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この本はジェンダー平等へのガイドブックだーー書評『さよなら!一強政治』(時永裕子)


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フェイスブックの読書会「北欧を読む会」(王貞月主宰)で、この本に出会った。タイトルは『さよなら!一強政治』サブタイトルは「徹底ルポ小選挙区制の日本と比例代表制のノルウェー」。


日本とノルウェーを比較しながら、選挙と政治、民主主義が生活や教育でどう展開されているのか、具体的に分かり易く書かれている。この本を読み終えた私は、ノルウェーを一つの手本として日本を「誰一人取り残さない」国へと変えたい!そんな思いを強くしている。


第Ⅰ部「小選挙区制の日本」の第1章は「喜劇のような悲劇」。日本の選挙戦を描いたドキュメンタリー映画「選挙」(想田和弘監督)を三井さんがノルウェーの友人に見せるところから始まる。


日本の選挙のおかしさがノルウェー人の感想や反応から語られていく展開に一気に引き込まれた。


「そうよ。おかしいよねー、日本の選挙」とつぶやきながら読み進めて行くと、「小選挙区比例代表並立制」が国会でどのように作られ、日本の政治はどうなったのか、密室密談権力の深淵や政治の舞台裏が三井さんの立候補経験も含めて語られる。


「小選挙区制」は「政治改革」として導入された? 日本で初めて非自民の連立政権ができた時の、あの感動は何だったのか? 疑問が渦巻いた。そして、小選挙区制は民意を反映しない、死票が多い、多様性を実現できない制度だという思いを強くした。


第Ⅱ部「比例代表制のノルウェー」の第1章「ノルウェーの若者はこうして鍛えられる」では、県立高校で行われる模擬選挙(1980年代から始まったらしい)のルポに圧倒された。


若者の政治への関心と関わりの深さ、国を挙げて若者を巻きこむ選挙運動、実際の選挙への影響の強さなど、日本では考えられないノルウェーの若者たちの姿に心躍った。


3章、4章では、虐げられていた女性たちがどのように政治に参画していったのか、その闘いの歴史が、生き生きと活躍する現在の姿とともに描かれていく。


女性が最も住みやすい極北の町ヴァドソー市の話には特に引き込まれた。「自治体男女平等指数」がトップのこの町は、議員の40%は女性で、行政のトップにも多くの女性がいる。男女賃金格差が少なく、公務員に女性が多い。政治に女性が参画する過程で、多様な人々の人権を守る法律が作られたこと、労働組合の力が大きいことに、なるほどと納得した。


酪農家のシングルマザーや、18歳の高校生議員、先住民サーミなど、ごく普通の市民が政治や行政のトップで当たり前に活躍している姿が眩しいくらいだった。


比例代表制の国ノルウェーでは、政治は日々の暮らしと直結し、政治は市民のために市民が動かす。一方、わが日本は、「候補者男女均等法」ができても政治分野でジェンダー平等が遅々として進まない。「小選挙区」という選挙制度の弊害を痛感する。政治と選挙のしくみは、女性やマイノリティが社会で活躍できる鍵だと思う。


この本は、ジェンダー平等の実現をめざす私たちにとって、まさに社会変革のガイドブックである。


時永裕子(ワーキング・ウィメンズ・ヴォイス代表)



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by bekokuma321 | 2021-06-26 09:35 | ノルウェー