人気ブログランキング | 話題のタグを見る

速報「ノルウェー地方選:二大政党党首と市民とのTV政治討論会@トロムソ」_c0166264_22082614.jpg
▲大学生らしき若者が大勢立ち席で討論を聞く。食い入るような目

速報「ノルウェー地方選:二大政党党首と市民とのTV政治討論会@トロムソ」_c0166264_22085709.jpg
▲労働党党首(右から4人目)と保守党党首(右から3人目)に質問する市民(左)

速報「ノルウェー地方選:二大政党党首と市民とのTV政治討論会@トロムソ」_c0166264_22100121.jpg
  ▲9党代表は政策に応えてYes(緑の陣地)とNo(オレンジの陣地)を移動する


828日、NHKにあたるノルウェー公共放送NRKの政治討論番組を見た。夜8時から1010分前まで、ほぼ2時間だった。


場所は、北極圏にある大学町トロムソ。その図書館からのライブ放送だった。私は、8時からテレビにかじりついた。


公募に申し込んだ市民で会場は満席。立ち見もたくさんいた。現首相の労働党党首と、前首相の保守党党首を交えて、2時間ぶっ通しで続けられた。


ノルウェーは911日が統一地方選の投票日。とはいえ1か月前から投票でき、8月末には事前投票所で投票する人が増えてくる。9月に近づくと、メディアは選挙報道に余念がない。NRKTV討論会はハイライトのひとつだ。


ノルウェーの国会・地方議会の議員は全て比例代表制選挙で選ばれる。有権者は自分の気に入る政党をひとつ選んで投票する。日本のような候補者個人を選ぶ選挙ではない。だから、メディアの役目は「どの政党を選んだからいいか」を市民に知らせることだ。


昨夜のNRK番組は、次のような4部構成で、男女2人の司会によって進められた。用意周到ともいえる工夫をこらされた流れに、最後まであきなかった。


重要課題について市民と2党首との討論

②他の課題を持つ市民の質問に党首が答える 

市民とトロムソ市2大政党党首との討論  

④主要9政党の代表によるYes No態度表明  


かいつまんでまとめると、こんな具合だ。

「学校教育」、「軍備」、「出産と看護師・助産師」などがテーマだった。特に出産については、世界有数の安全な出産の国で起こった悲劇が会場を震撼させた。全体として、地方に住む人がかかえる深刻な問題と国の政策の関連が浮き彫りにされた。

安楽死の合法化を望む91歳の男性の発言が強烈だった。しかし、左派(労働党)も右派(保守党)も「安楽死をほどこすことになる病院職員の観点から反対」と答えていた。

③省略

フロアにYesNoと書かれた陣地があり、テーマごとに主要9政党の代表者たちが、パッと移動する。Yes陣地とNo陣地で半々のことが多いが、全党がYesのこともあった。ちなみに、安楽死をYesとした政党は極右と言われる進歩党だけだった。2時間の最終場面ということもあってか、エンタメに近い印象だった。とはいえ、全政党を集めて、政治を遊びにしてしまう技にむしろ感心した。


テレビを見たノルウェーの友人たちに番組の感想を聞くと、「非難の応酬がほとんどなく、なかなかよい討論でした」と言った。地方選挙で、こうした白熱した政策論争が行われるのは、政党を選ぶ比例代表制だからだろう。候補者個人を選ぶ日本のような選挙では、こうはいかない。


驚いたのは、首相と前首相に前もって質問は知らされていない、と報道されていたことだ。



【写真はテレビからの接写。3枚目は「固定資産税に賛成か反対か」と聞いている】


ノルウェー自転車レース「ビルケバイナー」に見る多様性と平等 : FEM-NEWS (exblog.jp)

政治家の出発点は中高時代の政治的関心(ノルウェー) : FEM-NEWS (exblog.jp)


# by bekokuma321 | 2023-08-29 22:38 | ノルウェー

ノルウェー自転車レース「ビルケバイナー」に見る多様性と平等_c0166264_23355737.jpg
    ▲スタートを待つ子どもたち

ノルウェー自転車レース「ビルケバイナー」に見る多様性と平等_c0166264_23392637.jpg
        ▲スポーツ万能のソールベイグはシニア女性の星


