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フィンランド総選挙でマリン首相が負けたワケ

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フィンランドの総選挙で、サンナ・マリン首相率いる社会民主党が負けた。


マリン首相は、30代の若き女性。連立を組んだ政党の党首5人は全員女性だった。その時の写真は世界を驚かせた。その後、彼女は、コロナ対策やNATO加盟問題での手腕も評価された。


また日本の議員からはとても想像できないユニークな履歴は、多様性時代を象徴するかのようだった。サンナは、貧しい労働者階級の家庭に生まれた。アルコール中毒だった父と離婚した母親は女性と同居。サンナは母親2人のレインボーファミリで育った。学業は芳しくなくスーパーの店員をしたこともあるという。


しかし、世界での人気をよそに42日の総選挙で、社会民主党は第1党の座を国民連合党(日本の自民党にあたる)に奪われた。


2党は移民排斥を掲げるフィン人党(極右)。こちらもカリスマ的女性党首だ。社会民主党は第3党に落ちた。得票率は、国民連合20.8%、フィン人党20.1%、社会民主党19.9%。この獲得率に比例して、国会の200議席が配分される。投票率は72%。


フィンランドは比例代表制選挙だ。比例代表制は民意を反映しやすく、日本のような一強政治は生まれにくい。どの政党もある程度の議席をとるからだ。通常、国会の200議席の過半数をとれるよう連立を組む。今回、国民連合党を中心にどのような連立になるかはまだ不明だ。


今回のフィンランド選挙に関して、隣国ノルウェーのNRK(日本のNHKにあたる)の説得力ある報道を読んだ。報道されたのは選挙直前だ。記事によると、フィンランド社会民主党の支持率が落ちた理由は、経済不況と、連立政権の一翼を担う中央党(かつて第1党だった。支持基盤は農林業従事者)支持者の中央党離れにあるという。


NRKは、中央党支持だった1人の男性の人生の変遷を例に、フィンランド政治の変遷を伝えている。


彼の名はヨルマ・ラウスティーラ。3代目の農業主。長年、家畜を飼育し穀物を収穫していたが、90年代末、収入が激減。借金返済のため農地も森林も売った。妻も亡くなり、今では近所の工場のフォークリフト運転手となって暮らしを立てている。


ヨルマは、農業を捨てざるをえなくなったのは、政治が悪いとみる。思えばフィンランドは、農林業従事者の圧倒的反対を押し切って、1995年EUに加盟した。後、政府はEU政策への準拠をせまられた。とりわけ、気候変動政策によって、自然資源の保護を優先させられた。その結果、農業では食えなくなった、と彼は考える。


中央党に愛想をつかした彼の目にとまったのは、極右政党とよばれるポピュリスト党のフィン党。同党は、そもそもEU懐疑派。しかも、農林業を犠牲にする環境保護に反対を唱える。彼は、フィン人党に入党。今ではロホヤ市の議員も務める。


フィン人党に移ったのは彼だけではないようだ。


ヘルシンキにある国会では、中央党党首アニカ・ソーリッコ(女性)が、マリン政権を財務大臣として支えている。社会民主党のなかでも最左派とされるマリン首相のとる政策と、地方の農林地帯に住む中央党党員の考えには齟齬がある。それゆえ、中央党支持者は党首アニカにそっぽを向き、中央党支持は減るばかり。多くは、中央党を離れて国民連合党またはフィン人党支持へと変わっていった。


NRKはいう。もしもフィン人党が第1党となったら、フィンランド政治はこれまでと真逆になる。手厚い福祉・教育政策を支える財源にメスが入れられ、移民政策が厳格にされ、スウェーデン語圏地域を除きフィンランド語しか使わないようにされる、と。


42日の選挙結果を見ると、フィン人党は第1党とはなれなかった。それに第1党の国民連合党を含め多くの政党は、フィン人党とは連立を組むことは難しいといっているらしい。NRKの観測は杞憂のようだ。


話は変わるが、1990年代中頃、フィンランド国会を訪問した。男女平等担当の国会議員は、「国会議員200人のうち約4割が女性で、13人が看護師です」と言った。目を丸くしたことを覚えている。


フィンランドは、日本のような自民党による一強政治とは全く違う。国会でも地方議会でも、さまざまな政党から議員が出ている。右と左の政党の勢力はほぼ拮抗状態。加えて、男性による一強政治でもない。現在、国会に女性は91人、46%を占める(4月2日の総選挙では候補者の42%が女性)。


ちなみにNRKが取材した元農業主ヨルマ・ラウスティーラが住むロホヤ市は、人口46000人。市議会は51議席。10政党、男性26、女性25で構成されている。


と、ここまで書いて、フィンランドの選挙をあれこれ語るなんておこがましい、と思ってしまった。それは、わが日本の選挙があまりにも非民主的だからだ。今、その日本で、統一地方選が行われている。なんとまあ無投票の多いこと、なんとまあ女性候補のいない選挙区の多いこと! ああ・・・。



【写真:フィンランドの男女平等推進パンフレットより】


叫ぶ芸術「34歳女性が首相に選ばれるわけ(フィンランド)」 : FEM-NEWS (exblog.jp)
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by bekokuma321 | 2023-04-08 16:38 | 北欧