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アリ・モリスの証言「売買春や性搾取は女性に対する暴力である」

1112日(土)、お茶の水「連合会館」で、イギリスのウェールズからやってきたアリ・モリス(敬称略)の講演があった。


アリ・モリスは、女性への暴力根絶のための深い知識とすぐれた業績を持つ。フィリア(FiLiA)ウェールズの「女性に対する暴力」キャンペーンリーダー。女性と少女の権利のために闘う「ウェールズの女性たち Merched Cymru」委員、フェミニストグループ「Swansea Bay Resisters」代表。


また、ソーシャルワーカーとして12年間、自治体で、女性への暴力専門コーディネイターを務めた経験を持ち、「北欧モデル・ナウ」のキャンペーン・マネージャーでもあった。


会場で配布されたアリ・モリスの略歴を読んで、疲れ気味だった私の背筋がピシッと伸びていくのを覚えた。



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▲パンフ右のトップ「Merched Cymru」はウェールズ語。「ウェールズの女たち」という意味


アリ・モリスは、苦しい体験を経ながらも、大学では2つの学位、さらにソーシャルワーカーの資格をとって、女性や子どもの権利のために闘い続ける道を選んだ。地元で、ストリップ・クラブの「ゼロ政策」(一軒も許可しない)をとるよう議会に働きかけ、被買春女性たちを支援するプロジェクトに資金援助を勝ち取ったこともある。 なんというパワーの持主!

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▲Sisterhood is Powerful and International! アリ・モリス(右)と通訳者 (2022/11/12)


以下、アリ・モリスの講演からかいつまんで紹介する(左下Moreをクリック)。







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フィリア(FiLiA )は、フェミニスト女性たちによる、女性の人権のための慈善活動団体だ。目的は「女たちの連帯をする」「聞いてもらえない女性たちの声を聞き、広める」「女性の人権を擁護する」


「女性の権利国際年次大会」を開いて目的を遂行してきた。その大会「FiLiA2022」は、先月、ウェールズの首都カーディフで開催されたばかり。過去最大規模となり、1700人以上が集まった。3日間、売買春、ポルノ、人身売買、イランの反乱、母性、レズビアン空間などの多彩なテーマのもと、スピーチ、討論、ワークショップ、音楽、語り合いが繰り広げられた。


イギリスは、性搾取に関して、「2009年警察・犯罪法」「2003年性犯罪禁止法」「2015年現代奴隷制禁止法」の3つの法律を持っている。


イギリスでは売買春は合法である。しかし公共の場での勧誘、車での物色、売春店の所有・経営、ピンプ行為(周旋)などの行為は違法である。カネを払って、強要されたセックスをすることは犯罪である。しかし証明は非常に難しい。


イギリスは、国連の女性差別撤廃条約CEDAWを採択している。その第6条は、「締約国は、あらゆる形態の女性の売買及び女性の売春の搾取を抑止するため、法律を含むすべての適当な措置をとるものとする」


これらの法制度は強力に遂行などされていない。


警察は法の遂行のため、ほとんど何もしていない。性を買う側を起訴などできていない。警察が動くのは、人身売買、移民問題、薬物売買がからみ、しかも証拠がある場合、または売春店が地域に極めて大きな問題と騒がれている場合である。売買春にいるほとんどの女性は、法的支援を得ていない。


例外は、地域に、女性とともに活動している「支援プロジェクト」がある場合である。「支援プロジェクト」には、民間慈善団体や地方自治体からのいくばくかの資金援助がなされている。しかし、中央政府からはまったく援助がない。


性的に搾取された女性を支援する目的の政府の政策や制度はない。よって、支援は、医療サービスを通すことになる。しかしその医療サービスは、まず最初に、性的搾取に関する質問をすることが多く、女性が「はい」と答えた場合、支援につながるか否かはわからない。


イギリスにおける売買春や性的搾取に関わる女性の90%以上が薬物やアルコール依存であるとされている。彼女たちを支援する地域サービスの対象やしくみに解決すべき問題がある。同様に、精神疾患、ホームレス、家庭内虐待など、被性的搾取女性たちに共通の問題も抱えているが、彼女たち特有のトラウマなどの困難に対する理解は十分でない。


2020年、フェミニスト運動家たちは、イギリスが「ピンプの楽園」にならないよう政府に呼びかけた。実際、毎年、何千、何万もの女性たちが、犯罪組織によって海外からイギリスに連れてこられ、性的奴隷状態に置かれている。


