2022年 12月 31日
訃報:天下無双のフェミニスト、シャバナ・レーマン
12月29日、ノルウェーから訃報が届いた。パキスタン系ノルウェー人で、コメディアン、ジャーナリストのシャバナ・レーマンが癌で亡くなったという。弱冠46歳。たくさんやり残したことがあっただろう。ノルウェーだけでなく世界の未来にとって大きな損失だ。残念でたまらない。
シャバナ(写真)は私の敬愛するフェミニストの一人だ。直接会ったことはない。
彼女の名を知ったのは2005年ごろだ。ノルウェーで男女平等政策を取材していた。メディアに、大きな目で堂々とした体躯の若い女性が、女性の権利擁護にかかわって頻繁に登場していた。友人は私に「彼女はね、イスラム主義の指導者とされていた男性と討論会をしている真っ最中に、彼を突如抱き上げた。それが大スキャンダルになった」と教えてくれた。
抱き上げられたイスラム原理主義のリーダー的男性はムッラー・クレカル。イラク出身でオスロ在住。テロリストとみなされていた。「シャバナは、イスラム教を侮辱した、と、ムッラー激怒した」という。当然だろう。そして、彼女には殺害予告や脅迫がくるようになり警察の保護下に。
彼女のとった”ぶっとび対抗手段”に私は驚嘆した。その柔らかさ、やさしさ。これこそ女性がとりうる無類の抗議スタイルではないか。以来、彼女は私の記憶に刻まれた。
6年後、2011年、オスロで世界を震撼させたテロ事件が起きた。10代、20代の若者たち――統一地方選候補者が多くいた――が極右男性の手に落ちて亡くなった。
襲撃犯ブレイビクは、私の好きな男女平等や多文化共生がノルウェーを滅ぼす、とほざいた。その人種差別・女性差別に凝り固まった頭は、日本の右翼政治勢力の頭とそっくりだった。
他人事ではなかった。極右政治集団であるバックラッシュ勢力が日本列島を席巻していた。バックラッシュ勢力は、男女平等を目の敵にし、行政に圧力をかけ、自分たちの気に入らない図書や講師を排斥してきた。私は、バックラッシュ勢力の圧力に屈した行政幹部から、不当にも職場を追われた。
私はノルウェー・テロ事件の背景を調査した。ネットに流れた数多くのコメントの中に、シャバナ・レーマンの発言があった。彼女の的を射た分析に、またも私はうなった。
「罪のないノルウェー人の若者を殺したブレイビクの言動は、理解しがたい。自分の娘を殺害する父親の心理を理解しがたいのと同じだ。つまり、これは名誉殺人と同じ構造なのだ。
家族の名誉を汚す行いは罪であり、その罪人を断罪することは罪ではない。家族を地域社会から葬った娘は、地域社会から断罪される。父親がその娘を殺害する命を受ける。彼の行為は正義だ。
名誉殺人を断行する男性にとっての掟は、社会の法よりも優位にある。そのような人間が、法廷を認めるわけがない。その目的は崇高であり、手段など選ばない。
ブレイビクは、イスラム教徒や非ヨーロッパ人と寝るノルウェー女性は万死に値すると言う。ブレイビクの歪んだ宇宙において、彼女たちは裏切り者であり、汚辱なのだ。彼女たちは、彼の妄想する名誉を侮辱したのだ。」
天下無双のフェミニスト、シャバナ・レーマン。あなたのやり残した闘いは、私たちが続ける。


