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大好きな日本だからこそ比例代表制をーーー書評『さよなら!一強政治』(王貞月)_c0166264_10583031.jpg

『さよなら! 一強政治――徹底ルポ 小選挙区制の日本と比例代表制のノルウェー』 (三井マリ子、旬報社、2020)


選挙活動は、他国と比較しなければ、当たり前だと思って気がつかないことが多い。選挙カーがうるさく町を回っていること、誰も相手にしない候補者の駅前演説、候補者同士の議論なしの政見発表、実行可否さえ判明できない政見公約…などは、日本ではよく見受けられる。


それに対して、ノルウェーでは、政党党首のテレビ討論が選挙運動の中心活動となっていること、若者は学校選挙(スクール・エレクション)で鍛えられていること、多数派だけでなく少数派の意見も大事にされていること…などが当たり前だ。


もっと言えば、ノルウェーでは、老若男女が自然体で政治に関わり、気軽に選挙活動に参加する。大政党から小政党まで支持者数に応じて議会に議席を持っており、人口数に関わらず少数先住民族のサーミ族は「サーミ議会」(サーミ族の国会)を持っている。


今日の日本は「死票」、「一票の格差」、「一党優位」、「低い投票率」、「無投票当選」、「女性議員過少」などの課題を抱えている。しかし、これらの問題はノルウェーでは存在しない。


なぜか?


さまざま理由はあるだろう。だが、最も肝心な点は「選挙制度」にあると思われる。著者は「小選挙区比例代表並立制」の日本と単純「比例代表制」のノルウェーを比較しながら、異なる選挙制度がもたらした結果の違いをまとめ、さらにいかに改善すればよいかを示している。


本書のあとがきで、筆者は、京都帝国大学教授の森口繁治の『比例代表法の研究』(1925)にある一文を現代風に訳して紹介する。


「選挙は重要だが、もっと重要なのは選挙方法である。この不合理極まる多数代表制のもとでは、少数である限り、その投票は反故にされ、実質的には無効票となる。すなわち少数者は選挙をしないのと同様であり、参政権を有しないのと同様である。」(p234)。


森口がこの大著を出版したのは、ノルウェーが「比例代表制」になった1920年とほぼ同じ時代であった。日本でも100年も前に先見の明を持つ学者がいたことに嬉しく思った反面、それが実践されていたら、「死票」や「無投票当選」などに直面しなくてもよかったに違いない、と思う。


「ゆえに比例代表制にしなくてはならない」(p234)と力強く呼びかけていた森口と著者と同じように、一刻も早くみんなが「一人一人の意見を尊重する比例代表制選挙」を理解し、推進すべきだと思う。


日本が大好きな私は日本を故郷と思うからこそ、将来の日本が、優れている面を守りながら、真の民主主義国家に発展することを期待している。皆さんと一緒に「比例代表制」を学び、「女性議員の増加」および「議会の多様性」などに尽くしたい。


王 貞月(大学非常勤講師)


# by bekokuma321 | 2021-03-31 22:46 | ノルウェー

ノルウェー軍のセクハラについて知らせたが、ノルウェー警察署におけるセクハラも社会問題となっている。昨年、両分野においてセクハラ被害調査が行われて、その被害の多さが公表されたからだ。制服組にありがちなボーイズ・クラブ心理、職場の強い上下関係の存在などが原因の一端であると、メディアで報道された。


そこで、平等・反差別オンブッド(オンブズマンのこと)は、セクハラ予防と対策について、研修に乗り出した。オンブッド、平等センター(KUN)、警察大学校3者による協力のもと、20213月から開始される。


初年度は5コース。コロナ禍なのでとオンライン研修となる。コース内容は、平等と差別に関する法律の学習、実際のセクハラ事件の学習、セクハラ告発者に対する対応、など。非常に実践的だ。


平等・反差別オンブッドは、かつての男女平等オンブッドと呼ばれ、男女平等法が正しく運用されているかを監視する機関だった。後、人種、マイノリティなどに対象が広がった。法律にもとづいた公的機関で公費によって運営されている。しかし、独立した監視機関で政府も批判する。たとえば、女性差別の被害者からの苦情を受けて調査にあたり、結果次第で、加害者に対して、助言や勧告を行ったり、メディアで公表したりする。裁判に訴えるとお金も時間もかかるが、こちらは無料で、しかも迅速だ。1979年からの長い歴史と実績を持つ。


