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格差社会ニッポン:候補者ひしめく激戦の都会 VS 無投票当選の町村

5月21日、東京都足立区の首長と議会を決める選挙があった。近藤弥生候補(自公推薦)が西山千恵子候補(共社推薦)を破って、5選を決めた。近藤区長が誕生してから、女性には女性でということなのか女性同士の区長選が何度も続いている。

同時に行われた足立区議選では、立候補者64人。激戦を制した当選者45人のうち、女性は15人。ちょうど3分の1でクリティカル・マスだ。残念なのは投票率の低さ。区長・区議選とも42%ちょっと。有権者の半分以上が選挙に背を向けたのだ。

私は、選挙中、友人の西山候補の応援に足立区に行った。社会的に不利な立場に置かれている人たちへの政策を重視する人だと確信していた。

北千住で、区長候補の横に、区議候補がひしめきあう巨大なポスター掲示版を見た。選挙こそ民主主義の土台だ。こんな大勢からどうやって1人を選べるというのだ。しかも、選挙期間はわずか1週間。選挙にもっとも大切な政策の違いを知るすべもない。何度も言う「日本の選挙制度はおかしい」。

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足立区の前に行われた統一地方選を見ると、首都圏や関西の都市では、足立区のように大勢の女性が出て、議会の過半数を女性が占めるところが複数出た

ところが、人口の少ない町村の選挙風景は、まったく違う。

住民は、男性の顔ばかりが並ぶポスターの前を通り過ぎる。そんなところが地方にはたくさんある。「女性ゼロ議会」は、254もあった。統一選後、39は、女性ゼロ議会を脱した。しかし、いまだ「女性ゼロ議会」は200以上も残った(注)。

「女性ゼロ議会」の現状を調査しながら、20年以上も前、挑戦した女性のことが私の頭を離れなかった。富山県利賀村(現南砺市)の米倉みつ子さんだ。

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1999年4月、長年無投票の富山県利賀村に女性が立候補している、と聞いた私は、その村を訪れた。米倉みつ子候補を含む選挙ポスター掲示版が立ててあった。

掲示版を見ていた通行人がいた。彼は私に「僕、選挙権を得てから一度も村の選挙に行ったことはない。初めての投票です」と言った。衝撃だった。

米倉さんは、かっぽう着姿に手ぬぐいを頭にかぶって出てきた。「朝から晩まで農作業が忙しくて」と。立候補の動機を聞いた。「公金横領で村は大騒ぎ。それにかかわった人たちが立候補してまた当選する。このままでいいんか」と怒りがおさまらなかった。「(夫に)あんた、出たら」と言ったら、夫は「前に出た。村八分にあう」と首をたてに振らなかった。


「戦前生まれの私は国民学校(小学校)しか出てない。戦地から帰国した父はマラリアが再発して亡くなった。こんな日本の政治はいやだ」ーーー悔しかった。その悔しさをバネに立候補を決断した。


聞けば、「利賀村は自民党一辺倒」。村は地区割りされて、各地区から出る候補者は議員定数8人に合わせていつも8人。その慣行を破る人はほとんどいなかった。だからほぼ投票はなかった。ひどい! しかし、後に私は、都会を除くと、こうした慣行は珍しくないことを知ることになる。


立候補した米倉みつ子さんに向かって、石つぶてが飛んできた。


「女はひっこめ、といろんなところから言ってきた」

「村におれんようになる、と心配して言ってきた親類もいた」

「新聞は、女が出たということをおもしろおかしく茶化したひどい記事を書いた」


村議会定数8人に立候補したのは9人。米倉みつ子さんは惜敗だった。


とはいえ、米倉みつ子さんが出たからこそ、民主主義の土台である選挙が行われたのだ。彼女が出なかったら、前回同様、無投票だった。彼女は、民主主義の土台づくりに一役買ったと言える。


こんな村や町が、日本にはまだまだある。全国の女たちよ、米倉みつ子さんに続こう! 女性が出ることは民主主義をつくる。



【写真上:東京都足立区にて、区長選と区議選の候補者ポスター(2023/5/16)。写真下:富山県利賀村村議選ポスターの前に立つ米倉みつ子さん(三井マリ子「1999年統一地方選で女性議員の割合が4.6%から7%へ大量増加 勇気の一歩が躍進に」 女性ニューズ1999/5/10)】


【注:全国フェミニスト議員連盟調査】  


【更新:2023年5月23日、米倉みつ子さんと連絡がついて修正した。米倉さんは90歳の今も農作業・村おこし活動に余念がない。「人生100歳時代だもの」と笑った】


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by bekokuma321 | 2023-05-22 19:29 | 日本