2024年 02月 25日
速報:王貞月「女性議員41% 台湾の総選挙には何がある?」
「女性議員41% 台湾の総選挙には何がある?」と題したトークが、2月23日にあった。
講師は王貞月さん。西南学院大学などで非常勤講師を勤めるかたわら、ジェンダー平等福岡市民の会、楽しく比例制をめざす会などで活躍する“闘う学者”だ。
台湾で、今年1月13日、総選挙が行われた。大統領にあたる総統、衆議院議員にあたる立法院委員が、同日、一斉に選ばれた。日本のように投票日がばらばらでないこともあって、関心は強く、「投票率は7割」と高かった。
総統は、保守系の国民党と、リベラル系の民進党の二大政党による交代が続いていたが、今回、民進党が勝って、初めて同じ政党が3期以上政権を担うこととなった。自民党の一強政治が続く日本とは異なるが、そこには、「一党独裁下の戒厳令による過酷な弾圧の歴史」を繰り返したくないという国民感情がある、と王さんは語った。
同時に行われた立法院では、全113人中、女性47人、41.6%を占めた。日本の衆院における女性は10%だから、雲泥の差だ。

その背景にあるのは、まず憲法である。「各種の選挙において、婦女の当選者定数を規定しなければならない。その方法は法律で定める」とあり、ここにクオータ制の萌芽が見られる。
その精神は、議席の一定数を女性に割り当てるとするクオータ制を定める法律へとつながり、1950年には地方議会に10%程度の女性保障定数制が定められ、1999年には25%へと改正された。
2年前の2022年地方選で、政令指定都市にあたる直轄市では女性議員は39.8%と4割に届く勢いだった。25%クオータ制を定める前である1994年には18.5%だったので、2倍以上に増えたのである。
地方議会における女性議員の躍進が進み、それにともなって、国会(立法院)への女性進出が加速された。まずは、比例代表で数多くの女性が当選していった。
ここで王さんは、「台湾の選挙は、日本の後追いをするように2008年小選挙区比例代表並立制に変えられました」と言った。続けて、こんな重要な指摘をした。
「ただし、日本の衆院選の比例代表制とは似て非なる点があります。日本では、比例の候補は、小選挙区にも立候補している“重複候補”がほとんどです。台湾は違います。比例区は小選挙区と関係がなく、独立しています。その比例枠にクオータ制を入れ込んで女性候補の当選につなげているのです」
実際、先ごろの選挙で、民進党の比例区候補は、ほぼ男女半々、しかも上から男女交互に並ぶ。結果、当選数13人のうち女性は7人となった。
王さんの話は、制度的変遷に加えて、その変遷に大きな影響力を与えた女性運動の力、市民運動の力にも及んだ。
台湾初の女性の総統・蔡英文のロールモデルとなった初の女性副総統・呂秀蓮、闘い半ばで命を落とした女性運動家・彭婉如の功績。さらには、国会議事堂を占拠して不正に抗議した「ひまわり運動」の学生たち。こうした力強い草の根の運動が、今の女性や若者の活発な政治参加の底流にあるのだろう・・・そう感じさせてくれた中身の濃い講演だった。主催は楽しく比例制をめざす会。
三井 マリ子(楽しく比例制をめざす会)
■2024年台湾総統・立法委員選挙におけるジェンダー平等 by 王貞月 : FEM-NEWS (exblog.jp)
■大好きな日本だからこそ比例代表制をーーー書評『さよなら!一強政治』(王貞月) : FEM-NEWS (exblog.jp)
■台湾の選挙比例枠は男女半々制: FEM-NEWS (exblog.jp)
■台湾初の女性総統の影に: FEM-NEWS (exblog.jp)