オンブズマンは“北欧民主主義の華”と称され、もともとは官僚の世界に対して一般市民の味方になって不満の声を届けるためにできたと言われている。


こうした権威ある国の独立機関が、民間団体KUNとコラボして、警察学校を引き入れて、セクハラ防止研修に乗り出したことは注目にあたいする。


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 ▲ノルウェー国会。前の広場は散歩や憩いの場。デモで埋め尽くされる日も多い


# by bekokuma321 | 2021-03-29 18:12 | ノルウェー

抵抗する知恵と力の大切さを与えてくれた『バックラッシュの生贄』(古川晶子)_c0166264_22181598.jpg

2012年発行の『バックラッシュの生贄 フェミニスト館長解雇事件』(三井マリ子・浅倉むつ子 旬報社)は、大阪府豊中市の男女共同参画センター「すてっぷ」で、2003年度に起きた非常勤館長の雇い止め事件について、当事者・三井マリ子さんが筆を執ったルポルタージュです。


再読して思ったことは「わきまえない女、ここにあり」です。「森喜朗発言」の「わきまえ」た女とは正反対の「わきまえない女」三井さんは、「わきまえ」ることを迫られる私たちに、抵抗する知恵と力の大切さを残してくれました。


1999年の「男女共同参画社会基本法」は全国で条例や関連施設をつくる機運を生み、「館長を民間から公募」という豊中市方式は注目を浴びました。三井さんと言えば女性政策研究家として当時すでに著名。世界の最先端の女性政策を現地で取材し、文筆だけでなく、講演などで親しみやすい語り口で届けていました。


初代館長に就任した三井さんの専門性と実績を生かした企画は、意義深く魅力的なものばかり。ところが、男女平等社会への歩みを止めようとする日本会議を背後に持つ「バックラッシュ」(反動)勢力の目にとまり、その関係者である議員などによる三井さんへの執拗な攻撃が議会内外で始まりました。


あろうことか、それに屈した豊中市役所と財団(センターを運営する外郭団体)は三井さんをうとましく思うように変化し、卑怯な手段を用いて…本書で明らかにされたその経緯は、編集者に「ぞっとする」と言わせるほどのもの。三井さんは雇い止めされましたが、7年にわたる裁判の結果、最高裁は、それが不当であったと判断しました。


私は現在、非正規公務員として、男女共同参画センターで講座などの企画を担当しています。「すてっぷ」で三井さんが手がけた数々の企画は、知識や能力はもちろんのこと、長年の信頼関係があってはじめて実現する内容だということを実感しています。そんな得難い方を、「バックラッシュ」勢力に屈して騙し討ちにした行政には、卑怯という言葉では足りない冷酷さを感じます。本書には、労働法とジェンダー法の研究者・浅倉むつ子さんの意見書「1.人格権侵害と使用者の職場環境保持義務」が、そのすべてが違法であったことを解説しています。


事件から約15年、日本の性差別解消は進んでいません。それどころか「ジェンダー・ギャップ指数」の日本の順位は下降の一途。森喜朗発言など指導的立場にいる人による女性蔑視も止みません。日本社会における男女共同参画センターの意義は高まるばかりです。


ところが、その多くは、予算を縮小され、人員も削減。「会計年度任用職員制度」は、うたい文句だった非正規職員の待遇改善はなされず、次年度に雇用されるかどうかもわからない不安定身分のままに据え置く制度です。強調したいのは、センターで専門性を要する仕事を担う職員のほとんどがこの「会計年度任用職員」の女たちだということです。


無力感に心が折れそうになります。そんなとき、出会ったのが本書です。本書が詳述する、ジェンダー平等のために公共機関が果たす役割、それを否定する反動勢力の存在、その卑劣な攻撃、抵抗と再起・・・それらを私は追体験し、自らの位置を確認することができました。


三井さんの裁判費用には、「住友電工男女差別事件」の和解金による「基金」が活用されたそうです。日本企業の女性差別に抗した方々が手にした勝利を次の女性のために残したものです。女たちの歩みは確実に引き継がれています。


古川晶子(
まんなかタイムス 発行人)


日本会議的政治と闘った裁判の記録:『バックラッシュの生贄』 (岩崎美枝子)

