2025年 12月 08日
ノルウェー史上初のヒジャブ国会議員がたどった道 (月刊『社会民主』)
『月刊社会民主』12月号(注)に掲載された三井マリ子さんの「民主主義度世界一 ノルウェーの総選挙を見る」を読んだ。三井さんのノルウェー報告にはいつも驚かされるが、このレポートでは9月の総選挙でアジア・アフリカ系移民が12名も国会議員に当選したことに驚かされた。
そもそも日本では外国人には参政権がない。永年住んでいようと、高額の税金を払っていようと、日本に帰化しない限り、国政選挙はおろか地方選挙でも選挙権も被選挙権もない。
日本ではあり得ないことがノルウェーでは実現しているのはなぜか。レポートはアフリカのソマリアから難民として来た10歳の女の子マリアン・フセインが、ノルウェーで教育を受け、看護師資格を取り、ケアワーカー兼地方議員となり、国会議員になるまでの道のりを、本人のインタビューを交えつつ、国の制度や法律、移民に対する姿勢を多方面から解説している。
まず、人口の16%(23年)を占める移民のために「統合法」という法律があるという。「移民がノルウェーで永続的な職業生活を送れるようにすること」が趣旨で、言語習得のために給付金を出すなど、労働力として育て上げる覚悟がある、と三井さんは書く。
それでも差別はなくならないのが世の常だが、差別をなくすために「平等・反差別法」という法律があって、「平等・反差別オンブッド」という公的機関があるという。オンブッドとはオンブズマンのことだ。
オンブッドと言えば、30年近く前、三井さんはノルウェーから「男女平等オンブッド」を招いて国際シンポジウムを開いた。その実行委員会を手伝ったことを思い出した。その時、来日したオンブッドは弁護士資格を持つ女性だった。大臣と同等の強い権限を持ち、男女平等に反する事柄には迅速に対処すると聞いた。
それが今では発展的に法改正され、男女のみならず、民族、障害、宗教、年齢、性的指向、性表現に基づく差別が禁止となり、名称も「平等・反差別オンブッド」と改称されたというのだ。移民の人権を尊重し、差別を防ぐために膨大な税金を投じているという。
移民に早々と地方選挙権が与えられたのも日本とは違う。1983年には「3年以上住んでいて、かつ永住権を持つ全移民」に地方選挙権が与えられた。
マリアンは移民の権利拡充に熱心な左派社会党を支持していたが、後に「党員」になり、20代でオスロの区議会議員になる。その2年後には、オスロ左派社会党の国会議員候補者リストの5番目に登載され、代理議員として「ノルウェー史上初のヒジャブ国会議員」となる。その後、2回の総選挙を経るうち、リストの登載順位は上がって行き、今回は1位で当選を果たす。そのスピードに驚かされた。
ノルウェーは比例代表制選挙なので、政党の候補者リストの上位に登載されるかどうかで当落が決まる。そのことは、私も知っていたが、今回のレポートで、その順位は、「党員間で議論に次ぐ議論を続け、民主的に決まる」とわかった。マリアンのような移民女性が国会議員になれた最大の要因は、「比例代表制にあると気づいた」と三井さんは書く。
先日、三井さんのノルウェー報告を聞く会があった。そこに参加したノルウェー在住の女性が、「ノルウェーは、北海油田からの潤沢な石油・天然ガスを公の管理下に置いて将来に備える政策をとっている」ことに言及した。それが、移民政策に限らず、社会福祉に手厚い予算が行く財源となるのだろう。借金大国の日本からすれば、ノルウェーは夢の国だ。
とはいうものの、レポートに戻ると、こういう政治姿勢に反対して移民排斥を唱える右派政党の台頭にも三井さんは触れている。今回、ノルウェー人は社会民主主義をとる中道左派政権を選んだので、これまでと変わらない政策が続く。つまりは、市民が選挙でどのような政策の政党を選ぶかが、最大のカギなのだと思う。
高橋 三栄子(杉並区民)
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