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選択的夫婦別姓は党議拘束をはずすべきだーーノルウェー国会審議から考える

いよいよ61日から、ノルウェーの新妊娠中絶法が施行される。これまで妊娠12週まで妊娠中絶が合法だったが、18週に拡大された。


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国会に新法案が提出されたのは昨年8月だった。


提出される前の202438日国際女性デーは、「妊娠中絶は女性の自己決定権--委員会をなくせ!」というスローガンが高々を掲げられていた(左写真)。


半年以上の審議を経て、昨年12月、新妊娠中絶法が成立した。この成立時のニュースはネットで世界に流れた。私も読んだ。


ノルウェー国会内で法案を手に、喜びあう5人の女性の写真が忘れられない。Sisterhoodを感じた(下写真)。


5人は全て国会議員。全て所属政党が異なる。セヘル・アイダ―(赤党)、マリアンヌ・フセイン(左派社会党)、シーヴ・モスレス(中央党)、サンドラ・ブルフロ(保守党)、カムジ・グナラナム(労働党)だ。


赤党、左派社会党、労働党は、かねてから、妊娠中絶合法化の拡大を要求していたので、3人の笑顔は納得できる。でも、中央党と保守党も賛成したのだろうか。


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NRKなどの報道を読み返した。労働党、左派社会党、赤党、自由党、緑の党は法改正に賛成した。反対した政党は、キリスト教民主党ただひとつだったようだ。キリスト教民主党の党首は、「母親の子宮に宿る命を守る法を劇的に弱体化させる、過激な制度である」と語ったことが報道されている。


一方、中央党、保守党、進歩党の3党は、党内で賛否がわかれたため、党議拘束を外した。よって、政党として法改正に反対を表明していたとしても、議員は、自分の信念に基づいて投票することができたのである。


こうして、ノルウェー新妊娠中絶法は、国会議員の過半数の賛成で成立した。私が驚いたのは、進歩党(極右政党と呼ばれることもある)の元党首で、かつて妊娠中絶反対の論陣をはった重鎮男性議員が、賛成に回ったことだ。


NRKの報道から彼の発言を和訳すると、「妊娠中の女性に決定権を与えるべきです。現在は、女性が中絶を希望する場合、委員会との面談が必要になりますが、これは女性の尊厳を傷つける行為です。女性自身が決定権を持つべきであり、委員会に中絶をしていいかなどと尋ねる屈辱など不要だ」。堂々たるリプロ推進だ。一方、彼の所属する進歩党の現党首は「胎児のことを最優先に考えるべきである」と、新妊娠中絶法案に反対した。


私の知る限り、ノルウェーの女性たちの多くは、妊娠中絶をするかしないかは女性の自己決定権であると、長年主張してきた。現政権の中心である労働党には、そういう主張を続けてきた女性運動家たちが数多くいる。新妊娠中絶法案は、この政権によって提出された。


たびたび伝えてきたが、ノルウェーは、現在、内閣の半分、国会議員の4割以上が女性だ。地方議員も女性が4割を占める。


女性の力は議会だけではない。たとえば今年の38日の国際女性デー。数えきれない女性たちが、さらなる女性の権利拡大と連帯を訴えて、広場に集まり、町を行進した。オスロの友人ベンテ・シェルヴァンが、2025年3月8日、撮影した写真を紹介する。


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         ▲「女性解放を今!右翼ポピュリズムやファシズムに反撃しよう」(2025/3/8)




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▲オスロの若者広場に集まった女たち。デモや政治集会の場で労働党本部や連合LO本部も見える(2025/3/8)


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▲車いすやベビーカーの参加者も多い(2025/3/8)


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▲「何千年も見てきた 私たちはわかった 家父長制の独白を打ち破れ」(2025/3/8)



毎年、毎年、数えきれないほど集まる女たちの力を、無視できる政治家がいるはずはない。


さらに比例代表制という選挙の存在がある。ノルウェーは、100年以上前から比例代表制で、各選挙区から多数当選する制度をとる。よって、政党が候補者リストの上位に女性を載せさえすれば、当選につながるのである。選挙にカネはかからない。死に票も出ない。1票の価値の不平等も出ない。だから、女性はむろん、貧しくても、移民・難民出身でも当選できる。


それを象徴するのが、上の小さな写真にうつる国会議員5人だ(大きな写真はNRK記事)。1人はトルコでの迫害から逃れてきたクルド人、1人は内戦・干ばつから逃れてきたソマリア人、1人は内戦から逃れてきたスリランカ人である。


ひるがえって日本。選択的夫婦別姓を可能にする民法改正案が、いま国会(女性はわずか15%)で審議されている。女性の自決権という点で、ノルウェーの中絶権と同じだが、その結果のなんと大きな違い。


国会で30年近くも塩漬けにされてきた間に、世論は、6割が選択的夫婦別姓賛成となった。経団連まで選択的夫婦別姓をと提言している。時代の変化にはさからえないのだろう、大政党の自民党にも賛成者が出、党内で意見が分かれているらしい。


ならば、ノルウェーのように党議拘束を外したらいいではないか。


しかし、そうはならないことが昨日の朝日新聞(「別姓 首相が自民議員牽制」)に出ていた。背後にある圧力は何か。想像はできる。



【写真:上は8. marskomiteen i Osloより。下はベンテ・シェルヴァン撮影提供】



選択的夫婦別姓と選挙制度 : FEM-NEWS

女性の国会議員当選者41%から47%に(ノルウェー国政選挙2021) : FEM-NEWS

小池ゆり子候補と日本会議 : FEM-NEWS

クリスティン イグルム大使講演録 by三井.docx (講演録「北欧の自由と平等への道」)



by bekokuma321 | 2025-06-08 18:02 | ノルウェー