2022年 09月 04日
女性を尊重しない医療は女性の声を奪う(1)by 小澤淳子
●女性の選択肢が少なすぎる日本のお産
8月20日(土)シャキット富山35主催の三井マリ子さんの勉強会「やさしく楽しく学ぼう 女性の政治参画 ー婦選運動から候補者男女均等法までー」は、ウィットと希望にあふれる催しでした。
100年以上前、ノルウェーの公娼制廃止と市民運動を日本に紹介した久布白落実とわたしたちは、今もつながっている、日本はもっと変われる、と勇気が出ました。三井さんが無茶ぶりで参加者に「次の地方統一選いかがですか?」と振ると「用意しています」、「サポートにまわります」などの声があがり、私も「自分にできることは?」と考えさせられました。
つい気持ちがあふれ出て「この社会が女性の力を奪い続けている根っこには女性を尊重しない医療がある」と発言しました。もっと知りたいという声がありましたので、この場で詳述します。
私はイギリスで資格取得した助産師です。イギリスに来て、日本の産婆(SANBA)文化が有名なことに驚きました。日本の助産師資格制度はイギリスより長く、産婆は自律した職業として尊重されていました。戦後直後まで、日本の産婆は優れたスキルを持ち女性を自律して支えお産を安全かつ尊厳ある体験にする役目を担っていたのです。
時代は変わり、いま日本の大多数のお産は、産科医主導・医療施設で行われます。日本のお産の医療化と、日本女性の政治進出の遅れには関係がありそうです。日本の医療介入満載の産科医療は、女性を黙らせる大きな鍵のように思えるからです。
ニュージーランドやイギリスの女性たちは、医療施設以外でお産する選択肢を持っています。お産のケアを提供する主な医療者は、助産師です。助産師は正常の妊娠・お産・産後の専門家であり、女性の選択とからだを尊重するプロです。お産の正常と異常を見極め、いかなるお産もその女性と家族の生活の一部であるとみなします。ほかの医療者と連携し、闇雲で根拠のない医療介入には強く反対します。
お産は、女性の体験の中でもっとも力強く人生を変えるものでしょう。お産が「自分の選択を尊重された」ものか、それとも「専門医療者のなすがまま産ませてもらう」ものか、後の女性自身のからだのとらえ方や育児への態度に影響します。
自身の不安が認められ、からだにおこることを自分で選択したと感じたとき、女性はからだの声を取り戻し、声を上げるようになり社会的になります。

ニュージーランドや欧州では、1970年代、お産の選択肢を増やそうという女性たちと助産師に、連帯が起こりました。医師・助産師・女性のヒエラルキーを平らにし、産科医療の中心に女性と赤ちゃんを据えるーーーそのためには、女性の声を反映するシステムが必要だと考えたのです。
助産師主導の産科ケアには、なによりも「強い」助産師を育てる教育が必要です。助産師のみの訓練を受けた助産師は、看護資格を持つ助産師より「強い」とされていますが、そうした助産師になる道(Direct Entry)を持たない国、それが日本です。OECD加盟国では日本だけです。
日本では、多くの助産師が産科医に雇われていて、助産師と産科医は対等な関係になれません。助産師が開業する際、嘱託医が必要とされていることも問題です。 (つづく)
小澤 淳子(助産師、ロンドン在住)
【写真上】筆者の小澤淳子助産師
【写真下】ロンドンのクイーンシャーロットアンドチェルシー病院。ヨーロッパで最も古い産科病院の1つ(小澤淳子提供)
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