ノルウェー自転車レース「ビルケバイナー」に見る多様性と平等_c0166264_23452555.jpg
▲元警察官ビヨルグはピストルを鳴らすスターター役も務めた

ノルウェー自転車レース「ビルケバイナー」に見る多様性と平等_c0166264_23454574.jpg

        ▲「子ども記者」になって完走者(右)にインタビューる地元の中学生たち


2023826日、ノルウェーのレーナ。恒例の自転車レース「ビルケバイナーBirkebeiner」(注)がある。


レーナのオーモット市庁舎前からスタートして、リレハンメルまで84キロを走り切る。今年は国内外から4000人の男女が参加登録した。


人口4500人ほどのオーモット市は、町中が大賑わい。数えきれないほどの市民がボランティアで準備してきた。


こうした町をあげての大々的なイベントだと、日本ではまだ女性の存在感は希薄だが、ノルウェーは違った。


前日25日は、「子どもレース」。0歳から11歳まで男女159人が、町の中心部を完走した。親に付き添われて、地面に足をつけたりはなしたりしてヨチヨチ前に進む女の子は「1歳になったばかり」と、母親がちょっと自慢した。ハンディをかかえた女の子は、同年らしい3人にサポートしてもらいながら、大きな笑顔で完走した。


ゴールで、次々に到着する選手たちをメダルを持って迎えるのは大スポーツ好きのソールベイグ・ニューバーグと、警察官を退職したビヨルグ・スタイネ。


ソールベイグは御年84歳と聞いて驚いた。日々、ジムに通ってからだを鍛えている。誰知るスポーツ万能の年金生活者だ。一方、真っ赤なウエアが素敵なスタイネは、元警察官。このイベントを企画運営する委員会の委員であり、オーモット市議会議員。


一番でもビリでも、子どもたちには同じメダルがかけられる。ちなみにノルウェーのほとんどの小学校には成績というものがない。つまりテストはない。


レースに参加した子どもたちにインタビューするのは、地元オーモット中学の女子生徒たち。こんな具合だ。


「今日のレースのために、何か準備しましたか?」

「うーん、家からここまで自転車に乗ってやってきたから、練習になりました」


日本から来たと自己紹介したら、中学生記者たちは私に、「私たちは、子どもプレスです。これからすぐ編集して、動画をユーチューブで流します。見てくださいね」


ノルウェーの多様性と平等を見た一日だった。



【注】ビルケバイナーとは、樺(カバ)でつくった長靴のこと。昔、貧しかった人たちは、木のカバで手製の靴をつくったという。スキーにビルケバイナーをはいた勇士が、幼い王を抱きかかえて険しい冬山を超えて敵から逃れたという伝説がもとになっている。レースは冬にスキー、夏に自転車。どちらも、幼い王の重さ(実際は少し軽くして)3.4キロの荷物を背負うこともルールのひとつ。12歳~16歳は、リレハンメルから始まる「若者グループ」となる。


ノルウェー自転車レース「ビルケバイナー」に見る多様性と平等_c0166264_18380436.jpg



北欧福祉社会は地方自治体がつくる : FEM-NEWS (exblog.jp)

速報:福祉に予算が回る理由(北欧の福祉をさぐる講演会@北九州市) : FEM-NEWS (exblog.jp)



# by bekokuma321 | 2023-08-27 00:29 | ノルウェー

『ノルウェーを変えた髭のノラ――男女平等社会はこうしてできた』読後レポート(下)by おのみずき_c0166264_14004714.jpg

ノルウェー女性運動の歴史と変化は絶望を希望に変える


ノルウェーは、ジェンダー・ギャップ指数世界ランキング2だ。


『ノルウェーを変えた髭のノラーー男女平等社会はこうしてできた』(三井マリ子著、明石書店、以下『髭ノラ』)は、この平等先進国ノルウェーにおいて男女平等施策、特にクォータ制がどのような歴史的経緯をたどって、結果どのような変化がもたらされたのかを明らかにる。


前回書いた「5つの抑圧テクニック」提唱者ベリット・オースは、ノルウェー初の女性党首だった。その時、彼女が「党内の決定機関は50%を女性にすること」と要求して、綱領制定させたという事に、私は衝撃を受けた。半世紀前の1973年のことだ。


ベリットの他、『髭ノラ』には、数多くの女性たちの闘いの歴史が紹介されている。自由党初の女性党首であり国連における女性の人権政策を内部から動かしたエヴァ・コルスタ1884年設立の女性運動組織「ノルウェー女性の権利協会」の創設者ギーナ・クローグ、ギーナとともに尽力したフレドリッケ・マリエ・クヴァムとラグナ・ニールセン、ノルウェー女性解放運動の母と呼ばれる小説家カミラ・コレット、などなど・・・


『髭ノラ』には、こうした歴史とともに、政治分野、経済・産業分野をはじめあらゆる領域で女性たちが活躍している現在の様子が詳述されていて、私は「ジェンダー平等社会は決して夢物語ではない!」と希望を感じた。


『ノルウェーを変えた髭のノラ――男女平等社会はこうしてできた』読後レポート(下)by おのみずき_c0166264_09360447.jpg

一方、自分が暮らしている国との差に絶望を感じざるを得なかった。同じ時間軸で世界は回っているのに、どうしてここまで違うのか。「もしやヘルジャパンとは交わることのない別世界の話なので?」とでも思わないと、とてもじゃないがやってられない! 


