2022年 02月 23日
高木澄子著『性差別、人身売買、性暴力』(生活思想社)を読んで
「国際婦人年をきっかけとして行動を起こす女たちの会」という名を知っているだろうか。のち「行動を起こす女たちの会」と呼称が変わって、1995年閉会した。
1970~80年代、日本の性差別や性別役割分業に異議申し立てをし続けた女性団体だ。 そのメンバーの一人だった高木澄子さんが、2021年『性差別、人身売買、性暴力』(生活思想社)を出版した。

私もメンバーだったので、一緒に行ったいくつかの抗議活動を思い出しなつかしさでいっぱいだ。朝日の記者だった松井やよりさん(故人)と、「買春ツアー反対」のビラをまいて、フィリピンなどに買春旅行に飛ぶ日本男性集団に抗議したこともある。
日本国内の性差別に怒った高木さんの目は、騙されて日本にやってきて性搾取されるアジアの女性たちに注がれるようになる。
ついにフィリピンに移住。高木さんは3年間、マニラで女性を支援するボランティアに従事。日本男性との間に生まれた子どもともども遺棄されたフィリピン女性たちが自分の力で生きていけるようになるための手助けだ。
帰国した高木さんは、次に外国人被害女性を受け入れる「女性の家HELP」の扉をたたく。ケースワーカーとして人身売買の被害女性たちを保護し、帰国につなげる仕事にまいしんする。
こうした高木さんの長年の体をはっての女性支援活動をまとめた記録が、この『性差別、人身売買、性暴力』だ。
JFC(Japanese-Filipino-Children、日比国際児)の実態について、私はこの冊子で初めて学んだ。おのれのセックスによって誕生した命に対して養育費を支払おうとしない日本男性の多いこと。彼らの無責任さ、不道徳さ、卑劣さには言葉がない。
日本男性の買春行動は、他国に比べて非常に多いことも、この冊子で知った。2000年、厚生省研究班の調査結果だという。
「過去1年に買春を経験した18~49歳の男性」は、日本13.6%、フランス1.1%、イギリス0.6%、オランダ2.8%、ノルウェー1.8%、スペイン11%、アメリカ0.3%。一方、「過去1年間に週2回以上セックスした男性」は、日本9.8%、フランス53%、イギリス28%、オランダ43%、アメリカ39.5%。
カネで女性の性を買うことを許容する日本社会は、国内に性差別を温存するだけではない。「性差別を是正できないでいる同一線上に、アジアの女性たちへの差別があります」と高木さんは言う。性差別撤廃は最大の政治課題だと私は思う。1人でも多くの議員や政治家に読んでもらいたい。
■Theliving hell of young girls enslaved in Bangladesh's brothels | Globaldevelopment | The Guardian