2024年 03月 26日
衆議院選挙における“重複立候補”の廃止を求めます(楽しく比例制をめざす会)
楽しく比例制をめざす会からのお知らせです。
3月12日、衆議院の選挙の比例区について以下のような要望書を郵送しました。1週間後の3月19日、宛先の衆議院議員逢沢一郎議員事務所に連絡したところ、「昨日封書が届いたばかりで、本人には見せていない」との返答を秘書からいただきました。「ぜひ、ご覧いただき、協議していただきたい」とお願いして電話を終えました。
衆議院選挙における“重複立候補”の廃止を求める要望書
衆議院選挙制度協議会(座長逢沢一郎)さま
2023年3月12日
1994年改正された公職選挙法で、衆議院議員選挙は「小選挙区比例代表並立制」となりました。その第86条2第4項において、衆議院議員選挙の比例代表では小選挙区と重複して立候補できるとされています。
私たちは、議会の男女平等の実現には比例代表制中心の選挙が望ましいと考えて学習を続ける超党派のNGO「楽しく比例制をめざす会」です。
日本政府は、2030年まで意思決定の場の女性を3割に、とうたってはいるものの、実現への具体策を示していません。「候補者男女均等法」に明記された男女候補者数の均等への実現策も手つかずです。このままでは衆議院の女性比率1割、すなわち世界163位という世界最下位レベル(IPU 2024年2月)から脱することはできません。
余りにも少ない女性衆議院議員、その一因は、衆議院比例代表における“重複立候補”にあり、それをなくすことが女性議員増に有効である、と私たちは考えて、ここに要望いたします。
なぜなら、現行の比例区候補の多くは小選挙区の候補であり、その比例区候補は、小選挙区で当選した候補者の票に最も肉薄した落選者から順に当選するからです。これは地盤・看板・カバンを持つ現職(多くは男性)に有利なのは明かです。
さらに、これでは比例代表選挙に採用されやすいクオータ制(男女交互の名簿順にするなどの方策)も効果がありません。例えば、衆議院の比例代表議席176の半数88議席を女性にすると、全465議席における女性割合は約18.9%です。それに、衆議院に占める現在の女性割合10.0%を加えると、女性議員は28.9%に上がります。政府のいう女性3割の目標に近づくのです。
実際、“重複立候補”のない参議院の女性比率は26.0%(2023年3月)です。さらに日本と同様「小選挙区比例代表並立制」選挙の台湾は、重複立候補がないため比例区にクオータ制の採用が進められています。その結果、台湾立法委員(衆院にあたる)に占める女性比率は41.6%(2024年1月)です。また、完全比例代表制選挙(小選挙区がない)の北欧諸国では、候補者においても当選者においても男女半々に近づいていることはご承知の通りです。
以上、比例代表における“重複立候補”の廃止は、衆議院における女性の政治参画促進に向けての具体的ステップと考えられます。実現を強く要望いたします。
楽しく比例制をめざす会 https://www.facebook.com/groups/185665746748543
世話人 石田まなみ(福岡県福津市議)、金子加代(福岡県飯塚市議)、王貞月(大学非常勤講師)
三井マリ子(女性政策研究家、元東京都議)
住 所 〒820-0052福岡県飯塚市相田181-54 金子加代気付
問合せ・連絡先 090-9654-2944(王)、090-8595-6421(三井)
2024年 03月 20日
記録動画「子どもの時から学ぶノルウェーの選挙と政治」by 全国フェミニスト議員連盟
2024年2月18日に開かれたシンポジウムの動画がyoutubeで公開されました。タイトル「子どもの時から学ぶノルウェーの選挙と政治」。下をクリックしてどうぞ。
「子どもの時から学ぶノルウェーの選挙と政治」2024.2.18 全国フェミニスト議員連盟 (youtube.com)
北欧は男女平等の進んだ国です。北欧諸国の子どもたちは、選挙や政治に一役も二役も買っています。小学校では実際の選挙前に、選挙ポスターをつくったり、政党公約を発表したり、実際の選挙と同様に投票したりします。日本とは異なる民主主義の風景。それを可能にしている教育制度や法律は?
