2022年 06月 16日
アダルトビデオ(AV)出演被害防止・救済法に異議あり
アダルトビデオ(AV、世界ではポルノビデオ)に出演する人の被害を防ぎ、被害者を救済するためとされた法案が、15日参院本会議で可決した。
4月に突如与党から出た法案の素案に、5月初め、被害者(ほとんど女性)から相談を受けてきた主な団体は反対していると聞いた。その後すぐ、自公から改正案が出され、5月25日、衆院で、カネで性交契約を結べることを定めた新法案が提案され、その日ただちに可決された。「AV出演者の重大な被害を防止するため」と称して。なんと拙速なことよ。
AV業界に引き寄せられる女性たちには理由がある。食っていけない、家庭の虐待で居場所がない、地方格差、希望のない毎日、学校や家庭やメディアが教え諭す「女らしさ」「男らしさ」。突き放される性暴力被害者。
よりどころのない女性たちの心の隙間に、その道のプロはねらいをつける。言葉巧みにスカウトされた女性たちは、「グラビアタレントになれるかも」と、契約書に“自らすすんで”サインしてしまう。屈辱的性行為を撮影された動画はネットで世界に拡散され、心身共にズタズタにされる。自殺する女性も多い。
15日、成立したその条文には「撮影時の性交・性的虐待禁止」はない。「性交を合意させる契約は無効」もない。
条文にあるのは「撮影時、性交を強制してはならない」だ。つまり、撮影時の性交は、強制でなければいいのである。
「作品制作から販売に至るまでの適正化」を求めて活動するという建前の「AV人権倫理機構」(AV業界で作った組織)のホームページには、提言と称して“高潔”そうな心構えが並んでいる。15日に成立した法律を先どりしたような表現さえある。
かつて児童ポルノ禁止法を審議したのときのように、AV産業を、まさか「日本を代表する輸出文化産業」だから、「産業育成の面からも」「表現の自由の面からも」、「守られなければならない」と考える国会議員がいたとは信じたくない。
女性代表のきわめて少ないこの国の政治が、こんな歪んだ法律をつくったのだろう。問題の本質は、カネで性行為・性的虐待を買うことを是とする社会を望むか否かだ。どんな社会にしたいか、価値観が問われている。
【写真:朝日新聞 2022.6.15】
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