2024年 01月 18日
2024年台湾総統・立法委員選挙におけるジェンダー平等 by 王貞月
さきごろの台湾の選挙で、女性は国会議員の41.6%を占めた。その選挙制度は、日本の衆院と同じ小選挙区制比例代表並立制だという。ではなぜ、日本とは比較にならないほど多くの女性が当選したのか。王貞月さん(西南学院大学非常勤講師)に報告していただいた。質問や意見は、2月23日(金)夜、楽しく比例制をすすめる会GPRのオンライン会議でどうぞ。
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2024年1月13日、総統・副総統選挙と立法委員(国会議員)選挙が行われた。選挙に向けて、女性団体など28の民間団体は、2023年11月、比例代表候補者を推薦する政党に「ジェンダー平等政策アンケート」を実施した。
アンケートには9つの項目が含まれ、中でも「閣僚の3分の1を女性にすること」や、「政党法」改正案と「地方制度法」の改正案が注目にあたいする。
政党法の改正は、各政党が獲得した政党補助金の5%以上を、先住民や移民、障害者など資源が乏しい女性たちの政治参加にあてるべきだと求めている。
地方制度法の改正は、第33条が焦点である。現在、4分の1議席割当が規定されているが、その割当数がすでに最多に達しているため、当選者のうちどちらかの性が3分の1以下にならないように改正することーーこれを3分の1性別比例原則と呼ぶーーを求めている。
2023年12月、このアンケート調査結果が公表された。それによると、引き続き与党となった民進党は、女性閣僚1/3に関しては明確な表明を避けた。同様に地方制度法の改正についても回答を回避した。とはいえ、これまでの政策方針を継続しつつ、柔軟な育児休業の枠組みの導入、また教育・保育職員の労働条件を改善することを公約した。
野党第1党である国民党は、閣僚の男女比、基礎年金、および家庭介護については一定の承諾を示していたが、それ以外の項目には具体的な約束がほとんどなかった。
第3政党となった民衆党は、閣僚の男女比と地方制度法における女性保障枠の法改正のみに具体的な約束を示していた。
台湾の立法委員選挙の選挙制度は、日本の衆院選の「小選挙区比例代表並立制」と似ているが、比例区に関する規定が日本と異なることを強調したい。
台湾の比例区には重複立候補制度はない。それに「比例代表の政党当選名簿に女性の比率を2分の1以下となってはならない」という候補者クオータ制が導入されている。
これにより、2024年の比例区では、国民党も民進党も13議席のうち7議席を女性に割り当て、さらに民衆党が8議席のうち4議席を女性に割り当てた。その結果、比例区の34議席中18議席が女性に配分された。
小選挙区では、女性当選者が26人(35.6%)に達した。小選挙区制は1人しか当選できないため、国民党と民進党は激しい競争を繰り広げ、他の政党や無所属はわずか1議席しか獲得できなかった。
中選挙区制が実施されている先住民区の存在も日本とは異なる。6議席に3人の女性当選者が出た。よって、立法院の総議席113に占める女性立法委員は41.6%となった。これは2020年と同様であり、アジアでは最も女性の比率が高い。
以上、台湾の小選挙区比例代表並立制は、候補者クオータ制の実行によって、女性議員は日本よりはるかに多い。しかしながら、多様で幅広い政党から構成される議会の実現には至っていない。
真の平等に向けてさらなる改正が必要だろう。
▲総統・副総統と立法委員の選挙看板(台南市内にて 2024年1月)
王 貞月(西南学院大学非常勤講師、写真も筆者)
【筆者より数字などの訂正申し出があったため、2024年1月23日、更新】