ノルウェーに直接行って、学校教育における民主主義の鍛えられ方を見てきた三井マリ子講師による写真とレポート。ノルウェーの話の後、日本の”主権者教育”の実情についての報告もあります。
主催は全国フェミニスト議員連盟。司会と動画アップは片山薫小金井市議会議員。
■速報「子どもの時から学ぶノルウェーの選挙と政治」ーー全国フェミニスト議員連盟シンポジウム : FEM-NEWS (exblog.jp)
2024年 03月 18日
ボーヴォワールを忘れない(叫ぶ芸術128回)
「叫ぶ芸術」3月10日号、良かった、とても良かった。ボーヴォワールは、やっぱりすごい。プラトン、アリストテレス、聖トマス、ルソー、バルザック、オーギュスト・コントと、錚々たるメンバー、世界を動かしたその道のトップの人たち、それらの人々を並べたのが痛快です。ボーヴォワールの大著『第二の性』からそれらを見つけて載せたのは、筆者の三井マリ子さん。さすがです。
2024年 03月 15日
ノルウェー男女平等オンブッド講演録をどうぞ
昨秋、ノルウェー・オスロで、アンネ・リーセ・リーエル弁護士と久しぶりに再会した。
彼女は、現在、全国コロニアル・ガーデン連盟代表。ノルウェー全土に広がる市民農園のまとめ役をしている。1990年末は、ノルウェーの「男女平等オンブッド」だった。
アンネ・リーセ・リーエル弁護士は、日本と縁が深い。初来日は1996年。『男尊女尊の国からオンブッドを迎えて』と題した国際シンポジウムで、基調講演をした。大阪、東京、秋田、札幌の4会場はどこも超満員だった。
男女平等オンブッド
再会を祝って、絶版となっている『男女平等オンブッドーー国際シンポジウム「男尊女尊の国からオンブッドを迎えて」報告集』(1997年)を多くの方々に読んでいただこうと、PDFにした。下記をクリックしてどうぞ。
もくじには、①基調講演録 ②パネルディスカッション録 ③ノルウェー資料 ④ノルウェー男女平等法 ⑤アンケート ⑥報道記録 と並ぶ。どのページにも、民主主義度世界一の国の貴重な情報が満載だ。
ノルウェーの「男女平等オンブッド」は、男女平等法(1978年)に定められた公的な独立機関だ。市民からの苦情を無料で受けつけ、女性差別撤廃と男女平等推進に働く。 “北欧民主主義の華”と言われるオンブッド(オンブズマンのこと)は他の北欧諸国にも存在するが、男女平等のためのオンブッドはノルウェーが世界初だった。
男女平等法とクオータ制
ノルウェーの男女平等法は、政治、教育、労働、家族政策など社会のすべての分野を対象とする。明らかな性差別だけでなく間接的性差別も禁止だ。さらに法改正(1988年)をして、公的に選ばれる委員会・審議会などは一方の性が40%を下回ってはならないとするクオータ制(ノルウェー語kvote)を明文化した。
政党は男女平等法の対象外だが、多くの政党は、女性党員の要求に応えて自主的にクオータ制導入に踏み切った。よって90年代には、国会の39%、地方議会の33%まで女性議員が増えた。このクオータ制こそ女性議員増のエンジンだと疑わなかった私は、日本への導入をめざした。しかし、理解してくれる人はごくまれだった。そこで、クオータ制をはじめ男女平等法の規定が順守されるよう監視するヒト、「男女平等オンブッド」、を日本に招く計画をたてた。
男尊女卑(だんそんじょひ)の国から男尊女尊(だんそんじょそん)の国へ
実行委員会をつくって、東京(代表阿部功子)と大阪(代表森屋裕子)に事務局を置き、ノルウェー大使館の協力を得て、開催にこぎつけた。現役「男女平等オンブッド」の話は、具体的で、実にわかりやすかった。「男尊女卑の日本を男尊女尊のノルウェーのように」と夢見る聴衆を魅了した。
日本の法制度と女性の現状
あれから28年。日本では1980年代に、女性差別撤廃条約の批准、男女雇用機会均等法の制定、1990年代には、男女共同参画社会基本法、2000年代になると、候補者男女均等法が制定された。しかし、女たちの現実は? 選択的夫婦別姓すら法的に認められず、刑法に堕胎罪がいまだに残存し、非正規職という低賃金不安定労働者の7割は女性だ。日本では、条約も新法も空念仏に終わっているのである。
