2022年 10月 30日
医療保健政策にもっと女性を
コロナが世界に猛威を振るい始めた2年前、世界保健機関WHOから左のようなポスターがネットに流れた。
「看護師と助産師に投資せよ、健康のため、男女平等のため、経済発展のため」
さらにWHOは「看護師・助産師の国際年2020」を新設し、こんな提言を世界に発した。
「上司から敬意を払われていないと思う看護職36%、自分の意見に耳を傾けてほしいと思う看護職32%」
「看護職に影響を与えるジェンダー間の賃金格差を改善せよ」
「国の保健政策決定の場に、看護職の視点を取り入れよ」
2年前、欧米は、イタリアをピークに感染・死亡数が高かった。麻生太郎財務相は、「日本は民度が違う」などとあざ笑った。
時は流れ、日本の感染者数は世界最高水準になった。慢性的な人手不足で、看護職の長時間労働が続く。看護師月収はOECD平均よりも月8万円以上も低いと報道されている。何より政策の場の女性の少なさは驚愕ものだ。ここまで女性を排除しておいて、どうしてジェンダーの視点を入れられよう。
コロナ関係だけ見ても、日本感染症学会理事18人の全員が男性である。
厚生労働省「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」の12人では、女性は2人。厚生労働省「新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード」18人では、女性は2人。内閣官房「新型インフルエンザ等対策有識者会議 新型コロナウイルス感染症対策分科会」の16人でも、女性はたったの2人なのである。
こんなお寒い政策集団ゆえ、現場は悲惨だ。ロンドンで助産師をする小澤淳子さんは私に怒りをこめて語った。
「日本ではコロナ陽性の女性が、他に理由もなしに帝王切開されています。陽性女性の帝王切開率65%以上なのです。陽性になる前に出産を、と陣痛誘発を受けさせられています。女性が陽性のとき生まれた赤ちゃんは、母子分離をさせられます。WHOなどが、母子分離は母親や子どもへの弊害が大きいので反対声明を出している、というのに、です。女性のからだに関して女性自身が決めるという国際基準が全く尊重されていないのです」
他国やWHOをあざ笑っている場合ではない!
■「世界の看護2020」(WHOが、国際看護師協会、グローバルなNursing Nowキャンペーンと協力し、各国政府および幅広いパートナーの支援を得て作成した冊子の和訳)
【注:上記は「叫ぶ芸術 ポスターに見る世界の女たち第110回 看護師と助産師に投資を(WHO)」(I 女のしんぶん 2022/9/10)を元原稿に変更を加えたもの】