2023年 03月 07日
「女性ひとり議会」に挑戦する30代の背中を押した北欧の政治
「これは政治の問題!」 こう思ったのは、2019年4月、北欧フィンランド旅行から帰ってからのことだった。
学生だった頃、フィンランドは「学力世界一の国」と聞いていた。教師には残業がなく、夏休みはたっぷり2ヶ月で、午後3時になると学校には誰もいなくなる。その後、小学校教員になった私は、これこそ私のめざす働き方だと思った。
私はフィンランドを訪問して、実際に、ゆとりのある学校生活、投票率の高さ、女性閣僚の多さ、そして、34歳の女性首相・・・を目の当たりにした。
日本での教員生活はどうか。教員は不足し、教員ひとりあたりの担当する教科は増え、休職の先生は増える。不登校の子どもたちも増え、居場所もなく、親たちが困っている話も幾度聞いたことだろう。
●暮らしや困りごと全ては政治の問題
フィンランド旅行から4年経ち、私は、今、長野県富士見町(注)の議員をめざす決心をしている。
というのも、学校の問題だけでなく、私たちが働く場、暮らす場でおかしい!と思うことすべてが政治につながっている、と気づいたからだ。
子どもの貧困も、ジェンダー不平等な社会も、若者が地元に帰ってきにくいことも、免許を返納した高齢者の暮らしにくさも・・・すべてが政治につながっている。でも「こうなってほしい」と願っても、なかなか声を発せられない人が多い。そんな声を町政に私が届けたいと思った。
●とはいえ、壁がある。
議員をめざす、ということは選挙に出るということだ。選挙に出るにはお金がかかる。しかも、選挙に出るには、教員を辞めなくてはならない。「地バン・看バン・カバン」のない30代の移住者の女性にとって、血縁や地縁がない地域で活動するのもハードルが高い。なぜ1人でここまでやらないといけないの? なぜ私の名前と顔をここまで露出しないといけないの? 疑問はつきない。
●疑問に答えてくれたのが『さよなら!一強政治』だった。
そんな疑問に答えてくれたのが、三井マリ子さんの『さよなら!一強政治:徹底ルポ 小選挙区制の日本と比例代表制のノルウェー』だった。この本は、フィンランドのお隣ノルウェーの選挙を徹底取材している。高校生が選挙や政治に自分のこととして参加している姿が描かれている。そして日本の小選挙区制と比べて、日本の選挙をより良くするためには、どうすればいいのか、ヒントがつまっている。
また、この本は、私の見てきたフィンランドも、お隣のノルウェーも、選挙は比例代表制であることを教えている。
私には、まだ「比例代表制」が遠くにありすぎる。どういうふうに比例代表制に変えていったらいいのか道筋も見えない。まずは30代の私が地方議会議員に出ていって、選挙というもの、議会というもの、を実感することが大事ではないだろうか。議員は、まだ女性のロールモデルの少ない職業だ。だからこそ、そこまでの道筋を多くの人にわかりやすく「見える化」して発信していくことが、はじめの一歩だと思う。
●政治に最も遠いと思われる世代だから
私は30代、これまで「政治」から一番遠かったと思われる世代に属する。だからこそ、女性でも政治に参画できることを、後に続く人たちへ姿で示したい。できることなら、さまざまな身の回りの問題は、その社会の仕組みに問題があることを可視化していきたい。
まだ果てしなく遠くにあるような「比例代表制」だ。でも、あこがれの北欧の国々は、100年以上前に、比例代表制に変えて、暮らしやすい社会をつくってきたではないか。その世界に向かって今できる一歩を踏み出したい。
西 明子(長野県富士見町民)
【注:長野県富士見町は八ヶ岳のふもとにある人口1万5千人ほどの町。しかし議会はひとりを除いて全て男性の「女性ひとり議会」である】

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【更新 2023年3月16日 写真を追加更新した】