2023年 07月 27日
報告:リングダール裕子「日本人の私がノルウェーの政党に入党して」@楽しく比例制をめざす会
「日本人の私がノルウェーの政党に入党して」と題して、リングダール裕子さんに話していただいた。主催は楽しく比例制をめざす会。
裕子さんは、日本からノルウェーに移住して30年ほど。オスロ大学で修士を修了後、ベルゲン大学で日本語を教えている。ノルウェーの労働党員となって10年以上。
現在、ノルウェー国会は、比例代表制選挙で選ばれた10の政党で構成されている。議員数169席。うち、48議席が労働党。裕子さんは、組織図で、いかに女性がリーダー的位置を占めているかを示した。裕子さんの住むベルゲン市議会は、国会同様10政党により構成されていて、正議員67名、代理議員100名(注1)。市長は、労働党青年部で活躍した女性だ。
ノルウェー労働党の特徴は「平等」である、と裕子さんは言った。以下はトークのポイント。
●党大会では、党員であれば誰でも「政策案」を発表できる。裕子さんも大勢の前で政策案を発表した。
●党大会で、政策案の発表は、政策案を書いて提出した順番(早いもの順)で行われる。現職大臣であろうと新米党員であろうと、1人3分。
●通常の生活においても、大臣でも議員でも1人の市民として近所の人や友人と接する。日本のように「先生」と呼んで、政治家を上に見ることはない。
●選挙になると、政党はみな、選挙事務所をショッピングセンターや駅前などに、平等にテントを張ってつくる(候補者個人の選挙事務所はない)。テント前で政策をPRしたり、通行人と討論したりする。
●7月はじめ、性的マイノリティーを応援する「プライド・パレ―ド」がノルウェー各地であった。ベルゲンでは労働党は、市民にまじって大臣や警官までも参加した。
●NHKにあたるNRKのTV番組で、選挙前に「高校の試験」について政治討論をしていた。パネリストは、高校生3人、現職大臣・国会議員3人だった。
●党の政策決定会議に党員は参加できるが、決定権は役員のみ。賛成は一人一人赤いカードを上げて示し、その数を数えて決定する。
●『さよなら!一強政治』に書かれているように、党員(議員も多い)は学生や労働者などさまざまで日中は学業・職業に従事し、会議は平日の18時半~21時頃まで。
●党費は300ノルウェー・クローネ。学生、失業者や低所得者はその半額。女性ネットワークの会議をホテルに泊まってやったが、党から費用負担があった。
●今秋9/11は地方選挙投票日。比例代表制なので政党に投票する。どの政党に投票したらいいかは、メディアの「バルグ・マート」が便利(注2)。自分の選挙区名をクリックして、次に関心ある政策テーマを選んで、クイズ形式にクリックしていく。すると最後に「あなたは何々党に近い」と出てくる。
●労働党に私が入ったのは、「社会を良くするために問題を解決したい」と願っていたことと、労働党が性の平等、環境問題、公共サービス、移民問題、などで自分の意見と合うと思ったことと、急進的過ぎず左派であること
画像の下は、トーク後の質疑応答(以下、リングダール裕子は裕子、オスロ在住の守口恵子は守口、他は参加者)

―日本とあまりに違いすぎ、夢のようだ。すぐにでもノルウェーに行きたい気分。
―労働党にいつ頃入ったか。入党前はどうだったか。
裕子「2006年か2007年ごろ。日本に住んでいた時は政党に興味はなかった。日本で政治家は雲の上の人だったが、ノルウェーはそうではなかった」
―日本の政党とノルウェーの政党の違いにのけぞった!