その背景には、目を覆いたくなるほどの女性議員の少なさがある。たとえば衆議院議員の女性比率は10%だ。地方自治体の「女性ゼロ議会」は200以上もあり、女性議員比率は20%に届かない、男女平等嫌いの日本会議や統一教会の推薦議員たちが国会を席巻していることも影響しているだろう。
地方議会も国会も女性4割以上
一方、ノルウェーは今、閣僚の半分、地方議会・国会の4割以上が女性だ。昨秋の地方選で、全市長の4割近くが女性となった。さらに男女平等オンブッドは、法改正にともなって「平等・反差別オンブッド」に変わった。それによって、性による差別だけでなく、人種、国籍、障害、言語、宗教・信条、年齢などによる差別が禁止の対象となった。
選挙制度
最後に、選挙制度の重要性を強調したい。ノルウェーの女性議員増に貢献したのは、間違いなくクオータ制である。そのクオータ制が威力を発揮できたのは、ノルウェーが比例代表制という選挙制度だったからである。政党は候補者を決めるとき、比例名簿を男女交互順にしたりする。日本のような小選挙区中心では、こんな男女交互順などできないだろう。1996年の国際シンポで、選挙制度に踏みこめなかったのは、ひとえに実行委員会委員長だった私の未熟さによる。当時の私は、比例代表制の重要さに十分気がついていなかった。
■「クオータ制発祥の国ノルウェー」(pdf)
■「クオータ制」「男女平等オンブッド」を日本にも:ノルウェー王国功労章受章式を見て(by 高橋三栄子) : FEM-NEWS (exblog.jp)
■ノルウェー「平等と反差別オンブッド」と政治文化フェス: FEM-NEWS (exblog.jp)
■井上輝子さんの訃報とクオータ制: FEM-NEWS (exblog.jp)
■女性議員増には比例代表制とクオータ制(IPU) : FEM-NEWS (exblog.jp)
■男女平等オンブッドから考えるセクハラ: FEM-NEWS (exblog.jp)
■映画界の女性差別をなくすために: FEM-NEWS (exblog.jp)
■ヨーロッパを動かしたノルウェー「取締役クオータ」: FEM-NEWS (exblog.jp)
■赤松良子賞と女性差別撤廃条約 : FEM-NEWS (exblog.jp)
■ノルウェー最大政党のクオータ制条項 : FEM-NEWS (exblog.jp)
■ノルウェーの新「平等と反差別オンブッド」決まる: FEM-NEWS (exblog.jp)
【写真はBente Skjerven撮影】
2024年 03月 09日
国際女性デー「国会の政党代表10人全て女性」を讃えるノルウェー国会
国際女性ーにあわせて、ノルウェー国会は、政党代表10人がオール女性のポートレートを国会ホームページに載せて、その活躍をたたえた。
前列は緑の党、左派社会党、労働党、中央党、、赤党。後列はキリスト教民主党、進歩党、保守党、自由党、患者ファースト党。いずれも左から。
現政権を主導する労働党の代表は、「歴史的です」としながらも、国際女性デーという日に、「政治の場における女性の地位を獲得し、要求し、さらに、その後に続く私たちに道を譲ってくれた、勤勉なすべての女性たちを思いすおこすこと」が大切だと述べた。
ノルウェーは、政界における男女平等で、常に世界のトップランナーだ。
1970年代には、クオータ制を党内の決定機関や候補者リストに実行する政党が現れた。
1980年代には、公的機関への女性比率を40%以上にするよう男女平等法が改正された。
1986年、初の女性首相となったグロ・ハーレム・ブルントラントが、「女性40%内閣」を組閣。その後、今日まで、政権交代はあっても女性閣僚が40%以下に後退することはなかった。
2021年の総選挙で、国会議員の女性比率は46%を超えた。
2023年10月18日、ついにノルウェー国会の政党代表全員が女性となった。その時の国会ホームページには「ベリット・オースが女性初の民主社会党・国会代表となって50年、今回、すべての党の代表が女性となった」と記されていた。
■Historicalpicture: Here are all the parliamentary leaders in Parliament - stortinget.no (写真も)
■https://www.facebook.com/stortinget