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速報「投票率は高く政権交代もあり女性議員も増えた。しかし・・・」(オーストラリアの選挙と男女平等)

1223日(金)、キャロライン・ノーマさんから「オーストラリアの選挙と男女平等について」を聞きました。キャロラインさんは、現在、一橋大学客員研究員で、母国オーストラリアではロイヤル・メルボルン工科大学教員です。主催は楽しく比例制をめざす会GPR


キャロラインさんは冒頭、
『さよなら!一強政治ーー小選挙区制の日本と比例代表制のノルウェー』(三井著、旬報社)を引用して、「ノルウェーの比例代表制は、地方の民主的な努力の結果として生まれました。でもオーストラリアはそういう歴史をとっていません」と言いました。



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オーストラリアの選挙制度は特殊であり、ややこしい、と強調しました。連邦議会の上院は75議席のすべてが「比例代表制」で選出されます。クオータ制はないが、以前から女性議員は50%を超えているそうです。一方、下院は150議席で、すべて「小選挙区制」です。比例制をとる上院では、女性議員が多いだけでなく、緑の党なども活躍しているそうです。


オーストラリアの選挙制度は上院しか女性に優しい比例制をとっていない、それなのに、下院も比例代表をと求める女性団体は存在しない、とキャロラインさんは残念そうでした。


小選挙区制をとる下院では、労働党(リベラル系)と自由党(保守系)の二大政党で、政権交代が続いてきたそうです。しかしながら、小政党も当選できる工夫がなされていて、日本のように当選した1人以外に入れた票がすべて死に票となってしまうようなやりかたではないそうです。「外国人の話す日本語」に不慣れなこともあってか、私には理解できない箇所が多くありました。


今年2022年の選挙では、下院の女性議員が4割近い38.4%と過去最高になったそうです。


90%と高い投票率を誇りますが、それは、罰則を伴う国民の義務投票だからです。投票に行かない場合には、日本円にして2500円程度の罰金が課されるそうです。


選挙運動は、「戸別訪問」が中心で、日本のような「街頭演説」はないそうです。投票前に、政党は、有権者に、投票用紙に記入する候補者の番号の順番を指示して回ります。投票者は、投票用紙に候補者が前もって印刷されていて、その横の空欄に1番、2番、3番・・・と番号をつけるのだそうです。一見、投票は簡単そうです。でも、オーストラリアの選挙制度を分かっていない国民が多いのでは、と言いました。私も、よくわかりませんでした。


以前、労働組合は強かったそうですが、今は、組織率がかなり減っていて、日本より低いのでは、と言いました。性産業に入っていく移民女性(とくにアジア系)や貧困女性が多いようですが、驚いたのは、労組がセックスワーク(性産業)に賛成しているということです。


政党活動の資金源がまた日本と違います。「政治資金源に規制はなく、自由党はむろん労働党も大投資家です」と言います。政党は潤沢に資金を持ち、不動産投資などを行い、その利益を政党活動の資金にしているそうです。


あたかも政党が企業活動をしているかのように、日本人の私には聞こえました。キャロラインさんは、労働党も含めて、政党はエリートや大企業の利益を優先する政策をとっている、と遠慮がちに語りました。


オーストラリア社会の一般的特色として、教育水準は、トルコを除き先進国としては最低だそうです。が、まれにみる経済成長を遂げて、生活水準も賃金水準も日本よりはるかに高い。最近では、オーストラリアに「出稼ぎ」に行く日本人も多いそうです。


男女平等分野に話が移りました。女性の労働参加率は62%。男女賃金格差は世界有数の小ささだが、保育所はすべて私立で、料金が高く利用しにくく、それが女性の労働を妨げているそうです。また住宅事情が悪く、オーストラリア都市部の最大の問題だそうです。


「オーストラリア政府は、1984年に性差別禁止法を制定、そして連邦・州レベルともに女性に対する暴力防止政策を推進し、男女平等推進政策を支援する予算を設けてはいます。しかし実際には、シェルターや女性向けの公共サービスは資金不足です」と強調しました。


キャロラインさんは、ポルノ解禁、性産業解禁、尊厳死解禁も挙げました。ポルノ解禁の結果、オーストラリアの下級裁判所は、児童ポルノ容疑をかけられた男たちであふれかえっていて、その数は飲酒運転容疑と同数だそうです。


労働党は、男女議員数を4040という政策を掲げたそうです。また、アメリカの「エミリーズリスト」にならって女性候補に初期段階で寄付金を補助するという資金提供、訓練などを行うことも決めたそうです。


一方、比例代表制をとる上院では、性産業を代弁する女性がセックス党を作って議席を獲得し、性産業に有利な制度をつくってきたそうです。キャロラインさんの出身地メルボルンのあるビクトリア州では、2010年フィオナ・パッテンという女性が連邦議会に当選したそうです。最近、落選したそうですが、この女性は、長年、夫とポルノ配信業を営んでおり、ポルノ産業の業界団体会長も務めていたそうです。キャロラインさんは「彼女は2020年にビクトリア州の売買春の完全自由化を実現させた」と苦々しく語りました。


キャロラインさんの結論は、次のようなものでした。


「長所は、上院が比例代表をとっていること、リベラル・フェミニズムの努力や、労働党のおかげで、女性はオーストラリア政府のあらゆるレベルに進出し、男女賃金格差も非常に小さい。一方、問題点として、フェミニストの多くは管理職や高給専門職を代弁しており、労働者階級の女性が置き去りにされ、また、移民女性は性産業に集中しています。オーストラリアの白人男性はこの構造のもと、以前と同じような特権を享受しつづけているのです」


質疑応答の時間に、参加者のひとりで、オーストラリアの選挙を見てきたという杉本典夫さんが、こう追加してくれました。おかげで私の理解も進みました。


「オーストラリアの小選挙区制は、1回目に最下位だった人を落として、上位者にその票を分配します。それを、過半数獲得者が出るまで繰り返すのです。この方式は、小選挙区制の欠点である死に票が少ない制度です。少数意見が反映されやすい、サイレントマジョリティーの声を拾いやすい、と言えます」


岡田 ふさ子(楽しく比例制をめざす会



杉本典夫フェイスブック オーストラリアの総選挙-9 2022年6月7日

オーストラリア政府がつくった先住民向けビデオ「投票のしかた」(先住民族の主な21言語でわかりやすく伝えています。↑は英語。年配の女性先住民が主役なのも素敵です)


報告:「だれでも自由に意見を述べ合える男女同数の大磯町議会」by 岡田ふさ子 : FEM-NEWS (exblog.jp)

速報「ゾウに挑んだ1匹のアリ」(金子加代飯塚市議) by 岡田ふさ子 : FEM-NEWS (exblog.jp)

速報「女性ひとり議会が女性2人になってどれだけ心強いか」(伊藤由子・加美町議員) : FEM-NEWS (exblog.jp)

政党を選ぶノルウェーの選挙 : FEM-NEWS (exblog.jp)




by bekokuma321 | 2022-12-25 20:33 | アジア・アフリカ