2022年 10月 29日
ニュージーランド女性過半数国会に比例代表制あり
10月25日、ニュージーランドは女性が1議席多い女性過半数国会となった。ニュージーランド史上初のことだ。
その5日前(10月20日)、労働党のトレヴォ―・マラード(男性)は、国会で辞任演説を行い、国会議員の職を辞した。マラードは、諸般の事情から国会議員を辞してアイルランド大使に就任することが決まっていたためだ。
そのトレヴォ―・マラードの議席を埋めた国会議員は、同じ労働党リストに登載されていたソラヤ・ぺケ・メイソン(女性)だった。これによって、ニュージーランド国会は男女同数となった。比例代表制選挙ならでは、の帰結だ。
さらにもうひとつ。ちょうど同じころ、労働党のGaurav Sharmaが国会議員を辞任したが、彼は、マラードと異なって選挙区選挙で当選した議員だ。そのため彼の議席は、12月に予定されている補欠選挙によって決まるという。
よって、ニュージーランドは、実に静かに穏やかに、女性が1議席多い女性過半数国会の誕生となった。
ニュージーランド・ヘラルド紙は、これを機に、長く苦しい女性の政治参加の歴史を振り返っている。1893 年、女性参政権を求める激烈な闘争を経て、女性が投票権を獲得。しかし、女性が立候補するまでには、さらに26年もかかった。エリザベス・マコームズが初の女性国会議員として宣誓したのは、さらに14年後の1933年だった。
女性が国会に増えてきて、育児・家事など生活と国会業務のバランスが課題とされていった。国会議員の授乳、国会の育児ルーム、「思いやり休暇」(子どもの世話のため早く帰宅できる)など新制度が次々にできていった。
ここで、ヘラルド紙が書き落とした重要な点を指摘したい。
それは、ちょうど、日本が「政治改革」の喧騒の下、中選挙制度から小選挙区中心の並立制に変えたころ、ニュージーランドは、小選挙区制選挙から比例代表中心の併用制に変えたことだ。
比例代表制中心の選挙制度に変わったことによって、ニュージーランド国会は、女性はもちろんマオリ族など先住民族の代表がどんどん増えた、のである。
たとえば首相ジャシンダ・アーダーンも、労働党リストに載って20代で国会議員に初当選した。彼女は社会主義青年部の活動家だった。比例代表制選挙では、選挙区の各政党がつくる候補者リストの上位に登載されると、当選にむすびつく。お金も名声も地位もない若者でも当選が可能となる。選挙運動は候補者個人ではなく政党中心だから、候補者は、日本のような反社会的団体からの応援やいかがわしいカネを使った選挙運動など必要ない。その結果、女性や若者やハンディを持つ人も候補者に増え、議員にもなるのである。
【写真:駐日NZ大使主催「女性参政権150周年記念の夕べ」 にて接写】
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