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日本の私たちとデンマーク「ダナーの家」の女たちはつながっている by 酒本絵梨子

20241116日、国立女性教育会館で、イベント「世界で初めてできた女性シェルター:三井マリ子さんのお話し」がありました。そこで、私は司会を務め、広報の役割も担いました。


私は常にcallingを大切に、「呼ばれたら、私を遣わしてくださるのであれば」応えていこうと思いながら、さまざまなことに取り組んでいますが、11月16日も私のできることを差し出しつつ、その志に共に熱くしながら、一心に準備を進めてきました。特に今回のイベントに関しては、背景に、これまでの私自身の経験がありました。


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       ▲現在の「ダナーの家」の正面には70年代の女性運動の赤いマークが


●デンマークでの経験と気づき

三井マリ子さんは、20年ほど前にデンマークで買ってきたという、ドキュメンタリ映画「ダナーの家」を上映しました。デンマークのフェミニスト運動の映画で、英語字幕を三井さんが和訳しました。


実は、ちょうど同じ20年前、私は、デンマークの体操のフォルケホイスコーレで生活をしていました。あの1年間は、驚きと喜びで溢れていました。


埼玉県嵐山にある国立女性教育会館は今、消滅の危機に瀕しています。これまでと同様に存続させたいと願う活動の中で、再び私はデンマークから大きな学びを得るとは思いもよらないことでした。そして、実際に「ダナーの家」のドキュメンタリ映画を見ると、あの時の驚きと喜びと同じような感覚が蘇ると同時に、日本の現状に危機感を覚えました。


私はデンマークの体操学校に行く際、「上手で力強い人ばかりのエリートの中に入るような環境だろう」と思っていましたが、実際は全く違っていました。上手な人も下手な人も、痩せた人も太った人も、みんなが本当に毎日体操を楽しんでいたのです。私は、私らしく、やりたいことに取り組みながら、互いに助け合い、そして彼女や彼らの喜びを共に喜ぶ――そんな楽しみと喜びに満ちた学校生活でした。


そのような学校は一体何に支えられていたのか。それは、日々の対話だったと思います。お互いが違う存在であることを認め、その違いの良さを、コーヒーを片手に、歌いながら、編み物をしながら、麦畑の中を散歩しながら、海辺で日光浴を楽しみながら語り合い・・・だったのです。


●「ダナーの家」と豊かな対話

高層ビルに建て替えられようとしていた「ダナーの家」を奪還しようと闘う女性たちのアグレッシブな活動の合間合間に、机を囲んで報告し合い、拍手をして喜びを共有し、次の計画を立てる――そんな対話の様子が、画面に映し出されました。


もちろん、70年代のウーマンリブの音楽フェスティバルや占拠といった大胆で派手な活動は、脳裏に焼き付き、私たちの活動も大きく目立つ呼びかけを続けていけばいいのか、それとも・・・と考えさせられました。それとともに、デンマークの女性たちの、そのラディカルな活動の裏には、女性たち自身が語り、思いを共有し、互いに励まし合い、信頼し合うような、豊かな対話があったのではないかと感じさせられたのです。


●国立女性教育会館を壊すことは女性たちの連帯を壊すこと

国立女性教育会館をどうするのかという課題に向き合う中で、思いを共有する一人ひとりと手を取り合う時間が必要だと私は思います。そして、この国立女性教育会館という場所こそが、まさに新しい活動を始めるための貴重な対話の場なのだ、と思うのです。


この色づく秋の木の葉を共に眺め、食事を共にすることで、私たちは次の一歩を踏み出すための土台となる信頼を築きあげていけるのではないか。それゆえ、この場所を取り壊そうという方針は、まさに女性たちの対話や連帯を阻止する愚行だと感じるのです。


●対話を通じた未来への希望

しかしながら、果たして私たちは、大きな一歩を踏み出すための対話ができるような経験をこれまで積んできたでしょうか?対話の価値を理解できるような教育を受けてきたでしょうか?議会では、対話を通じた政治が行われているでしょうか? 強い人たちが旗を振ることは重要です。しかしながら、その旗の下に対話はあるのでしょうか?


私は教育に携わるものとして、教育にも政治にも、正直なところ、どこにも対話を感じられないこの日本という社会で、その価値をどうすれば理解してもらえるのだろうかと危機感を強くしたのも事実です。


●監督のメッセージから感じた大きな希望

それでも、大きな希望を感じさせてくれたのは、「ダナーの家」の映画監督から、イベント前日に三井さんに寄せられたメッセージでした。私はこれを当日、司会者として、会場で声に出して読んでいるうちに涙が止まらなくなってしまいました。その瞬間、海を越えたデンマークの監督と、そして時を越えて「ダナーの家」を奪還した女性たちと、私は確かに連帯している、と感じたのです。いま、この国立女性教育会館を残そうという運動は、私たちの地域の問題ではなく、世界規模の課題に立ち向かっているのだと気づかされたのです。


(「ダナーの家」監督のメッセージ https://frihet.exblog.jp/33632619/


●新しい希望やつながりを生む拠点に

私は、諦めません!世界規模の連帯に励まされながら、寛容な心を持って「私たち」の場所を守りたいと思います。そして、場所を守るだけでなく、新しい希望やつながりを生む拠点として育てていきたいと考えています。


酒本 絵梨子(自由学園最高学部准教授)



進歩は抑圧された者たちの連帯によってなしとげられる――デンマーク映画監督より : FEM-NEWS

ドキュメンタリ映画「ダナーの家」を観て by 實藤政子 : FEM-NEWS



by bekokuma321 | 2024-12-05 07:38 | 北欧