―議会や政党のリーダーが男女平等なんですね。衝撃的。息子さんは、自分の意思で入党したのか。
裕子「もちろんです。ノルウェーは自分の意思がとても大事。自分の人生は自分で決める、が基本」
―30年位前、ノルウェーを初訪問。首相は労働党で、彼女の連れ合いは保守党幹部だったことに驚いた。後に、ノルウェーは、議論しても個人を人格攻撃しない人が多いとわかった。ディベート(議論)に慣れている。日本人は下手だなと思うが、ノルウェーではどうやって鍛えられているのか。
裕子「息子が小学生の時の話。彼の親友は、両親ともに保守党。クラスで模擬選挙があり、親友が立候補した。息子は親友を支援しなかった。彼は「だって、僕は保守党に賛成じゃないもん」とカラリと言った。ところが、今も二人は親友なので、親の私は感心した」
―日本では、支持政党が違うと、会話をしにくい。ノルウェーではどうか。
―日本では、多数派が正しい、となってしまう。
―私は社民党市議。ノルウェーの話、すごいなと聞いた。日本人は討論が弱い。議会で私が反対したら、賛成派の市民がとことん私に言ってくる。また学校建設問題で市が二分された。私は反対だったが、賛成多数で決定され、その後、反対した私は、どういう態度をとったらいいか悩んだ。
裕子「オスロで、セクシャル・マイノリティ(セクマイ)の集まるロンドン・パブで2人が銃殺された。一般にセクマイ尊重だが、セクマイ反対の宗教的右派の人たちもいる。その人たちが、悪人の烙印を押され、断罪されるのはよくないと思う。二分化の傾向。私は反対意見も尊重すべきだ、と感じる」(注3)
―議員18人中、女性10人という千葉県白井市の議員。女性候補は全員当選し、今6割に近い。ニュータウンで女性が活躍してきた歴史や女性が出やすい環境があって、その上、女性は勉強をしてよく準備し、発言力があり、いい政策提案して、市が取り入れて福祉が充実して、さらに女性議員が増えてきた。
守口「柴田さんの話、刺激的。日本にも女性が気負わずに議員になれるのは希望がある。賛否にかかわって
思いだした。リレハンメル・オリンピック。環境問題からオリンピックに反対する人たちがいた。結局、オリンピック賛成
と決まった。その実行委員会に反対派のメンバーも入れた。おかげで環境にやさしいオリンピックとなった。こういう
のはいいな、と思う」
―ノルウェーの政党交付金は、地方の政党にも出されると三井さんの著書にある(注4)。ベルゲン労働党への政党交付金は? 他党の党費は? 男女比、また青年部党員の割合は? 先ほどから話題になっている意見の違いによって人間関係が崩れない社会にするにはどうしたらいいだろうか。
裕子「意見が対立しても、ケンカ別れにならない討論重視の教育だと思う。小学校の時から、多くの人の意見を出しあうのが民主主義だ、と、丁寧に学ぶ。校則も教員だけでなく当時者の生徒も同席して決める」
―この会は、比例制をめざしたい人たちでつくった。選挙制度についても意見を。
―比例代表制の選挙を、スウェーデン政治学者・岡野加穂留から学んだ。小選挙区制をなくして比例代表制に変えたい
―裕子さんの話に平等が何度も出てきた。平等へ向かう、基礎となるのは比例代表制選挙だと思う。小選挙区制では、最強の一人以外に入れた票はすべて「死に票」となって捨てられる。比例制は、一強ではなく多くの政党から議員が選ばれて、話し合いで、妥協しながら、方針を決めていく。平等社会には選挙制度が関係しているのでは。
裕子「大人になってノルウェー語を学んだ私は苦労が多いが、息子はすぐペラペラになった。言語だけでなく、
ノルウェーの子どものように、民主主義や平等も、頭が柔らかい時に学ぶと、一生ものになる」
守口「日本での子ども時代を思い出すと、先生の期待にそった回答や意見を言っていた気がする。ノルウェーに来て、自分
らしさを出す教育に触れ、日本の教育は、社会や先生が用意した答を子どもたちが選んでいるのではないか、と思う」
岡田 ふさ子(楽しく比例制をめざす会事務局)
【注1】代理議員は、育休や教育休暇などをとる議員のピンチヒッター。『さよなら!一強政治』 p132
【注2】選挙のとき自分にあっている政党をクイズ風に選ぶもの。『さよなら!一強政治』 p140
【注3】ノルウェーでも意見が対立したままのことはよくある。労働者のストはそのいい例。労使で賃金交渉が妥結
しないと組合はストに。毎年大勢がストをする。女性問題では、2023年3月8日国際女性デーで、買春処
罰法をめぐって女性団体が割れた。叫ぶ芸術「国際女性デーの栄枯盛衰:ノルウェー」 :FEM-NEWS (exblog.jp)
【注4】『さよなら!一強政治』 p190
次回は:2023年10月13日(金)20:30~
講師は三井マリ子さん。9月ノルウェーを訪問して地方選挙を取材予定。
ノルウェーの選挙運動報告をしていただきます。
【更新 リンク先追加 2023/08/02】


