2023年 04月 24日
ルポ 六ヶ所村選挙 by 野村保子
統一選後半が終わった。兵庫県宝塚市は女性議員が過半数となったらしい。他にも女性3割、4割超えの議会も珍しくないようだ。ところが男性だらけの「女性ゼロ議会」はまだ残る。その一つが青森県六ヶ所村だ。
この村には、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す核燃料再処理工場が建設中。こうした村の議会にこそ女性を、と思うが、前回の候補者は全て男性。しかも無投票だった。だが今回、女性が立った。核燃再処理工場建設に異議を唱え続けてきた菊川けいこさんだ。『原発に反対しながら研究をつづける小出裕章さんのおはなし』や『大間原発と日本の未来』の著者野村保子さんによる速報をお届けする。
ルポ 六ヶ所村選挙
村議会議員選挙が始まった六ヶ所村を訪ねた。立候補した菊川けいこさんを応援するためだ。新幹線新青森駅から車で約1時間半、陸奥湾に沿って野辺地から下北半島に入る。山間の道を突き抜け六ヶ所村に入ると原燃の巨大クレーンが遠くにかすむ。それまでの道と趣が変わり無機質の風を感じる。
原燃関連施設の建物の並ぶ道を過ぎ、桜、レンギョウ、モクレン、水仙、チューリップの咲く道の先に菊川けいこさんの自宅兼事務所があった。六ヶ所村長選挙で闘った山田清彦さんが街宣車の前で待機している。現地スタッフの小野田明子さんが出迎え、3年前と変わらない菊川さんがにこやかに現れる。埼玉から堀切さとみ監督と鵜沼久江さんが駆けつけ、福島から黒田節子さんも来る。六ヶ所村長選に挑んだ遠藤順子さんは選挙をマネージする。
さあ街宣出発。なだらかな平野が続く六ヶ所は、太平洋からの風が足を踏ん張らないと立っていられないほど強い。
菊川さんは畑の人影に手を振り、家を見かけては「核燃に頼らない村を」と声を上げる。再処理工場建設のために移転新築した家の立ち並ぶ一角で辻立ちをする。「核燃に頼らない村」「縄文遺跡を活用した村おこし」「豊かな農業漁業の振興」を訴える。
過疎地では通りを歩く人は殆どいない。この村でも用もなく外に出ること、特に女性は用なく外を出歩くことが嫌われる。
菊川さんは日本原燃の企業城下町で核燃サイクルに反対し続ける稀有な存在だ。樺太から引き上げてきた両親の開拓した畑を引き継ぎ、野菜やチューリップを育て、ルバーブをジャムに加工販売して生計を立てる。
22日の昼、葉ワサビやアサツキ、長芋など裏庭で採れた野菜の料理を囲み、午後からの街宣の英気を養う。釣り上げた魚料理を持参する支援者の心遣いに心和むひとときだった。遠くから集まった女たちと細やかな男たちが支える手作り感のある選挙だ。
23日投開票が行われるのは午後8時からで、程なく大勢が判明。帰宅した私に現地から届いたのは「菊川けいこ30票」。愕然とする。菊川さんの話しを真剣に聞き、拍手してくれた女性や高校生がいたという。だが、過去2回の立候補時より、20票ほど減らした。
菊川さんは「申し訳ありません。六ヶ所の状況がどんどん厳しくなっているのだと思います」と言った。
533票から270票まで16人の男性候補が分けあった開票結果だった。核燃サイクルを止めるために命に繋がる女性の声を議会に届けるのが、遠回りでも早道と私は確信していた。しかし、女性たちの声を拾い上げることはできなかった。これからも、男性だらけの六ヶ所村議会が続く。青森県は「女性ゼロ議会」が全自治体の37.5%と全国1である。
野村 保子(ライター)
【写真:撮影は選対の竹浪純事務局長。右から遠藤順子、黒田節子、野村保子、菊川けいこ、小野田明子のみなさん】
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