2025年 06月 06日
『さよなら!一強政治:小選挙区制の日本と比例代表制のノルウェー』を読んで(高沢陽子)
高沢陽子さんは、青森県野辺地町初の女性議員。女性不在だった120余年の歴史を打ち破った方です。その高沢さんから『さよなら!一強政治』(旬報社、三井マリ子著)の読後感が届きました。高沢さんのお話を直接うかがうオンライン・トークも、もうすぐです。

「なぜ日本はこんなにも女性議員が少ないのだろうか。・・・・その最大の理由は選挙制度にある」と著者三井マリ子さんは、まえがきに書く。
続けて「この選挙制度の下では女性(世襲は別)や少数派の出る幕などほとんどないに等しい」と言う。
第1部第1章は、ノルウェーの友人オーレさんとマグニさんに、映画「選挙」(惣田和弘監督)のDVDを見せることから始まる。2人は「これ、本当に選挙なの!」「彼、本当に候補者なの?」と驚く。思わず私は笑ってしまった。しかし、しだいに、2人の疑問や意見を読み進むうちに、私のなかに激しい怒りがわいてきた。
私は、女性議員が誰もいなかった青森県野辺地町で町会議員に無所属で立候補した。
日本では、立候補したら、ポスターをつくり、選挙カーで名前を連呼する。しかもわずか5日間だ。政党や地域によってはお金や物をばらまき、票の売り買いをするのが公然の秘密だ。一方、ノルウェーで最も重視される「候補者同士の討論会」や「戸別訪問」は禁止されている。
小選挙区制では、有権者は候補者1人しか選べない。地方議会の場合、当選者は複数が多いため、女性や少数派の候補者もまれに当選する。私も野辺地町12人の1人に当選した。しかし、国会議員となると、奇跡でも起きない限り、どんなに頑張っても大きい政党が勝つのが常だ。
第1部第2章には、1993年の細川連立政権時、「小選挙区比例併用制」を提唱していた社会党が連立に加わる条件に「小選挙区比例並立制」をのんでくれ、と言われたことが書かれている。社会党の執行部山花貞夫、佐藤観樹(聞き覚えがある)らが、党内の説得にあたった。説得された一人大脇雅子さんの描写がリアルだ。首相細川と自民総裁河野洋平とのトップ会談で「小選挙区比例代表並立制」(自民党案)に決まったのは、尊敬する社会党党首の土井たか子の“おかげ”だったという。非常にショックを受けた。
次の第3章は、2012年秋田での衆議院選の顛末だ。純粋に男女平等社会をめざしていた三井さんを説得して立候補させ、「カネ」(この場合は政党交付金)を懐に入れようと図ったペテン師と三井さんの闘いに、涙が出そうになった。このペテン師は逮捕もされず、民主党から希望の党、そして維新に移って立候補を続けている。なぜこんなことが許されるのかと、また怒りがわいた。

第2部は第1章から5章まで、ノルウェ―の選挙がルポされている。ノルウェーでは、女性は、各政党の国会議員候補に30%から50%以上もいる。その結果、女性は国会の4割を占める。
比例代表制は候補者を選ぶのではなく、政党を選ぶ。政党の獲得票に比例して当選者数が決まり、候補者が並ぶリストの上のほうから当選していく。選挙は政党同士の政策論争なのだという。日本のような短期間で決着するのではなく、半年も前から政党ごとに候補者が公にされて、準備されるのだという。
さらに、かの国では「政治をタブーにしない」。子どもの時から政治を話題にしたり、高校生が運営する「模擬選挙」が行われたり、地方議員は教員や公務員など仕事をやめることなく議員活動を続けたりしている。だから高校生でも市議会議員になれる。凄い!の一言である。
私が感動したノルウェーの高校生組織「ユース・カウンシル」のモットーを紹介したい。
『若者の政治参加で民主主義が強固になり、正当性ある決定が生まれ、若者は自分の未来に影響力を与えられます。一方、地方議会や町は新鮮な視点で地方の課題を見つめる機会を得られ、議員候補を発掘できます』(p112)
日本の地方の多くは、議員のなり手不足や、若い世代の地方離れ、高齢男性ばかりの議会、社会や政治への無関心など、数々の問題を抱えている。この本を読んで、比例代表制中心の選挙にしたら、こうした難問の解決につながると確信した。
比例代表制中心の選挙制度は、活力ある社会、民主的な社会にするための革命的手段だ。
高沢 陽子(青森県野辺地町議会議員)
編集部より: 6月13日(金曜日)夜8時半から、高沢陽子さんのオンライントーク「女性不在120余年の歴史を破って」があります。無料、出入り自由。ぜひ、お友だちをお誘いあわせてどうぞ。主催は楽しく比例制をめざす会
【写真:すべてFEM-NEWS撮影】
【2025/6/10 更新】