とはいえ、ノルウェーだって、130年ほど前は男尊女卑の社会だった。それがよく分かる男性たちの発言が、『髭ノラ』P.60に記載されている。


「両性はそれぞれ自然な役割を持っており、男女平等になると不幸になる」

「女性が投票するようになると、家庭崩壊を招く。自然の摂理に反する」


2020年代の日本でよく耳にするようなワードだ。私たちは“19世紀引きずっているのかもしれない。思わず戦慄する。


絶望しつつ読み進むと、第5「ルポ・国政選挙2009」には、絶望を希望に変えていくためのヒントが散りばめられている。お金のかからない選挙運動、高校生のスクール・エレクション(模擬投票)、外国人参政権の導入等また、3章「女性の政治進出でこう変わった」のP. 135に紹介されているヘードマルク県オーモット市での女性2名による市長ワークシェアリングは、すごくいい!と思った。


ヘルジャパンは、ジェンダー不平等国世界トップをめざして絶賛爆走中だ(白目)。ノルウェーとの間の130年分の差に、絶望していても始まらない。地方からなら変えられると、私は区議会議員になった。いまだ残る家父長制にストップをかけ、ジェンダー平等に向けて変革を起こしていくために、フェミニストのお姉さまたちからバトンを受け取り、連帯しながら、地域から行動していきたい。



おの みずき(世田谷区議会議員)



スクール・エレクションは民主主義の学校(ノルウェー) : FEM-NEWS (exblog.jp)

北欧のマイノリティ女性たちの闘い : FEM-NEWS (exblog.jp)

市民に優しい選挙制度(ノルウェー) : FEM-NEWS (exblog.jp)


# by bekokuma321 | 2023-08-20 14:27 | ノルウェー


議会での初質問と「5つの抑圧テクニック」



『ノルウェーを変えた髭のノラ――男女平等社会はこうしてできた』読後レポート(上) by おのみずき_c0166264_18394196.jpg『ノルウェーを変えた髭のノラーー男女平等社会はこうしてできた』(明石書店、以下、『髭ノラ』)を読んだ。表紙には、黒いペンで横一文字に引かれた髭をつけた女性がこちらを見つめている。


著者の三井マリ子さんが直々に勧めてくれた。2023年6月、埼玉県越谷市で開催された全国フェミニスト議員連盟のイベントでのことだった。


三井さんの報告後、パネルセッションがあり、そこで私は、初当選後の初議会の初質問での出来事について次のように報告した。


私が質問している真っ最中に、自民党の区議数名が、突然、おしゃべりを始めた。性と生殖に関する健康と権利(Sexual and Reproductive Health and Rights)と包括的性教育について質問している時だった。初質問を終えて、何より彼らの雑音に私は傷ついた。後日、会場に傍聴に来ていた大学生のサポーターが『あれは、抑圧テクニックだ』と言った


会場で、私の、この報告を聞いていた三井さんは、私に『髭ノラ』を読むように勧めたのだった。


『ノルウェーを変えた髭のノラ――男女平等社会はこうしてできた』読後レポート(上) by おのみずき_c0166264_21351497.jpg

同著には、この「5つの抑圧テクニック」(The five master suppression techniques)が詳述されていた。


これを初めて提唱したのは、ノルウェー左派社会党初代党首で社会心理学者のベリット・オース。彼女の来日講演録をもとに、三井さんが日本人向けに書き起こした。


それによると、「5つの抑圧テクニック」は、支配層が被支配層を支配しつづけるために、それはもう息するようにあちこちで駆使されているんだとか。


支配層は、相手を自分より「劣った個人/ 集団」と規定する必要があり、この「5つの抑圧テクニック」を単体で、あるいは二重三重に使うことで、相手の尊厳を奪い、自信を喪失させるのだそうだ。具体的には、次の5つだ。


1 無視する

2 からかう

3 情報を与えない

4 どっちに転んでもダメ(=何かをすると非難され、しなくても非難される)

5 罪をきせ、恥をかかせる


私が初議会で経験したのは、15の合わせ技、といえるだろうか。


こちらが必死に話しているのに、他の人とおしゃべりすることで、暗に私の存在を無視して見えないものにする、さらにその光景を他の議員が目にすることで「この人の質問はこの程度の価値しかないんだ」と思わせ、間接的に恥をかかせる。


