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武力紛争を減らすには女性議員を増やすこと、では、どうする

トランプ大統領が、南米ベネズエラを攻撃した。地上から武力紛争がなくなってほしいという夢は、正月早々、木っ端みじんに打ち砕かれた。でも、こんな時だからこそ、女性と平和について考えてみたい。


武力紛争を減らすには女性議員を増やすこと、では、どうする_c0166264_23551609.jpg一般的に女性は、戦争に否定的で、防衛支出への支持も低い、とされている。ところが、行政府の女性リーダーは、男性と変わらない防衛支出パターンを示すか、むしろ防衛費を増やす傾向があるという。初の9兆円越え防衛予算を計上した日本初の女性首相を見れば、お分かりだと思う。


行政府の女性リーダーは男性と変わらないか上回る

男性と変わらないのは、「ジェンダー・ステレオタイプ」に対抗してタカ派的政策をとるからであり、また、男性と同様の外交政策を共有しているからだ、という。


女性リーダーが防衛費を増やす傾向があることの理由は、「男性が支配的な分野で信用を築きあげるために、男性的な政策をとりがち」であることや、独特な国家安全保障状況における権威維持が必要とされることにあるという。


女性議員が増えると防衛費が減る

それに対して、立法府の女性議員割合が高い場合、防衛支出が減り、社会的支出が増える傾向があることが、証拠によって証明されている。だから、女性リーダーが防衛費に意義ある変化をもたらすには、立法府における女性議員の支持が必要なのである。


この重要なことを教えてくれたのは、カナダの大学が出したレポート「政治権力にある女性は防衛費の支出に違いを出すのか?Do Women in Power Spend Differently on Defence?」(20252月)。Megan Mackenzieなど3人が執筆した(注1)。


では、どうすれば女性議員を増やせるか。


立候補して身をもって体験した弊害

私は、これまで、東京都議会議員選挙を2回、衆院選を2回、合計4回選挙を経験している。そのなかで、「小選挙区制選挙」の弊害を身をもって体験したのは、2012年の衆院選である。政党に担ぎ出されて立候補したのだが、本当に忌々しい経験だった。


また、女性の政界進出で世界のトップを走る北欧5カ国を回って、女性議員を増やすためのヒントをさぐってきた(注2)。うち、ノルウェーには何度も足を運んで、政治家たちをつぶさに観察し、日本とノルウェーの政治風土の違いを調査し、何冊かの書物を出した。昨秋は、国会議員に当選したソマリアからの移民女性のインタビューを通じて、ノルウェーの移民政策や教育制度を紹介した(注3)。


北欧と日本に違いは数々ある。だが、決定的違いを生み出しているのは「選挙制度」である、と考えるに至った。日本の衆院の選挙「小選挙区制度」は、あまりにも無駄が多い。


巨額の政党交付金のゆくえ

まず、この選挙は底抜けの金食い虫だ。日本は、莫大な「政党交付金」を国庫から政党に拠出している。日本の政党交付金は総額でも1人当たりでも、世界で抜きん出て高額だ(注4)。にもかかわらず、いくら金があっても足りなそうなのは、自民党の「政治とカネ」問題をみればわかる。候補者は、自分の顔・名前を選挙民に売り込まないと当選はおぼつかない。だから秘書はたくさんいればいるほど、選挙に強くなる。大物と称される政治家たちの秘書群を見てほしい。あの秘書群は、ボランティアではない。公設秘書3人は国庫から、他は政党(支部)から人件費が支払われる。政党交付金は政党の政治活動にではなく、政党(支部)代表の一国会議員の票集めに使われているのである。


ありとあらゆる冠婚葬祭に顔を出す

「時間の無駄使い」も尋常ではない。議員は次の選挙に備えて、新年会、盆踊り大会、運動会、町内会、あらゆる冠婚葬祭……人の集まるところなら、どこへでも出向いて、「挨拶」を一席ぶって、名刺を配って、また次の場へ、ということの繰り返しだ。ほぼ全ての時間を顔・名前を売ることに使う。これでは、本当の勉強などできるはずもない。ノルウェーの政治家と日本の政治家の日常生活の一番の違いは、まさにこの時間の使われ方にある。


衆院の比例代表制は小選挙区の敗者救済

そして、何よりひどいのは、その「死に票」の多さだ。日本の衆院の選挙は、小選挙区比例代表並立制と呼ばれ、小選挙区と比例代表(比例区)の2方式で行われる。ところが、ほとんどの政党は、小選挙区の候補を比例区にも重複して立候補させる。比例区は、小選挙区で落選した候補の敗者救済に使われることが多く、正体は、小選挙区中心の選挙なのだ。その小選挙区は、日本列島を細かく289に分けられた選挙区から、1票でも多くとった1人のみが当選するしくみだ。


死に票は約3,000万票

その1人以外の候補に入れた票はすべてドブに捨てられる。死に票は、毎回総投票数の約半分。2024年衆院選では、小選挙区5,593万票のうち2,828万票が死に票だった。自分の投票がドブに捨てられるとわかっていて、だれが投票に行くだろうか。日本の投票率の低さは絶望的だ。


そして、この膨大な死に票のなかに、社会の少数派の多くが含まれることになる。女性も、障害者も、性的マイノリティーも、アイヌの人々も、その多くがこの少数派に含まれるのはいうまでもない。


女性議員を増やすには、今の「小選挙区制中心の選挙」を「比例代表制中心の選挙」に変えることだ。どんなに困難な道のりであろうと、この改革があって初めて、民意の反映する「死に票のない」選挙制度になり、表ガネ・裏ガネが飛び交う選挙運動が消え去り、女性もハンディを持つ人も先住民アイヌも当たり前に政界に進出できるようになる。


最後に、世界のジェンダー・ギャップ指数で上位10カ国は、ほぼすべて比例代表制選挙であることを知ってほしい。


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【注1】一橋大学教授佐藤文香さんの説得力ある論考を引き出した高橋純子さんのインタビュー記事にも本レポートによると思われる発言があった(20251224日朝日新聞「”女々しい”日本?の女性首相」)

【注2】『ママは大臣 パパ育児ーーヨーロッパをゆさぶる男女平等の政治』(明石書店、三井マリ子、1995)

【注3】『月刊社会民主』202512月号

【注4】『さよなら!一強政治 比例代表制のノルウェーと小選挙区制の日本』(旬報社、三井マリ子、2020)101


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by bekokuma321 | 2026-01-06 00:09 | 日本