2018年に、性的搾取を伴う人身売買事件が212件発生した。しかし、有罪とされた事件は少なく、有罪とされても軽微な罰金刑で投獄されない。たとえばアリが住むサウスウェールズ州では、ピンプが起訴されたことは一度もない。


ロンドンなどでは、売買春の中の女性たちの約8割が移民女性。中国、東欧(とくにルーマニア)、アフリカの国々から・・・。売春店には出身国別の「メニュー」があり、出身国別に女性たちが別々の値段で書かれている。このような人種差別は唾棄すべきものだが、ポルノではすでに既成事実であることを忘れてはならない。


言語の壁と、移民という身分で、弱い立場にある彼女たちは、母国に家族を持ち、仕送りをしている。性産業から抜け出すすべはきわめて少ない。


イギリスでは14歳ごろから売春を始める女性が多い。彼女たちは貧しい家庭に育ち、児童養護施設や生活保護を受けている。虐待やトラウマを経験した少女たちは、ピンプや買春者にとっては格好の餌食となる。何らかの形で性的搾取を受ける女性の多くは、それ以前に次のような境遇に置かれている、という。


児童保護を受けたり問題家庭/ 薬物やアルコールの問題/ メンタルヘルスの問題/ 貧困/ 低い教育程度/ホームレス、または安定しない住まい


そもそも女性たちは、複合的な多重的な脆弱さの中に置かれてきたのだ。にもかかわらず、女性たちは、それが彼女自身の選択だなどとされて支援リストの末端に置かれてしまう。たとえば、彼女たちは朝早くから路上に出なければならないにもかかわらず、支援担当者は、面談を早朝にしたりする。結果、約束の時間に行けるわけがない。するとその女性は、待機リストから外される。ウェールズでアリが支援した女性は、ほぼ全員が薬物依存を抱えていた。薬物カウンセラーの面談予約を取ること自体、ほぼ無理だった。

  

家父長制は、女性を分断し、支配し、女性同士で争うように仕向け、売買春が女性に何をもたらすかを考えさせない。


路上で売春する女性たちは、性売買の最下層階級に、エスコート嬢はその頂点にいると考えられる。こうして分断された女性たちは、相互支援、友情、理解が必要であるにもかかわらず、それらをつむぐことなどできない。


コロナ・パンデミックのもと、上位の女性たちは、買い手が少なくなったため、下位の女性たちを市場から抹殺した。女性たちの境遇は、ピンプなど男たちや、家父長制のせいであるにも関わらず、自分たちのせいであるかのように仕向けられている。


とはいえ、イギリスでは変化が起こりつつある。この変化の中心には、フェミニスト運動がある。大いに世間を騒がせた。FiLiA Nordic Model Now(アリは元キャンペーン・マネージャー)のような組織だ。「売買春や性的搾取は女性に対する暴力である」という断固とした共通認識を持って闘ってきた。


イギリスには「女性や少女に対する暴力」根絶法があり、すべての地方自治体は女性や少女に対する暴力を根絶する方策を持たなければならないとされている。問題は、その法の解釈やその支援が地域の裁量に委ねられていることだ。加えて「セックスワークは真の仕事だ」という誤ったキャンペーンがある。


それらに対抗して、FiLiA は、トラウマ理論を踏まえ、事実に基づく、サバイバー主導のツールキットを開発した。イギリスで初めてのことだという。ツールキットは、売春や性産業から離脱するためにつくられた。地域の女性や少女を助けたいと願う地方自治体や組織にとって、貴重なリソースとなるはずだ、とアリは語った。

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以上、アリ・モリスの話したすべてを日本のフェミニストたちや関係者に聞かせたい、と思った。野放しの日本のポルノ業界、性産業。買春を容認するどころか奨励してるかのような日本の行政、議員たち、学者たち。何よりも優先すべきは、性搾取体験を持つ少女や女性たちが本音で語れる場をつくることだろう。そして、彼女たちの話に基づいて、支援サービスを充実させる予算を増やし、ゆくゆくは買春処罰への法制度を進めていくことではないか。


本講演会は、「ポルノ・買春問題研究会」を中心に、「買春社会を考える会」も関わった。加藤夏樹・キャロライン・ノーマ両通訳者の尽力には心から感謝申し上げる。



Police investigate threat to burn venue hosting FiLiA Women's Rights Conference in Cardiff | ITV News Wales

https://www.facebook.com/MerchedCymru/posts/filia-comes-to-cardiff-in-2022-the-biggest-feminist-conference-in-europe-and-the/345910967307022/


【更新 2022/11/15 1030 & 1700】


by bekokuma321 | 2022-11-15 00:11 | ヨーロッパ