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新刊『ジェンダー・クオータがもたらす新しい政治』(三浦まり編、法律文化社)を読んだ。メキシコ、アルゼンチン、フランス、台湾、韓国、イギリス、ルワンダ7か国のクオータ制度について、それぞれ専門家が詳述する学術書だ。


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先日、メキシコの大統領選有力候補2人はともに女性、というニュースに接して、いったい何が起こっているのかと驚いた。そのメキシコは、本書によると、10年前に憲法を改正して「パリテ(男女同数)」を導入したという。その結果、現在、国会は男女半々なのだそうだ。なるほど、それなら大統領候補2人とも女性は、十分ありうる。


80年代、女性を議会に増やすことが民主主義だと考えていた私は、北欧ノルウェーのKvote(英語のQuota)に出会った。当時、その読み方すらおぼつかなかった。ノルウェー大使館の知恵を借りて「クオータ制」と和訳して本や講演で紹介した。全国フェミニスト議員連盟をつくって運動も続けた。長い道のりだった。が、いまだに日本では制度化されていない。


本書が示唆しているが、クオータ制の実行には、比例代表制選挙中心の選挙制度に変えて政党が候補者リストを男女交互にすること、または、憲法を変えて議会構成員に性による割り当てを定めることだ。そのどちらも、今の日本の政権に期待しても無理だろう。


本書で、王貞月が書いている台湾の制度のように、衆院の比例代表枠の重複立候補をやめて政党がクオータ制を実行しやすくすることに手をつけるのはどうか。なぜなら、衆院選比例区候補の多くは小選挙区の候補であり、その比例区候補は、小選挙区で当選した候補者の票に最も肉薄した落選者から順に当選する。これでは地盤・看板・カバンを持つ現職(多くは男性)に有利だ。比例代表制本来の”よさ”が発揮されないのである。


男女平等への大いなる旅ーーこの本は、旅のともにしたい1冊だ。




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32年前に産声をあげた全国フェミニスト議員連盟: FEM-NEWS (exblog.jp)

「クオータ制」「男女平等オンブッド」を日本にも:ノルウェー王国功労章受章式を見て(by 高橋三栄子) : FEM-NEWS (exblog.jp)

速報:「女性が当選しやすい選挙制度をめざそう!」@5/9衆議院議員会館 : FEM-NEWS (exblog.jp)

ノルウェー最大政党のクオータ制条項: FEM-NEWS (exblog.jp)

ついに映画産業にクオータ制: FEM-NEWS (exblog.jp)

連載● クオータ制は平等社会への一里塚 第5回 : FEM-NEWS (exblog.jp)

国際シンポ「選挙を変えれば暮らしが変わる」報道 : FEM-NEWS (exblog.jp)

ヨーロッパを動かしたノルウェー「取締役クオータ」 : FEM-NEWS (exblog.jp)


【写真上:新刊『ジェンダー・クオータがもたらす新しい政治』】

【写真下:1980年代にノルウェーで使われていたクオータ推進運動のバッジ。「私はクオータ制で当選しました。素敵でしょ」】



# by bekokuma321 | 2024-04-30 22:50 | 日本

428日、衆院補選で当選した3人のうち、女性は2人にのぼった。女性は、464議席中わずか48人しかいない衆議院が50人に増える。よって、女性の割合は10.3%から10.8%にわずかにアップする。


とはいえ、衆議院の女性割合は、世界162位から160位へ2つ上がるだけだ(他国の選挙結果が現状のままだとみなして)。国際的には男女平等後進国の烙印を返上はできない。


祝!衆院補選で女性2人当選_c0166264_10483121.jpg

今回の補選は、自民党の「政治とカネ」事件が日本列島をおおっているなかでの国政選挙だった。自然の流れとして、有権者の怒りの1票は、野党の立憲などの候補へと行く。その与野党対決となったのは島根のみ。予想どおり亀井亜希子元衆議院議員(立憲)が圧勝した。


