ある女性の生誕100年を記念してその業績が大きく報道されている。

女性はエヴァ・コースタッド(1918~1999)。ノルウェーの男女平等オンブッド第1号だった。当時、男女平等推進のためのオンブッド(オンブズマンのこと)を持つ国は他になかったので、世界初の男女平等オンブッドだ(注1)。

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     ▲エヴァ・コースタッド。1995年7月オスロにて撮影三井(『男を消せ!』より)

北欧では、法律は、独立した特別の監視機関がなければ守られないものだとみなされている。その機関は、個人が誰でもいつでも簡単に利用でき、無料でなければならない。このような市民の常識から生まれたのが、オンブッド(オンブズマン)だ。目線は常に社会的弱者だが、裁判官と大臣を足して2で割ったような強い権限を持つ国家公務員だ。ただし任期は6年。

ノルウェーの男女平等オンブッドは、1978年男女平等法とともに生まれた。当時の法の10条~12条に規定があった。

オスロで、エヴァ・コースタッドに取材をしたのは、1995年7月。『男を消せ! ノルウェーを変えた女のクーデター』(三井マリ子著、毎日新聞社)に取材内容が詳述されている。

その中からひとつあげる。エヴァは私に「全市に公的委員会の性別構成比を出させて、どの市のどの委員会に何%しか女性がいないということを明らかにさせた。それをもとに、なぜこの委員会には女性がいないのかと市長に質問をする」と教えてくれた。さらに「男ばかりの船舶委員会を持つ市があった。まずは船舶委員会の委員長に手紙を書き、電話をした。適格者がいないというので、『あなたの奥さんや娘さんだって船で旅行するでしょう』と言った。翌年、その市の船舶委員会に初めて女性が入った」

さしものノルウェーも、「当時は市長は男性ばかり」。エヴァ・コースタッドは、市長相手に女性を増やすよう変えてもらうことは「楽な仕事ではなかった」とつぶやいた。

今晩、豪雨のなか女性たちが財務省前で「麻生辞めろ」と怒りのデモをしている。

麻生大臣は、露骨なセクハラを繰返した福田事務次官(今は辞職)の任命責任、管理監督責任者である。あんなセクハラ男を野放しにしていたのだから、その責任をとって一刻も早く辞めるべきなのに、あろうことか、麻生大臣は「はめられて訴えられているんじゃないか」「セクハラ罪っていう罪はない」などと福田次官をかばった。

ノルウェーにもどる。ノルウェーの男女平等法は何度か改正されている。セクシュアルハラスメント、ジェンダーハラスメントの禁止も盛り込まれた。セクハラは男女平等法で定義づけされ、明快に禁止されている。

一方、日本の雇用機会均等法でも、セクハラが明記されているが、禁止されていない(注2)。麻生大臣のような支配者に「セクハラ罪はない」などと言わせないためにも、厚労省はただちに改正してセクハラ禁止規定にすべきだ。

さらに、エヴァ・コースタッドが就いていた男女平等オンブッドのような独立機関が、セクハラなど性被害の根絶には絶対必要だ。被害者が、財務省の顧問をしている弁護士事務所に訴え出ることなどできるはずはない。


【注1】現在では、男女平等オンブッドは「平等・反差別オンブッド」と呼称が変わって、対象が拡大された。
【注2】1997年、日本の雇用機会均等法が改正されて事業者のセクハラ防止義務(禁止ではない)が明記された。これは、アメリカの三菱自動車で働く女性たち100人が起こしたセクハラ訴訟、彼女たちとともに不買運動をした女性団体NOWなどのおかげである。セクハラの苦しみを訴えたアメリカ女性労働者がいなければ、日本の雇用機会均等法にセクハラの防止義務さえなかったのだ。この訴訟は、アメリカのEEOCが三菱を相手に集団訴訟を起こした。EEOCは雇用機会均等委員会のことで、北欧のオンブッドのような独立機関である。後に、三菱は実に約50億円もの賠償金を支払って和解をした。

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▲オスロのエヴァ・コースタッド通り。彼女に敬意を表して、かつての通りの名を変えて彼女の名にした

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▲1971年の地方選は「女のク―データー」と呼ばれた(毎日新聞『男を消せ! ノルウェーを変えた女のクーデター』に詳述)。オスロ市議会に登庁する女性当選者たち。中央はエヴァ・コースタッド。Milestones in Norwegian women’s history より

