2025年 06月 20日
国立女性教育会館を解体する政府案に反論します

今からちょうど50年前の1975年、メキシコで男女平等をめざす国連による女性の10年がスタートし、世界行動計画が策定された。77年、日本の国会で、世界行動計画の国内版「国内行動計画」が策定され、同年、嵐山に「国立婦人教育会館」(注1)がオープンした。
79年には女性差別撤廃条約が国連で採択。同条約の批准を求める女性運動の高まりを受け、日本も85年批准に至った。
批准したのだから、守るべき責務がある。しかし、日本政府は、国連の女性差別撤廃委員会から条約を遵守せよと何度も勧告を受けてきた。世界経済フォーラム「ジェンダー・ギャップ指数」によると、日本は、146カ国中118位という恥ずべき低位置にある。男女平等への政府の消極姿勢をこれほど正直に示すものはない。
実際、国立女性教育会館への交付金の拠出額を見ると、その消極姿勢がわかる。2001年7億2400万円だったが、2024年4億7900万円だ。3割以上も削減したのである。予算をここまで減らしておいて、宿泊棟の稼働率が悪いから撤去するなどと、どの口をもって言えるのだろう。
だから、今こそ、「男女共同参画社会の形成の促進」(根拠法第1条)を目的とする国立女性教育会館を、政府は、その本来の目的にそって、充実させるときではないか。
しかるに、政府は、こともあろうに撤去解体するという。しかも、それに向けて政府は、きわめて姑息な動きをとった。まず、新聞で記事を読むまで市民は、全く知らされなかった。寝耳に水だった。そのうえ、宿泊棟・研修棟・スポーツ施設の撤去を含む施設の弱体化を、「機能強化」などと称して、けむにまいた。さらに加えて、多くの女性たち、とりわけ施設利用者たちの声を聞くことも、話し合うこともまともにしなかった。女性だと思ってなめてかかったのだろうか。少なくとも民主主義の基本のキを踏みにじったやりかただった。
約10ヘクタールの敷地。約600人が利用できる講堂や会議室のある研修棟、300席の食堂、ゆったりと広い浴場、あちこちに設けられた井戸端会議風団らんコーナー、350人が泊まれる宿泊棟。テニスコート、プール、茶室。緑あふれる散策の道。しかも、国際時代にふさわしい同時通訳機能、多様性・包摂性の時代にふさわしいバリアフリー設備。
このような環境の女性の公的施設は、いったん撤去解体されたら、二度とできないだろう。世界の人口の50%を占める女性が、世界の土地のわずか20%しか持っていないとする統計(注2)を引用するまでもない。女性が主体の土地や建物は、いまだに世界にも日本にもあまりに少ない。
よって、私は怒りを込めて言いたい。このたびの国立女性教育会館撤去解体は、男女共同参画社会実現は21世紀の最重要課題と定めた男女共同参画社会基本法を嘲笑するものであり、男女平等を求める世界的潮流へのバックラッシュ(反動)であり、人権としての女性の権利の保障を希求する国際規約の趣旨を踏みにじるものであり、歴史の歯車を逆回転させるものであることにほかならない。
残念ながら、国会では、賛成多数で国立女性教育会館解体法案は可決されるだろう。そのなかで、反対の立場で意見を述べた、2人の衆議院議員の発言は首肯に値する。以下はYouTube。
■【上村英明の国会質問!】内閣委員会 男女共同参画機構 宿泊施設はなくていいのか?2025年6月11日11:15頃~
■【内閣委員会】男女共同参画機構2法案/埼玉県嵐山町の研修棟・宿泊棟廃止は認められない – 塩川てつや


【注1 文部省所管。当時は女性を婦人と呼んだ。後に独立行政法人に変わった。「ヌエック」と呼ばれることが多い】
【写真 1枚目は国立女性教育会館全景。2枚目は宿泊用個室。3枚目は車いすが通れるスロープ付きの階段。4枚目は4,5人ずつ座って井戸端会議ができるような団らんコーナー。5枚目食堂。1枚目山田裕子越谷市議、他三井マリ子撮影】
■参加無料:報告・研究会「ヌエックまだまだ使いたい」を理論武装する 6/21@青山学院大学 ジェンダー研究センター[東京都渋谷区] – まんなかタイムス ⇠今日です
■速報:ヌエックに関わる衆院の委員会を傍聴して(瀧章次) : FEM-NEWS
■「男女平等センターが躍動している国、消滅しそうな国」(叫ぶ芸術2025年新年号) : FEM-NEWS
■「ダナーの家」は国や時代を超えて語り継がれるべき物語だ by 石塚友子 : FEM-NEWS
■ドキュメンタリ映画「ダナーの家」を見て感じた”自分の信ずるを行動すること” by 田口美恵子 : FEM-NEWS
■国立女性教育会館(ヌエック)を味わう11/16イベントに参加して by 礒部幸江 : FEM-NEWS
■ドキュメンタリ映画「ダナーの家」を観て by 實藤政子 : FEM-NEWS
■日本の私たちとデンマーク「ダナーの家」の女たちはつながっている by 酒本絵梨子 : FEM-NEWS
■案内6/2 :国立女性教育会館NWECとわたしたち : FEM-NEWS
■国連の女性差別撤廃条約にかかわる日本政府への勧告 2016.3.7(PDF)



