2026年 02月 13日
くたばれ!小選挙区制:悪夢が現実になった2026衆院選をふりかえって
悪い夢が現(うつつ)になった。伊藤博文以来130年間続いた男性総理大臣の歴史を破って、高市早苗さんという初の女性総理大臣が誕生した。
高市さんは、当選した1990年代から、「クオータ制に反対」を統一教会系雑誌「世界日報」で公言し、「男女不平等」を自らの政治姿勢として鮮明にしてきた政治家だ。さらに、「選択的夫婦別姓は家族の絆を崩す」などとデマを飛ばす国会議員組織「日本会議国会議員懇談会」に、所属してきた。その日本会議とは、そもそも何者か? 米英の有力紙の定義はこうだ。
●日本会議とは、日本最大の国粋主義組織であり、戦後の平和主義を否定し、天皇制に心酔し、アジアにおける日本の過去の戦争を擁護する。
――「ニューヨーク・タイムズ」2006.12.17
●日本会議とは、国粋主義者のシンクタンクであり、“伝統的価値観”への回帰を扇動し、過去の戦争における日本の蛮行に対する“謝罪外交”を否定する。
――「エコノミスト」2013.6.5
「憲法改正実現へ活動強化したい」高市さん
高市さんは、こんな日本会議を「素晴らしい国民運動」とたたえる。かつて、日本会議イベントで、こんな挨拶をした。
「私自身も、日本会議国会議員懇談会発足当初からのメンバーの一人として、この素晴らしい国民運動に参加させていただいていることを誇りにしています。『政治家として最も重要な使命は、国民の生命・国家の主権と名誉を守り抜くこと』と肝に銘じて活動をしてまいりましたが、一部マスコミが作る「世の中の空気」に立ち向かうことで苦しみを味わうことも度々。そんな折々に、日本会議同志の皆様に励まされ助けられてきたことに、改めて感謝申し上げております。悲願でありました教育基本法改正は達成できましたが、皇室典範改悪阻止と国立追悼施設建設構想阻止については、今後も気を抜くことなく取組みを続けなければなりません。また、日本国憲法改正を実現する為の啓発活動を強化すべき時期にもきていると思います。」(日本会議ホームページより)
女性差別撤廃条約の選択議定書を批准したくない自民党
初の女性首相をトップにいただく自民党は、女性差別撤廃条約の選択議定書批准もまったくやる気がない。全国フェミニスト議員連盟が選挙前に12政党に行ったアンケートによると、回答した7政党のうち自民党だけが「さらに検討」などと回答してきた。他党はすべて「早期批准」だった。国連の度重なる勧告にもかかわらず、「国際条約など塩漬けにしておけばいい」ぐらいに思っているのだろう。
9兆円超え軍事予算は女性への大打撃
ノルウェーで初の女性首相が内閣の4割を女性にしたのは、1986年、いまから40年前のことだった。当時ノルウェー国会で女性議員が占める率は25%だった。いま、北欧諸国の女性国会議員はどの国も4割を超えている。北欧を筆頭に、世界の女性国会議員割合は平均3割近くまで増えた。しかし日本は変わらなかった。女性国会議員率15.5%は184カ国中145番目というありさまだ。今回さらに減って、14.6%だ。
こんな「オヤジ政界」に現れた高市首相が、何を変革してくれるというのか。特徴的だったのは、9兆円越えという突出した軍事費予算案。これだけで、「反女性的」であることは明白だ。国家予算というパイの大きさは決まっている。軍事費が増えれば、福祉や教育予算は減らされる。福祉や教育サービスを担う側も、享受する側も女性が多く、女性に対する打撃ははかりしれないだろう。
「統一教会問題」「政治とカネ問題」が討論されていたら
今回の選挙は、多くが指摘するように、高市首相の突然の解散宣言から選挙までわずか16日という博打が功を奏した。これも、変な話なのだ。そもそも通常であっても、日本の選挙は、政党が討論を交わすチャンスが、全く不十分である。私がウオッチしているノルウェーの選挙は、投票が近づく1月前ぐらいから政党間の討論は白熱するのが当たり前。テレビをつければ、必ず、侃々諤々の様子が映し出される。SNSでも流れる。これで、国民は、どの政党に入れようかが整理整頓されていくのである。例えば今回の日本の選挙をノルウェー社会に当てはめるなら、「統一教会問題」や「政治とカネ問題」で、高市さんはおそらくケチョンケチョンの目にあったことだろう。

▲2026衆院選の女性当選者。左から全体、小選挙区、比例区
得票率49.1%で86%もの議席
でも、とにかく、男女不平等が大好きな高市さんは圧勝できた。その最大の理由が、「今の日本の選挙制度」にあることは、間違いない。日本の衆院選は、小選挙区中心の選挙だ。今回、自民党は、小選挙区で49.1%の得票率しかなかったにもかかわらず、なんと86%もの議席を得た。一方、比例区での自民党をみると、36.7%の得票率で、議席は38%。比例代表制なので得票と議席がほぼ比例しているのである。
これは何を意味するのか。
今回、死に票の正確な数は、まだ出ていないが、日本の衆院選挙では、毎回、約3000万票もの「死に票」が出る。かなりの大きな民意の塊がドブに捨てられたも同然の現象が起きているのだ。この死に票の多くが、少数派層に入れた票であることは、想像がつく。女性や障害者が政界進出しにくいのも、ここに大きな原因がある。民意を十分に反映しない小選挙区制中心の選挙であるがゆえに、自民党は圧勝できたのだ。
そうそう、投票率の低さも小選挙区制の特徴の一つだ。今回など、国民が熱くなった選挙と言われているが、それでも投票率は56%。北欧諸国の投票率は、80%前後は当たり前だ。選挙民は、自分の1票が「死に票」にならず、議席につながることを知っているからだ。死に票の多い選挙は、投票率が低い。これは当然なのだ。
クオータ制は比例代表制でこそ生きる
女性の当選者が少ないことを問題にしたメディアは、その解決策として政党の「クオータ制」の実行を提案する。しかし、クオータ制は、1政党1候補しか立候補できない今のような小選挙区中心の制度では、機能しないということを、多くのメディアはわかっていない。クオータ制は比例代表制選挙であってこそ、その効力が発揮される。現に、世界経済フォーラムが出すジェンダー・ギャップ指数で男女平等度上位10カ国のほぼすべてが、比例代表制中心の選挙を執り行っているのは、その明白な証拠である。
小選挙区制は途方もないカネ・時間食い虫
比例代表中心の選挙だったなら、今回のように立憲と公明が悲劇的合体をする必要もなかっただろう。小選挙区は、第一党を限りなく有利にする選挙であり、中小政党のひん死状態はよほどのことがない限り続く。また、「無限のカネ食い虫」の制度でもある。この制度が続く限り「政治とカネ」の問題もは解消しないだろう。そして、小選挙区制度は、時間を永遠に無駄遣いする制度でもある。議員や候補者たちは、運動会だの祭りだのと、人の集まるところは票田とみて、決まってそこに顔を出す。こんなことにかまけていては、まともな勉強など出来るはずがない。
あゝ、一日も早く、日本も比例代表中心の選挙制度に変わってほしい。そうでもないと、この“悪夢の現実”から覚める日は、やってこない。


