2025年 10月 22日
性的虐待サバイバーと現代の“女衒”
イギリスのアンドリュー王子が、ヨーク公爵などの称号を返上したらしい。私にはどうでもいいニュースだ。だけど、称号返上の引金となった、ヴァージニア・ジュフリーの告白本は読んでみたい。
『Nobody’s Girl: A Memoir of Surviving Abuse and Fighting for Justice(誰のものでもない少女:虐待からの生還と正義のための闘いの回想録)』だ。
ヴァージニア・ジュフリーは、その本を書き上げて、出版を願ったまま、この4月、自殺した。本は、米の富豪ジェフリー・エプスタインの性犯罪シンジケートを中心につづったもので、10月、出版された。エプスタインの顧客には、トランプ大統領など世界に名だたる政財界の著名人がいたとされているが、そのひとりがアンドリュー王子だ。
本には、王子による3度にわたる性的虐待の話が詳述されているという。王子自身は、性加害をすべて否定している。なおエプスタインは、未成年女性たちへの性的虐待や性的人身売買で有罪とされたが、収監中に死亡。自殺とされている。
本の一部を先行して紹介した記事や動画を視聴した。少女たちが、自分の父親ぐらいの年の男たちの性的えじきにされて、もがき苦しむさまは、あまりに痛ましい。
少女たちは、なぜ、悪魔の世界に足を踏み入れてしまったのか。地獄に引きずり落とす役を担ったのはギレーヌ・マックスウェルという女性だった。おそらく、彼女がいなければ、地獄に行くことはなかっただろう。
現代の“女衒”ギレーヌ・マックスウェルとは、どんな人物なのか。
彼女は性的虐待や人身売買の共犯者であると認定されて、20年の禁固刑を下され、現在、服役中だ。エプスタインの「イギリスの妻」であり「恋人」であり、共同経営者として、長年、数多くの少女たちをだましてきた。冷酷非道な女性なのだろうが、彼女の写真はどれを見ても、知性的で洗練されたふんいきがただよう。
ヴァージニア・ジュフリーによると、初めて会ったときのマックスウェルは30代で、「彼女のイギリスなまりの英語は、まるでメアリー・ポピンズのようでした」。
メアリー・ポピンズは、一世を風靡したディズニー映画の主人公だ。10代の少女には、美しく賢く優しく、魔法を使ってなんでもかなえてくれる、そんな魅力あふれる大人の女性に見えたのだろう。
ある日、ヴァージニア・ジュフリーはマックスウェルから「今日、シンデレラのように・・・ハンサムな王子に会う」と言われたという。ハンサムな王子こそ、アンドリュー王子だった。シンデレラになれる、と思った少女は、これ以降、逃げようものなら「隠しカメラで全て撮影している」と脅されて、囚われの身になっていく。
このマックスウェルという“女衒”について以前、紹介したことがあるが、再び紹介する。ジュフリーとは別の被害女性の声である。
「ギレーヌ・マクスウェルがいなければ、私はエプスタインに接触することなどありませんでした。彼女はとても話が上手で、とても丁寧で、なんというか、話したとたんに、安心感を抱いてしまいました。教養にあふれ(オックスフォード大卒)、洗練された、事業に成功した女性、その私邸で、世界中を旅行できるような仕事に雇われようとしているんだ、これは私が描いていた夢そのものだと思いました」
この被害者は、過去には薬物使用障害に苦しみ、今もパニック発作、夜驚症に悩まされている、という。「自尊心の低下やキャリアの機会の喪失」、「恋愛関係になりそうなとき、自分の直感は間違いかもしれないという思いと激しく闘わねばなりませんでした」と告白している。
少女たちをだまし、脅し、性的奴隷へと貶めた女性ギレーヌ・マクスウェル。同性ゆえに気を許してしまった少女たち。女性であること、それが彼女の使った最初のツールだった。
この事件はアメリカが舞台だ。しかし買春が野放しに近い日本。少女や女性たちの夢をつぶす社会システム。政治権力者に甘い警察当局。他山の石とすべきことが多い。
■映画『ネファリアス〜売られる少女たちの叫び』を見て : FEM-NEWS
■性的虐待を共謀した女性に20年の実刑 : FEM-NEWS


