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NRK報道から考える「ノルウェーの性産業の実態」

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ノルウェーは、スウェーデンに次いで世界で2番目に「買春処罰法」を施行した。


「セックスを買う側(多くは男)を処罰し、買われる側の人々(多くは女)の罪を問わず、そこから抜け出すための支援をする」という法だ。


スウェーデンを皮切りに、ノルウェー、アイスランド、カナダ、北アイルランド、フランス、アイルランド共和国、イスラエルが施行。EUは立法を促す議決をした。イギリスでは「北欧モデルを今こそ」という運動が活発だ。


しかしノルウェーでは今、その是非をめぐって論争が起きている。昨年、法務省の刑法審議会から買春処罰を緩和する提言がなされたのだ。


審議会の報告書には、「すべての性交は自由意志によるべきである。よって、もしも売春が自由意思によるものならば買春は違法ではない」とする提言が書かれているという。


買春処罰法をなくすべきだとする代表格はアムネスティ・インターナショナルだ。この提案に賛成の立場から、こう言う。


「買春処罰法によって、売る側が苦しみを背負わされている」「法があるため、警察に助けを求めにくくなっている。警察に情報がわたる結果、顧客を失うことになるからだ」「生きていくためには稼がなければならない。セックスワークは最高の機会だと考える人がノルウェーにはいる」


かたや、処罰を厳しくすべきであり、緩和などもってのほか、とする代表格は、女性運動団体Women’s FrontOttarだ。団体のサイトは、次のように見解を明らかにしている。


Women’s Frontは言う。

「売買春市場は人間を売買するものだ。売買春と人身売買とを分けることなどできない。これは自由意志による売買春、あれは自由意志によらない売買春だと区別はできない」

「アムネスティは、人々の自由な選択を尊重すべきだという。しかし、悪事のなかでの選択であり、悪事ではない選択肢があることを知らせるべきだ。売買春に入らなくてもいい選択こそ大事だ」


Ottarは言う。

「刑法審議会が買春処罰法の改悪を提案したことはショックだ。すべての性交は同意によるべきである、と言いながら、その一方で、同意はカネで買えると言っている。まったく矛盾している。同意にカネが介したとたん、その同意は自身ものではなくなる。カネによる売買春に真の同意などありえない。自己決定は、めぐまれた特権階級のものであり、これではノルウェー男性の自己決定権を売春婦の自己決定権より上に置くことになる」


報道界はどうか。NRK(ノルウェー公共放送)は、2年間にわたる涙ぐましい調査・取材によって、タイ・マッサージ店を隠れ蓑にした組織的な売買春業の実態にせまった。昨年12月、そのドキュメンタリー記事が公開された。


(続きは左下Moreを)







「ノルウェー全土で80のマッサージパーラーがあり、300 人の女性たちが、オスロ、ベルゲン、トロムソ・・・と頻繁に移動して働いている。多くはノルウェー人男性と結婚して、移住し、その後、離婚している」


家主、家を借りてパーラーを開いているオーナー、マッサージ師の3者がいる。オーナーとマッサージ師が同一人物の場合もある。ほとんどがタイからの移民で、タイ・マッサージというと「売買春」と思うノルウェー人が多いという。


オーナーは、高額を支払ってエスコート会社のネット広告(裸に近い女性が陳列されている)をする。客は、それを見て、電話をかけて予約する。ベルゲンが最も多かった。「若い子がいる店はあるか」「あそこがいい」などと情報交換できる、フェイスブックサイトもある(会員のみの)。


NRK記者は、隠しカメラ・オーディオ機器をつけて、ベルゲンの店に潜入した。「マッサージ以上のことをやってもらいたいが、いくらか」と交渉。マッサージだけだと、客が支払う1時間約700クローネのうち、400がオーナーに行き、200300しかマッサージ師はもらえない。ところが「フルコース」と称するセックスをすると3000クローネに跳ね上がり、この全額が彼女に入る。他の店もほぼ同じ条件だ。


警察官(私服の女性)が定期的にタイ・マッサージ店を見回り、「怖い客や、心配があったら連絡してほしい」と言って回るが、マッサージ師は「そんな客はいない」と安心安全を強調する。驚くべきは、娘にマッサージ師という名の売春行為をさせている母親も珍しくないことだ。


2人のタイ女性の話を、NRKのドキュメンタリー動画から紹介する。


1人は、スウェーデンからノルウェーのトロムソに連れてこられて、マッサージ店で、2年間、働いたタイ女性。精神を病み、帰国を目前にしている(そういう人でなければ本音を話さない)。彼女は、嗚咽しながら告白する。もらい泣きしたところで解決につながらないのだが、涙がとまらなかった。


店の一室が彼女の全世界。ベッドのそばのソファーで寝起きし、起きたらベッドを掃除して客を迎え、24時間、365日。マッサージ以上のことが多かった。男性客の性器をマッサージさせられた。全裸になるよう命じられた。身体をさわりまくられた。さわるのは身体の外側だけでなかった。男性客の射精した証拠が、壁、ベッド、ベッド横のタオル置き棚に残る。「生きて故郷に帰れない、私はここで死んでしまいたい」「私の苦しみはあまりに大きく、どうしていいかわからない。何かをつかもうと空をさまようが何もない」


もう1人の女性は、真面目にマッサージ業を営み、自分の仕事に誇りをもっている。彼女は、実名で、顔を出して取材に応じていた。


店で、恐怖におののいたことがある、と話す。新しく来た男性客に「マッサージ以外はしません」と言ったら、承諾した。しかし、入室後すぐ、彼は性器を露出してセックスを要求した。彼女は、「帰ってくれ」と断った。すると彼は、激怒した。ベッド横のバスタオル入れに排尿をした。店にいたもう一人の従業員にクレディットカード読み取り機を投げつけた。2人で彼を店から追い出した。その後、つきまとわれた。1人で仕事をする夜もあり、恐怖に震えた。ある日、彼の写真撮影をして警察に届けた。彼は弁護士を通じて「そんなことをした覚えはない」と言い張った。


最初の女性の致命的な弱さは、多くのタイ・マッサージ師にもあてはまる、とNRK報道はいう。言葉ができず、知人がいないため、ノルウェーの社会的サービスをまったく知らない。地獄から這い出ようにもどうしていいかわからないのだ。たどりつく先は、同じ境遇のタイ・コミュニティだ。


2人目の女性は、真正のタイ・マッサージ師だ。「タイ・マッサージ=セックス」という先入観の虜になっているノルウェー男性は、プロの仕事師であるタイ女性を、まるで虫けらのように扱った。


どちらも、買春処罰法を持つノルウェーでは、客は、買春行為をした犯罪者であり、逮捕される。


法がなくなったら、どうなるのか。他国はどうなのか。そしてわが日本は。



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案内 2/11「北欧モデルって何?」by 中里見博&キャロライン・ノーマ : FEM-NEWS (exblog.jp)
「北欧モデル」セックスを買う側は処罰され買われる側は罪に問われず支援される : FEM-NEWS (exblog.jp)

【写真 上はNRKによるドキュメンタリー動画より。下は全国フェミニスト議員連盟フォーラムのチラシ】
【更新 2023/2/3】

by bekokuma321 | 2023-02-02 21:09 | ノルウェー