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ノルウェー・ノーベル委員会フリードネス委員長の旅

ノルウェー・ノーベル委員会委員長ヨルゲン・W・フリードネスJørgen W.Frydnesが初来日した。

被爆地の広島と長崎を訪問し、ノーベル平和賞を受賞した被団協関係者や首長、そして高校生らと対話をした。東京では講演会を開催し、その間をぬって記者会見を開いた。多くの報道のうち、中国新聞のインタビューで、フリードネス委員長は、被爆者の勇気をこうたたえている。


「被爆地には人の心を揺さぶる力がある。世界中の人にこの地で被爆者の訴えを聞いてほしい。気持ちを奮い立たせてくれる。8090代になっても諦めを知らず、核兵器の廃絶に人生をささげている。まさに苦難を乗り越える力の象徴だ」 (https://www.hiroshimapeacemedia.jp/?p=154304


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   ヨルゲン・W・フリードネスJørgen W.Frydnesが10年間働いていた事務所(2023/9 ウトヤ島)



2024年、フリードネスは30代で、ノルウェー・ノーベル委員会のトップに就任した。彼が委員長として初めてノーベル平和賞を授与した団体、それが日本の被団協だった。


フリードネスは、それまで、ウトヤ再生プロジェクトの総責任者だった。


ウトヤは、オスロ近くにある小島で、労働党青年部が所有する。毎夏、青年部は政治キャンプを主催し、若者たちはテントで寝泊りしながら民主主義を掘り下げる。その若者たちの楽園の島で、ノルウェー史上最悪のテロ事件が起きた。20117月、キャンプ真っ最中だった。犯人は、反イスラム、反多文化主義、反フェミニズムを信奉する極右の白人男性。寛容な移民政策をとる労働党を憎んでいたと言われている。


2年前、私はウトヤ島を初めて訪問した。ヨルゲン・W・フリードネスには会えなかったが、彼とともに働いていたMaria Moen Østbyのガイドで、ウトヤ再生プロジェクトの成果といえる新たなウトヤ島を垣間見ることができた。


テロ襲撃と大量殺戮の現場を、知識、議論、抵抗の場に変えるにはどうすべきか。ヨルゲン・W・フリードネスはウトヤ再生プロジェクトに志願して、責任者となった。その後、彼は、ノルウェー全土を回って、犠牲者の家族や生存者ひとり一人の話に耳を傾けて、再建に心血を注いだのだという。ノルウェーの新聞に掲載された彼の寄稿文には、こんなくだりがある。


「私は深い悲しみと大きなトラウマを抱えた何十もの遺族とサバイバーたちと向き合いました。それぞれの自宅に迎え入れていただき、アルバムをめくって、もうここにはいない若者たちの写真を見、痛みやトラウマ、怒りやフラストレーションについて耳を傾けました」(三井訳 https://www.aftenposten.no/meninger/kronikk/i/5Bgodz/en-liten-oey-i-en-stor-verdenより


今回の短い滞日中、フリードネス委員長は、被爆地に足を運び、被爆サバイバーたちの証言に耳を澄ました。田中煕巳代表などの活動拠点である被団協の事務所も訪問したという。


「ウトヤの惨劇」の犠牲者の家族や生存者たちを訪ね歩いて、その証言を「ウトヤ再生」の力にしていったフリードネス。その彼ならではの日本の旅に私は深い感動を覚えた。


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▲若者たちが愛を語り合う「恋人たちの小道」。ここで多くが惨殺された(2023/9 ウトヤ島)



          
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       ▲ノルウェー各地の中高生が合宿して民主主義を学び合う(2023/9  ウトヤ島)



参考記事

ノーベル平和賞と比例代表制 : FEM-NEWS

ウトヤ島2:ファシズムへの抵抗 : FEM-NEWS

ウトヤ島:惨劇の島から民主主義を鍛える学校へ :FEM-NEWS

あれから12年 ウトヤ島に足を踏み入れて : FEM-NEWS

2024ノーベル平和賞とベリット・オース : FEM-NEWS

歴史が核兵器禁止条約反対者を指弾するだろう : FEM-NEWS

24歳の女性生存者の証言 : FEM-NEWS

美と温もりを愛でし時まで: FEM-NEWS (exblog.jp)

自由は恐怖よりも強い: FEM-NEWS (exblog.jp) (国王と首相の言葉の和訳)

訃報:天下無双のフェミニスト、シャバナ・レーマン: FEM-NEWS

襲撃犯が嫌悪するフェミニズム: FEM-NEWS

アメリカ銃乱射事件、ノルウェーテロ事件 : FEM-NEWS


■「政治家の出発点は高校時代」(旬報社『さよなら!一強政治:小選挙区制の日本と比例代表制のノルウェー』p118-p132)


by bekokuma321 | 2025-08-01 21:19 | ノルウェー