セックス同意法(スウェーデン)
映画界の女性差別をなくすために
男女平等大臣、クオータ制反対を公言
平等オンブッド、Tシャツに怒る
ノルウェー地方選レポート1:「女のクーデター」再び
平等・反差別オンブッド、地方行脚
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ついに映画産業にクオータ制
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# by bekokuma321 | 2018-05-08 00:00 | ノルウェー

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 ▲東京新聞の記事。2018.4.11
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# by bekokuma321 | 2018-05-07 13:35 | その他

c0166264_2251050.jpgドイツ社会民主党は4月22日、党大会で、アンドレア・ナーレスを党首に選任した。1863年に党が創設されてから155年。初の女性党首だという。

党首選で敗れた対抗馬のシモ―ヌ・ランゲは警察官で、こちらも女性である。御存じドイツの首相メルケルは保守党党首であり、これで保革どちらの党首も女性となった。

アンドレア・ナーレスは47歳。エイフェル地方の小さな村で、れんが職人である父親と事務員の母親の間に生まれた。18歳で社会民主党に入党し、党の青年部で頭角を現してきた。

ドイツの教育制度に詳しくないが、アンドレア・ナーレスは、定時制(または生涯教育制)で高校を卒業し、ボン大学で政治学、哲学、ドイツ学を学び修士号を取得したという。

彼女の優先政策は、正義の尊重と社会福祉の充実。「現代に最も欠けているもの、それは連帯」と言っている。シングルマザーで、若い娘とともに、曾祖父が建てた農家に今も住んでいるとは、なんともほほえましい。

スウェーデンの首相ステファン・ロベーンは、溶接工から政治家になった。代表的労働者階級から、こうした指導力あふれる政治家が出てくるのは、選挙制度のおかげもあると思う。

スウェーデンは比例代表制、ドイツは比例代表制が基本の併用制である。比例代表制は、人を選ぶ選挙ではなく、政党の政策を選ぶ選挙であり、議席数は政党の得票数に比例する。

Andrea Nahles
German Social Democrats elect Andrea Nahles as first female leader
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# by bekokuma321 | 2018-05-06 23:00 | ヨーロッパ

4月20日、東京で国際シンポジウム「選挙を変えれば暮らしが変わる ♪モノトーン議会からオーケストラ議会へ♫」が開かれた。

「安倍政治を許さない」と思うこの頃だが、横暴な男たちがのさばり、女の声がかき消されている日本の政治構造は、ますます許せない。世界ではどのように女の発言が認められるようになったかを知りたくて、京都から参加した。
 
ノルウェー、ニュージーランド、韓国はどう変わってきたかについて大使館の3人が報告をした。

ノルウェーでは、1913年 女性の選挙権が認められた。その後、女性議員が増えていき、中絶が合法化され、父親に割り当てられる育休を含む長い両親休暇が認められた。2017年の選挙の投票率は78%。女性議員が4割を超え、首相も、連立内閣の半数も、女性である。

ニュージーランド では、1996年まで小選挙区制の選挙だったが、比例代表併用制に変わって、現在は女性38%だ。 首相も女性で、彼女は6月から6週間育児休暇を取ると発表。休暇中は、副首相が代理を務めるという。日本では、首相どころか議員でも休暇をとったりすると、選挙に響くからギリギリまで秘密にされる。比例代表の選挙制度は、人を選ぶ選挙ではないから、政治家は病欠や育休を堂々と公表できるのだろう。

驚いたのは、数年前、ノルウェー旅行した時に会った牧師のシ―ヌブ・サクラ・ヘッゲムさんが参加していたことだ。シンポのチラシを掲げて、「この女性のConfirmation(堅信礼)をしたのは、私なんです」と言った。彼女は、神戸生まれのノルウェーの牧師さんだが、数年前まで議員さんもしていた。牧師をしながら余暇に議会活動をする、そんな話もしてもらいたかったが、時間はなかった。

実は、チラシデザインを担当したのは私だ。チラシを見てほしいが、三井マリ子さん撮影の写真を使っている。サクラさんが「堅信礼をした」と言った女性は、オスロの投票ブースから出てきたところだ。投票ブースの中に置かれたたくさんの政党の候補者リストのなかから、彼女は支持する政党のリストを1枚選ぶ。その手に持った投票用紙(=リスト)を、これから投票箱に入れる。

