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川越市元市議によるセクハラ被害女性、勝訴@さいたま地裁川越支部

「セクハラの訴えは大変かもしれないが、自分の環境を変えるために踏み出してほしい」


元川越市議会議員によるセクハラを訴えて、113日、勝訴した川越市の女性職員が女性たちに向けて語った言葉だ(埼玉新聞2022114日)。


さいたま地裁川越支部の裁判長は、「事実がないのにハラスメントを受けたと公表されて名誉を傷つけられた」と女性に損害賠償を求めた元市議の訴えを棄却し、彼に110万円の支払いを命じた。よかった、よかった!


女性に対するセクハラは、社会的地位や権力をかさにきた男性の力の誇示によるものが多い。この事件は典型的だ。


元市議の男性は当時8期目だった。この「8期」という数字は、日本の議員の世界では絶大な意味を持つ。選挙で何回当選したかを表し、期数が多くなると「エライ」とみなされる。8期となると重鎮中の重鎮であり、まわりからは「センセー」とちやほやされ、何をやってもたいがい大目に見られる、そんな身分である。


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一方、女性は、川越市という地方自治体の公務員だ。しかも議会局に移動してきたばかり。他の部署とは違う議会局の仕事に不慣れな30代の女性。職場において男性と女性の間には力の差があるのが普通だが、この2人の場合、その力の差はあまりにも大きい。


元市議は、この力の差を背景に、女性職員に「このくらいやったってどうってことあるまい」とセクハラを繰り返した。2018年4月から8月までで19回に及んだという。どれだけ苦しんだことだろう。


性被害を訴えることは、他の被害を訴えるのとはまた別の苦しさがともなう。その苦しさを克服して、やっと声をあげても、それを裁判で立証するのはさらに困難だ。そのうえ裁判の過程で、二次的セクハラが容赦なく襲いかかる。


元川越市議は、「セクハラなんかやっていない」「自分の名誉を傷づけられた」と、女性職員を嘘つきよばわりした。あげく、名誉棄損で彼女を訴えたのである。嘘をついてまで自らの性被害を公にする人などほとんどいないと思うのだが、実は、これは加害者のとる常套手段だ。


もうひとつ加害者がとる常套手段がある。それは「ハニートラップ」攻めだ。この事件でも提訴後、YouTubeで流されたハニートラップをしかけたかのような動画に元市議が出演していて、女性職員のプライバシーに関わることまで公開されたという。


被害者の女性職員を支える「ハラスメントを考える会」の川越市の伊藤正子議員は、こう支援をよびかける。「私たちは、埼玉西部地区女性議員で、川越市議会に申し入れをしてから、昨日の勝訴判決が出るまで、精一杯応援してきました。元市議は即日、控訴しましたが、最後まで、彼女を支えていきたいです」


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控訴されたので、まだまだ、川越市女性職員の大変さは続く。しかしながら、彼女が言ったように、たとえ大変であっても、自分の環境を変えるためには、被害を訴えることしかない、と思う。


ここまで書くのにずいぶん時間がかかった。都議だったころ、私は都議会委員会室で、都庁の廊下で、都議会議員控え室でセクハラにあって悔しい思いを募らせた、そんな日々が思い出されたからだ。


【写真上:川越市ホームページより。下:『セクハラ110番』(三井マリ子著、集英社)】



川越市セクハラ裁判年表(PDF)

上司と部下間のつきあいに関する米大学の基準(PDF)

「日本政府よ拘束力のない勧告ではダメだ」(ILO条約案への声明) : FEM-NEWS (exblog.jp)

ジェンダーによる暴力・嫌がらせ禁止条約制定へ(ILO): FEM-NEWS (exblog.jp)

『セクハラ110番』(三井マリ子著、集英社)刊行にあたっての手紙 (pdf)


【更新 2022/1/16】



by bekokuma321 | 2022-01-14 23:18 | 日本