しかしながら、東京15区である江東区は、乱立混戦状態だった。そのなかで、勝利を手にしたのは酒井なつみ候補(立憲)だった。


酒井候補は元江東区議で、前回、区長選にも挑戦した。しかも、今、日本の政治が必要としている看護師・助産師というケア部門の経歴を持つ若い女性である。これは、プラスに働いたはずだ。さらに江東区で勢いのある共産党が擁立していた候補を断念して共闘に回ったことも、幸いしたと思う。また、「酒井なつみさんを応援する江東の会」(元江東区義の中村まさ子新島つねお共同代表)という勝手連もできて、福祉政策を中心にすえる現職の間庭尚之区議が応援に回っていた。


https://data.ipu.org/women-ranking/?date_month=4&date_year=2024


【写真は 江東区で選挙演説をする酒井候補と応援弁士の間庭議員。同議員FBより】

【更新:2024/4/30】


# by bekokuma321 | 2024-04-29 11:11 | 日本

ノルウェー好きのみなさん、5月11日土曜日、「マイ祭 MaiSai」で、まるごとノルウェーを味わってみませんか。

会場は、女性ジャーナリストのパイオニア 羽仁もと子が創設した「自由学園明日館」。文化遺産となっている歴史的建造物です。池袋駅徒歩5分。10時から17時まで。ノルウェー・フード、文化、音楽、語学、演劇などノルウェーの魅力が盛りだくさん。昼過ぎからは、講堂にて、ノルウェーが生んだ偉大な劇作家イプセンの「人形の家」ではじまるトーク・ショーをお楽しみください。

もっと詳しくは公式ホームページをhttps://maisai.tokyo/jpn



案内 5/11(土)マイ祭@自由学園明日館_c0166264_13441162.jpg



案内 5/11(土)マイ祭@自由学園明日館_c0166264_14430827.jpg




# by bekokuma321 | 2024-04-28 13:58 | ノルウェー

3月末、三井マリ子さんの「なぜ日本では性差別がまかりとおるのか――日本の小選挙区制がはばんでいるもの」(雑誌『望星』2024/4)を読みました。思うことがあり、すぐ感想を書きたかったのですが、421日、岐阜県瑞穂市は市議選だったため、遅れてしまいました。


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        ▲2024年4月21日に行われた岐阜県瑞穂市議会議員選挙


今回、落選は2人しかいませんでした。それを知って「エーッ少ない」と驚いた市民がいます。というのも、前回(2020年)は、この私を含めて8人も落選したのです。日本の選挙制度の弊害を考えるひとつの例として、ぜひ知っていただきたく、報告します。


(2020年市議選で)8人落選の裏には、市長だった時の大型土建事業を潰した私を含めて革新系市議たちに対して「死んでも死に切れん」と憎んでいた元市長の思惑がありました。彼は、その人たちを何が何でも落選させたいため、6人もの新人を立候補させました。その6人は全員当選。現職の多くは落選したのです。瑞穂市たったひとりの女性議員だった私も落選したため、瑞穂市は「女性ゼロ議会」になりました(今回、私は立候補しなかったが、女性1人当選)。


なぜこんなことが起きたか。小選挙区制選挙の手法を使ったのでした。地方議会議員選挙は、ひとつの選挙区から多数が当選する、大選挙区制です。その大選挙区制を、衆院選で選挙区から1人だけ当選する、小選挙区制的にしたのです。


新人6人の候補者は、それぞれ地区割りした自治会に集中的にあいさつ回りをしました。各地区の人たちは、「何度も足を運んでくれた人」「自分の地区の人」に1票を入れる傾向があります。知人は、私に「熊谷さん今度はごめん」と謝ってきました。


「日本の小選挙区制がはばんでいるもの」を読んで考えた瑞穂市の選挙 by 熊谷さちこ_c0166264_21020702.jpg私は、特定の1地区から票を集めるのではなく、瑞穂市全域から少しずつ票をとってきました。ところが、6人の新人候補に少しずつ票をさらわれてしまったのです。私は、「日本の小選挙区制がはばんだもの」となったのです。


瑞穂市は、旧巣南町と合併した旧穂積町の松野ファミリ―と呼ばれた家族が、戦前、村議から町市県の首長、県知事、国会議員まで、60年間独占してきました。戦後直後、公職追放となった夫の身代わりで村長に当選した日本初の女性村長も、この松野一家です。彼女は1143年間という多選首長でしたが、土地取引にからむ不正で辞任したそうです。昔の話とはいえ、選挙となると今でも背後でうごめく松野ファミリーの残党がいるのです。


私は、瑞穂市に移り住んで52年。子どもと本の活動をしながら、町をよくしたいと思う議員たちを手伝っているうちに政治の世界に入りました。


議員になって22年間。この目で見た政治の世界は驚きでした。政治家のとんでもないウラオモテ、有権者の面前と実像のあまりの乖離。ひどい仕事ぶり。こんなに仕事ができないのに、お金が貰えて、「先生」と呼ばれて威張っていられる仕事なんて世の中に1つもナイです。