ノルウエー旅行で思い出したが、オスロの路面電車で、ベビーカーに1歳くらいの男の子を乗せたパパが乗っていた。路面電車は、ベビーカーが乗り降りできるゆったりしたスペースもあって羨ましいかぎりであった。

ふじみつこ(MITSUART)

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 シ―ヌブ・サクラ牧師。賀川豊彦研究のため神戸に滞在中、たまたまチラシを見て参加した(撮影富山達夫)

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 ▲ノルウェー王国大使館、ニュージーランド大使館、韓国大使館のスピーカーたち(撮影富山達夫)


国際シンポ「選挙を変えれば暮らしが変わる」に参加して③
国際シンポ「選挙を変えれば暮らしが変わる」に参加して②
国際シンポ「選挙を変えれば暮らしが変わる」に参加して①
国際シンポ「選挙を変えれば暮らしが変わる」韓国
国際シンポ「選挙を変えれば暮らしが変わる」ニュージーランド
国際シンポ「選挙を変えれば暮らしが変わる」ノルウェー
国際シンポ「選挙を変えれば暮らしが変わる」序
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# by bekokuma321 | 2018-05-06 07:31 | その他

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スウェーデン・アカデミーは、5月4日(金)、2018年のノーベル文学賞はないと発表した。報道によると、1949年以来、初めてだという。

スウェーデン・アカデミーは、ノーベル文学賞を決める機関だ。アカデミーは「アカデミーの人数が減っている事態と、アカデミーの信用失墜」からこの決定に至ったと語っている。2018年のノーベル賞は2019年に一緒に発表するらしい。

事の発端は、4月17日FEM-NEWSで紹介した。アカデミーの会員である詩人カタリーナ・フロステンソンの夫フランス人写真家ジャン・クロード・アールノーによる性的暴行疑惑と、妻から情報を得て事前に受賞者名を漏洩した疑惑だ。

世界を動かした#Metoo運動のもと、アールノーからセクハラや性暴力を強要されたという女性が次々に声をあげた。疑惑の主ジャン・クロード・アールノーは否認を続けている。

アカデミーの信用がガタガタになった。詩人フロステンソンを辞任させずに留任させたとして、18人アカデミー会員のうち3人が、自ら辞任を表明。さらにアカデミー改革に取り組もうしてしていた初の女性事務局長サラ・ダニウス(写真)が辞職した。

サラ・ダニウスの辞職は、表向きはトップのリーダーシップの欠如とされているようだが、実際は、アカデミー守旧派との確執から、更迭されたとされている。

「男の悪事の責任をとらされて」辞職に追い込まれたサラ。スウェーデンの女性たちは激怒した。デモで憤りを示したり、彼女のトレードマークのボータイブラウス(注)を着たり・・・サラへの支持は広がっていた。

こうして、スウェーデン女性の#Metoo運動は、ノーベル文学賞までぶっ飛ばした。


【注:子猫ちゃんボウ(pussycat bow)ともいう。猫の首につけるリボンのように、首元でリボンを蝶結びにするブラウス。サラ・ダニウスはこれをよく着ていたので、彼女への共感を示すシンボルとなった。アメリカ女性が、子猫ちゃん帽(pussycat hat)をかぶってトランプ大統領の女性蔑視に抗議をした「女性の大行進」にあやかったのかもしれない】

【写真:2017年、カズオ・イシグロの受賞を発表するサラ・ダニウス事務局長。Youtubeより】

The Swedish Academy postpones the 2018 Nobel Prize in Literature
Thousands to protest outside Swedish Academy meeting
ノーベル文学賞選定機関の女性蔑視
'Not all traditions are worth preserving': ousted Swedish Academy head Sara Danius
Swedish Academy's first female head ousted after #MeToo scandal
De visar sitt stöd för Sara Danius med knytblus
セクハラやめろ!(スウェーデン)
セックス同意法(スウェーデン)
ノルウェー労働組合員736人、組織内のセクハラ文化を抗議 「恥と罪の意識を返却します」 #MeToo
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# by bekokuma321 | 2018-05-04 22:18 | 北欧