため、全てが「政党交付金」からの支出とは言えない。
【注2】逆に、判明したのは、民主党秋田の幹部らが、ポスター張りをしていないのにしたことにして領収書偽造して、選挙費用を横領着服した事実だった。
【注3】衆院選・裁判をきっかけにできた、女性と選挙・政治を考えるサイトさみどりの会ホームページには裁判情報が掲載されている。
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by bekokuma321 | 2016-11-30 02:03 | 秋田