2021年 05月 17日
参院選広島再選挙を無所属でたたかって(さとうしゅういち)
4月25日、広島で参院の再選挙がありました。河井案里元被告人が買収罪で有罪が確定し、当選が無効となったことに伴うものです。
私は、「原発ゼロ」「貧困を防ぐ」「小選挙区制廃止」を掲げ無所属で立候補。結果は20848票、得票率は2.7%。供託金が没収されたことは痛恨の極みです。
河井元被告人が逮捕された2020年6月に立候補の意向を固めた私は、野党や市民運動の同志に伝えました。瀬戸内海で広島と直結する伊方原発の危険性が注目されるなか、広島県民は、「原発ゼロ」という候補者の選択肢を持つべきだ。それに札束で人々を脅して作られた原発は金権政治の象徴であり、河井事件の広島からノーを、と考えたからです。
他方、ずっと後に決まった野党候補陣営は、原発や政治改革に具体策はありませんでした。野党候補陣営に「伊方原発再稼働ノー」だけでも飲んでもらえれば一本化に応じようと接触しました。しかし、側近の方から「候補は具体的な政策がわかるような人じゃない」と言われて驚き、立候補を最終的に固めました。
「政策ではあなたが一番よいのだが」という声は多かったです。しかし、勝てるのはただ1人という小選挙区制挙では歯が立ちませんでした。無所属候補は、ポスティングのビラ1枚出せない、政見放送には放送局収録のものしか使えない(公認候補は政党が前もって作った動画を使える)など、政党の候補に比べて圧倒的に不利でした。
この広島選挙は、あれだけメディアで騒がれたにも関わらず、33%という驚くべき低投票率。3人に1人しか投票していません。しかも当選者に投じられた約37万票は全投票数の48%にすぎず、約40万票という膨大な死に票を生みました。
「与野党とも代わり映えしない主張だった」(広島市内50代男性)「野党の公認候補も伊方原発再稼働にノーと言わなかった」(県北部30代女性)。マスコミもJCも政策討論会を開きませんでした。7割近い人が寝ていたのは、政策論争のなさゆえでもあるのです。野党候補の当選は、野党への支持が伸びたというより、前代未聞の買収事件の結果、与党は支持者を固めきれなかった、というのが実態です。
また、私が辟易したのは、長年、平和運動などで一緒に行動した同志から投げつけられた言動の数々です。「野党の票を割る貴様は、俺の地域に二度と出入りするな」などと電話してきた方。私が集会に出ると「俺は帰る」と怒鳴って会場を退出した団体幹部の方。
しかし、それでも、「憎むべきは彼らではなく、彼らにこういう言動をとらせている制度がおかしいのだ。小選挙区制は廃止しかない」と思いました。
小選挙区制である限り、当選に最も近い1番手は与党公認候補です。その1番手を抜く可能性がある2番手は野党統一候補です。広島は原発関連企業労組の影響力が強く、野党共闘となると、穏やかな政策にまとめざるをえなくなります。そのため、原発反対運動仲間でも表立って「伊方原発再稼働ノー」を言えなくなります。さらに小選挙区制の下では、3番手以下の弱小候補は、勝ち馬になれそうな野党候補にとって、「票を割る」邪魔者以外のなにものでもありません。それが、同志によるハラスメントになって現れるのです。
最後になりますが、介護職員である私が「介護・保育・医療現場労働者の抜本的処遇改善」をかかげているのをネットで見て「あなたに投票した」と多くの若い女性の方々から激励をいただきました。実際に出口調査によると、わたくしの得票の多くは、若い女性からでした。
こうした政策を重視する若手・女性の方の声を政治に届けるためにも、小選挙区制を廃止して多様な民意を反映する比例代表制中心の選挙制度に移行すべきだ、と強く思います。
さとう しゅういち(参院選広島再選挙候補)
【写真上:おカネをかけない選挙に徹するため選挙カーもシンプルに。上:街宣途中、原爆慰霊碑に参拝するさとう候補(さとうしゅういち提供)】
【更新 20210518 写真説明のミスを修正しました】