夏休み、スヴァイン・インヴォルド(Svein Ingvald) は、妻や家族と、フィヨルド岸のサマーハウスで過ごす。しかし、家の庭先に広がる美しいフィヨルドには、朝から夜まで、大型クルーズ船が行き来する。

彼は、緑の党党員。自然保護や持続可能な漁業を願っている。もともとは市の保健課長。今はペンショナー(年金者)だ。

日曜日、彼は、朝8時、おしっこに起きた。目の前にクルーズ船がやってた。とっさに彼は、裸でクルーズ船に向き合った。妻に写真をとってもらって、フェイスブックに載せてほしいと頼んだら断られてしまった。そこで写真を自分のフェイスブックに載せた。

ただちに反響が押し寄せ、メディアも大きく取り上げた。中には「彼は市議会で、緑の党の政策にもっと関心を持ってほしいといつも願っているが、今回、それを成し遂げた」と。効果抜群の抗議行動には、何の準備も資金もいらなかったことを紹介している。

日本人は驚くかもしれないが、彼は、ノルウェーのクヴィンヘーラ(Kvinnherad)市の現職の市議会議員である。

クヴィンヘーラ市議会のなかで、彼の属する緑の党はただ1人。市の人口13000人、市議35人。政党は多彩で、勢力分布は保守党12、労働党8、中央党6、進歩党3、キリスト教民主党2、ローカル・リスト2、自由党1、緑の党1。フォルマンスカープ(参事会)は9人で、保守党3、労働党2 中央党2、進歩党1、キリスト教民主党1で構成されていて、緑の党はいない。

ノルウェーは、比例代表制選挙なので、有権者は政党を選ぶ。小さな自治体でも、大政党は大政党なりに小政党は小政党なりに、5つか6つの政党から議員が出ている。ただ、クヴィンヘーラ市のような8政党の市は、とても珍しい。またクオータ制をとる政党が多く女性議員も多い。クヴィンヘーラ市はクオータ制に熱心とはいえない保守党の強いこともあり、女性議員は34%にすぎない。ちなみに、ノルウェーの地方議員の多くは無報酬である。通常の仕事を持ったり学生だったりしながら、夜に会議を開く。

メディアによると、スヴァイン・インヴォルドは、今回の突飛なアクションについて、こう語る。

「この写真投稿は、フィヨルドが巨大クルーズ船の遊園地になっている、我々は自然環境をこんなふうにしている、という事実に対する、私なりの行動です」

「ふと思いついたのです。私は眠るときはいつも裸なんです。裸でなかったら、このとっさの行動はなかったかもしれませんね」

スヴァイン・インヴォルドのフェイスブックをさきほど見た。すでにオリジナル写真は削除されていた。彼は「反響が大きく電話は鳴りっぱなし。71歳の人間にはフィヨルドの大型クルーズ船のもたらすことより危険です」と冗談っぽく書いている。でも、報道写真はそのままだ。そこには「コペンハーゲンには人魚姫、我々にはスヴァインがいる」という、なんとも楽しいコメントがあった。

彼の妻はアーティストらしく、彼女のフェイスブックには、上品なアート作品が数多く投稿されている。夫のヌードを載せたくなかったのは、よくわかる。


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       ▲クヴィンヘーラ市の観光パンフレットより


Slik protesterte Svein Ingvald (71) mot cruisenæringa
Kvinnherad kommune
女性議員やミニ政党が当選しやすい選挙制度とは
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by bekokuma321 | 2018-08-10 12:51 | ノルウェー