「日本会議」に向かって闘いを挑んだ本(加島康博)
読者は二つの怒りを体験する:『バックラッシュの生贄』を読んで(高坂明奈)
標的は憲法9,24条: 『バックラッシュの生贄』を読んで(高開千代子)
インパクションに『バックラッシュの生贄』(田中玲)
一気に読んだ、勉強した、考えた:『バックラッシュの生贄』を読んで(小枝すみ子)
バックラッシュ思想は女性のあらゆる権利を奪う(森崎里美)
豊中バックラッシュは国家的プロジェクトの一環だった:『バックラッシュの生贄』を読んで(伊藤由子)
今も続く右翼的攻撃の楯となる本:『バックラッシュの生贄』を読んで(岡田ふさ子)

「そうだ、私たちはファシズムと戦っている」--『バックラッシュの生贄』を読んでムラタ・キョウコ)

ジェンダーに関心を持つ人は必読ーー『バックラッシュの生贄』を読んで正路怜子)

ファイトバックの会(館長雇止めバックラッシュ裁判)


# by bekokuma321 | 2021-03-27 23:05 | 日本

2021年4月10日は女性参政権75周年!_c0166264_22351403.jpg

戦後すぐの1946年の4月10日、日本女性は初めて投票所に足を運びました。この、初の女性参政権行使から今年は75年です。


女性参政権記念日の前夜、「女性の政治参加で、みんなが幸せ」という集いがあります。女性が政治にかかわることの重要性を確かめ合い、どうしたら増やすことができるのかをみなで話し合います。会場にはI女のしんぶん」連載記事「叫ぶ芸術」で公開中の、世界の女性運動のポスターの一部を展示中。ポスターを見ながら男女平等を願う活動をたどり愛媛の明日を考えます。


と き 4月9日18:30~20:30

ところ 菅もりみ事務所(愛媛県今治市枝堀町1-2-22)

問合せ 090-4330-5634  morimi.107@gmail.com


# by bekokuma321 | 2021-03-26 22:47 | 日本

宮城県加美町議会。321日の選挙で、伊藤由子さん、尾出(おいで)弘子さんの女性2人が当選した! 尾出さん749票、伊藤さん716票。投票率65.7%。女性議員が倍増したのだ。


女性議員倍増への道程(宮城県加美町議会議員選挙)_c0166264_22174094.jpg

          ▲2021年3月21日投票日の宮城県加美町議会議員選挙ポスター


話は15年前にさかのぼる。伊藤由子さんたちが発行している「教育労働ネットワーク」が、私を仙台市に招いてくれた。講演会後の懇親会で、中学校の養護教員だった伊藤由子さんは「自分の住んでいる町に女性議員が誰もいない」とこぼした。すると、友人たちや私は、「なら、伊藤さんがピッタリ」と立候補を勧めた。「私は出る女性を応援する側に」と伊藤さんは言った。


数年して伊藤由子さんは、加美町議会に挑む決意をした。2009年、初陣を飾った伊藤さんのおかげで、加美町は男性議員ばかりの「女性ゼロ議会」から「女性ひとり議会」に変わった。


伊藤さんは、3期目ぐらいから、本気で女性議員を増やしたいと、立候補してくれそうな人を探し始めた。でも断られるばかりだった。


今回も6人の女性に立候補を勧めたのだそうだ。そのうち2人は脈はあったものの結局、誰も立候補までいかなかった。


最後に決意してくれたのは、伊藤さんの後援会の責任者の尾出弘子さんだった。票分けなどという器用なことはしたこともないし、周囲の人たちは心配し始めた。実際、伊藤さんも、どうなるんだろうと内心、心配だったらしい。


だから、本当にめでたい、めでたい。


日本には、「女性ゼロ議会」「女性ひとり議会」が、全体の4割以上もある。女性議員を増やそうという意志はあっても、日本のような選挙制度では、とても難しい。それに、これまでの慣行や教育ゆえ女性はより尻込みしがちだ。だから、女性議員50%、いやせめて30%という目標達成に、今回の伊藤さんの経験は大きなヒントとなるだろう。


徳島県北島町「女性ゼロ議会」脱出なる : FEM-NEWS (exblog.jp)

村議会史上初の女性議員誕生(長野県川上村) : FEM-NEWS (exblog.jp)

「女性ゼロ議会」脱出めざして_2019地方選 : FEM-NEWS (exblog.jp)

女性ゼロ議会をなくそう!(岐阜県関市) : FEM-NEWS (exblog.jp)




# by bekokuma321 | 2021-03-26 22:25 | 日本