地縁血縁がいない、よそ者の私が伝える政策に耳を傾けてくれる人たちが増えていったからこそ、4期連続当選を続けてこれたのです。それを思うと今でも胸が熱くなります。


その代わり、私を憎んだ人たちも少なくない。ことに土建産業と癒着してきた保守王国の人たち。そういう生き方と価値観が骨の髄まで染み込んでいる人たちから、私は格好の標的にされました。


政治は、世の中の全ての人々に関わる重要な仕事です。これほどやりがいのある仕事が他にあるでしょうか。「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」(宮澤賢治)――これを具現化できるのは政治家なのです。だからこそ、選挙は大事です。私利私欲で議員になりやすい選挙方法は願い下げにすべきです。


熊谷 さちこ (元岐阜県瑞穂市議会議員)



クオータ制導入に立ちはだかる小選挙区制度の壁 by 古怒田悦子 : FEM-NEWS (exblog.jp)

まとめ「こうして脱した女性ゼロ議会 これがじゃました女性ゼロ議会」by 全国フェミニスト議員連盟 : FEM-NEWS (exblog.jp)

「比例代表制にすべきは今だーーフェミ議連会議に参加して」 by 守口恵子 : FEM-NEWS (exblog.jp)

報告「ノルウェーと日本、この違いはいったい何なんだ」@岐阜市ハートフルフェスタ2023 : FEM-NEWS (exblog.jp)



# by bekokuma321 | 2024-04-25 19:02 | 日本

埼玉県日高市の市長選で、ジェンダー平等のゆきわたる社会を公約のひとつに掲げた田中まどかさんが立候補した。しかし、惜敗だった。


埼玉県日高市長選から考える_c0166264_19231299.jpg


投票率は45.8%。各候補の得票数は:

谷ケ崎照雄 8714 (42.1%)              

田中まどか  6567 (31.7%)

松尾まよか  5428 (26.2%)


田中まどかさんは、長く市議を務めてきて、日高市の市民や市政を知り尽くしている人だ。「問責決議」「辞職勧告」などを受けてきたが、それはひとえに不合理な議会慣行による少数派排除といえるものだったことを私は知っている。市民も、それをよく知っているからこそ、田中まどかさんを2度もトップ当選にしてきた。


その日高市で、長年、市長選は無投票が続いていた。その没民主主義に一矢報いるため、田中さんは、市議ポストを辞して臨んだ。


当初、立候補者は現職に加えて田中さん一人と予定されていたようだが、「世代交代」を掲げる40代の松尾さんが立候補したため、三つどもえとなった。


谷ケ崎さんは自民公明の支援を受け、田中さんは立憲社民などの支援を受けた。それに対し松尾さんは「完全無所属だからできる日高のための政治」と、無党派層をねらった。とはいえ2人は、女性という共通項だけでなく、子育て、教育、環境など似かよった公約も多いことが、ホームページなどからわかる。


裏金事件で自民党への信頼が失われている最中だったが、結果として、現職の谷ケ崎照雄さんが4選をした。だが、6割近い票が2人の女性候補に行った。谷ケ崎さんは、この結果を踏まえた市政運営を心がけることが期待される。その意味でも、田中まどかさんの挑戦は大きな意義があった。


それに日本には、決戦投票という2段構え選挙はない(注)が、もしも上位2人(谷ケ崎、田中)の決戦投票があったら、結果はどうだっただろう。


日本の首長選は、純粋の小選挙区制である。1票でも多くとった候補が当選する。1選挙区から1人だけ当選する衆院選と同じだ。究極の弱肉強食といえる。


これに対し、ヨーロッパの地方議会の多くは、比例代表制選挙だ。1票は候補者個人ではなく政党に入れる。大政党から小政党まで政党ごとの得票割合に比例して、議員数が決まる。選挙後、政策の似ている政党で連立を組み、そこで協議をして、首長を決める。首長選挙はない。いわゆる国会の議院内閣制と同じだ。


北欧、とくにノルウェーの地方議会を追っかけてきたが、どの政党も、「市政を主導するのは我が党です」と選挙に挑む。日本なら「オール与党」と呼ばれるような小さな自治体であっても、5つか6つの政党から議員が当選する。その議員の中から、首長だけでなく、各委員会のトップも、政党の議員割合に比例して割り振られる。だから、議会は、常日頃から、政党間で丁々発止と議論を重ねつつ共通項をとるやり方で進んでいく。


小選挙区制は一強政治におちいりやすい。多様性の時代にふさわしいのは、どちらの選挙制度だろうか。




【注:日本でもかつて決選投票が行われていた。現在はフランスの大統領選が有名】


【写真は田中まどかFacebookより】



# by bekokuma321 | 2024-04-22 19:37 | 日本