議員になって3か月半くらい経つが、男性議員は、私以外の女性議員に対しても、2、3、5のテクニックを使っていた。表立ってやらない、陰湿度高めのケースもある。


同著『髭ノラ』によると、ベリットは「抑圧テクニック」を5つに分類することに意味があると言っている。まず、実際に抑圧テクニックを受けた時に、「あ、これって抑圧テクニックの番目だな」と気づくことができる。特定ができたら、その手口について他の女性たちと話し合い、客観視することができる(あなたや私個人の問題じゃない!)。さらに、テクニックを使ってくる側に対して手口を示すことで、抑圧の危険性を弱めることができる。これによって、女性たちは、自分自身を信じ、抑圧から解放されていく・・・。


カラクリを一度知ってしまえば、こっちのものだ。なんだか少し強くなれた気がする。この「5つの抑圧テクニック」を、ぜひ一人でも多くの闘うおんなたちに伝えていきたい。



おのみずき(世田谷区議会議員)



「支配者はこれほどまでして女性から自信を奪ってきたのか」と納得(11/6 ゆうまつど講演会報告) : FEM-NEWS (exblog.jp)

固く閉じた口を開かせた「支配者が使う5つの手口」(松戸市ゆうまつどフェスタ講演会) : FEM-NEWS (exblog.jp)

第46回  支配者が使う五つの手口(北欧ほか世界各国) (ionnanoshinbun.blogspot.com)


# by bekokuma321 | 2023-08-19 21:39 | ノルウェー

速報:2023年ノルウェー地方議会候補の42%は女性_c0166264_18190718.jpg


「女性は立候補者の42%しかいません」


「えっ、女性は立候補者の42%もいます、の間違いでしょ」と日本人なら思ってしまうが、話はノルウェーだ。


ノルウェーは、この9月、4年に1回の統一地方選を迎える。報道によると今回は、全土で53300人が立候補し、そのうち女性は23260人、42%。前回の2019年より0.7%減った、と嘆いているのだ。


23260人のなかに、私の友人、リングダール裕子さんがいる。ノルウェーに移住して30年余り。ベルゲン大学講師の職のかたわら、ベルゲン労働党に入党して活動してきた。


今回、裕子さんはベルゲン市を含むヴェストラン県の県会議員に立候補した。ヴェストラン県は議員65人と代理議員97人が選ばれる(注)。前回、ベルゲン労働党からは議員14人、代理議員16人が選ばれた。


速報:2023年ノルウェー地方議会候補の42%は女性_c0166264_18384031.jpg

裕子さんのフェイスブックには、裕子さん自身の顔と、ベルゲン労働党の候補者リストが載っている。ベルゲン労働党の県議候補は71人。議会の議員プラス6人までリストに載せられるため、どの党もめいっぱい候補者を募ってリストをつくる。ヴェストラン県議会は65人なので、どの政党も理屈では71人の候補者を出せる。でも、ミニ政党は苦労すると聞いた。


裕子さんは「71人中40番目」だから、ちょっと大変そうだ。でも、裕子さんは、あきらめず、「投票所では、私の名前に×(クロス)をつけてください」と呼びかける。


というのも、ノルウェーは国政も地方も比例代表制選挙で、政党の得票率に従って、政党の当選数が決まる。当選者は、政党のつくった候補者リストの上から1番、2番・・・と決まっていく。地方選挙の場合、リストの名前の前の空欄に、×(クロス)をつけると、その候補者個人の票が加算されるしくみになっている。加算数が多いと順番が上にあがるのだ。昔は、この「名簿変更権」を使う人は多くなかったが、最近は増えてきたらしい。


思い出すのは、2015年の地方選挙。


ノルウェー政界の重鎮、元外務大臣トールヴァル・ストルテンベルグの名が、オスロ市議会議員選労働党リストの65番目に載っていた。すでに彼は80代半ばだった。選挙では、彼に×(クロス)をつけた人が多く、3857票も加算されて、14番に跳ね上がった。その数年後、彼は亡くなった。最後の最後まで労働党の一党員として生き抜いた姿を思って、感無量だった。


速報:2023年ノルウェー地方議会候補の42%は女性_c0166264_18403455.jpg


【写真:上は2019年のオスロ市事前投票風景。1か月前から投票できる。中は2023年ヴェストラン県議会のベルゲン労働党候補者リスト。下は2023年ベルゲン労働党の選挙運動風景。政党ごとにテントを立ててチラシやケーキなどを配る。サングラス姿がリングダール裕子候補


【注:代理議員は、育休、病欠、教育休暇などで議会を休む議員のピンチヒッター】



ノルウェーの政治についての非常に詳しく入念な著書(『さよなら!一強政治』読後感 by リングダール裕子) : FEM-NEWS (exblog.jp)

ノルウェーの2013年国政選挙 by リングダール裕子 : FEM-NEWS (exblog.jp)


# by bekokuma321 | 2023-08-16 19:05 | ノルウェー