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世界は買春禁止へ

9月12日、渋谷勤労福祉会館で学習会「岡村発言が見せつけた買春容認社会」があった。内容のポイントを報告する。

「性と政治」瀬野喜代 
20年間私は東京都荒川区議会議員だった。最後の議会質問で幼児期の性教育の無さを問題にしたが、区側から前向きな答弁はなかった。議会を辞し、保育園の子どもたちが見られるような性教育に関する紙芝居を作ろうと思案していた頃、岡村隆史の買春発言があった。

岡村発言は最低の差別発言だ。しかし抗議のネット署名が1万2万超えても何の変化もなかった。韓国の女性運動が売春婦の作業所などに取り組む姿を知っていた私は、日本の女性運動はこうした問題にどうかかわってきたかを考えた。

私が全国フェミニスト議員連盟に入ったのは、男らしく女らしくを押しつけるトンデモナイ男女共同参画条例が荒川区にできることに反対していた2004年だ。当時、ジェンダーバッシングは全国各地で起こっていた(注)。それが性教育を萎縮させ、良書は今や絶版に。この全国フェミニスト議員連盟の会員MLがきっかけで、岡村発言に抗議をするリレートークが始まった。

「NHKと女たちの闘い」中嶋里美 
1975年、「国際婦人年をきっかけとして行動する女たちの会」が創設された。国連が初めて国際婦人年(今の女性年)を宣言し、メキシコで第1回国際女性会議が開催された。この世界の動きに呼応したものだった。

国会議員の市川房枝さん(無所属)や田中寿美子さん(社会党)も会員で、私たちはNHKに対し27項目の要求書を出し、NHK会長と交渉した。ニュースでは常に女は男の補佐役であることや、カメラパーソンに女がいないこと、歌謡曲も男目線の歌ばかり。当時、NHKで行われた話し合いに出てきたのは、会長以下、男ばかりだった。

ハウス食品CM<私つくる人 僕食べる人>が性役割分業の典型だと抗議をした。ハウス食品と交渉してこのCMをやめさせることができた。

岡村隆史さんをNHKはいまだに降板させていない。男性が多く、決定機関に女性がいないことが問題だ。今回もNHKに電話をして「会長がいつも男はおかしい、2年ごとに男女が交替するべきだ」と要求した。すぐに行動することが大事だ。
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▲NHK会長への女たちの闘いを語る中嶋里美(元所沢市議)





「オーストラリアの合法買春状況とメデイアの沈黙」キャロライン・ノーマ
オーストラリアでは、性売買産業が正当な産業として法的に位置づけられている。国連から女性差別撤廃条約違反と指摘された。従事者には移民女性が多いが、本国人と同等の労働条件で働いているとされる。売春婦が殺される事件のときは、職業を明かすな、とされる。

だから、オーストラリアで、岡村発言があったとしても抗議する女性団体はほとんどないだろう。それどころか、性産業のオーナーが臆面もなくTVに出て政治家と対談したりしている。

性売買は、一産業として扱われているだけでなく、毎年拡大している。しかし、性産業における被害者は無くならない。たとえばメルボルンの店では女性が無理やり相手をさせられ、レイプされ、自殺を図る事件があった。

非合法店は登録店の5倍と言われ、見かけはどちらかわからない。国民は無関心で、性売買産業推進団体に公的補助金が交付されている始末である。日本で「売春防止法」がまがりなりにも存在しているので、買春を問題にする反対が可能となる。性産業を拡大させないために「売春防止法」は価値のあることだ。

「売春防止法を初めて読みました」増田都子
売春防止法 (1956年成立)第1条で、売春が人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良の風俗を乱す…(略) と規定している。これは素晴らしい。

第2条で、「売春」とは対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいう、と規定している。だから性交(いわゆる本番)以外は合法とされる。後にできた風俗営業法の下、性売買産業は3兆円市場になっている。

1963年「千葉の町おこし」に、風俗街が復活したと地元の教員から聞いた。性産業従事者のHPには自慢話が掲載され、飛田新地を訪れた外人のレポートも読める。買春禁止法をつくるべきだ。

「私がポルノと買春に反対する理由」森田成也
1999年、角田由紀子弁護士などが主となって、ポルノ買春問題研究会が発足した。ポルノと買春に反対を掲げている。きっかけは、AV監督バクシーシが女犯シリーズでAVに説明なしで素人を出演させたことが問題になり、暴力ポルノから盗撮ポルノへと過激化したことである。

セックス・ワーク論は1990年から日本で盛んになった。当時は、宮台真司や宮淑子が主に唱えて、上野千鶴子も加担していた。「オランダのように成熟した市民は合法化を問題などしていない」というような論調だった。2018年ジェンダー法学会シンポジウム「性売買と人権・平等」に、中里見博さんと要友紀子(SWASH)さんらが招かれた。

実態は、先程キャロラインさんが発言したように、合法化国は悲惨な状況である。

しかし、ドイツでは買春禁止法を定めた北欧モデルを目指そうと政治家などで議論が始まっている。又、オランダも飾り窓の観光産業の見直し論が起こっている。

「江戸文学における吉原美化論について」マスキオ・パオラ 
日本の私立大学で近世の日本文学を専攻している。吉原を描く文学で遊女が屈辱的な目にあっていることを問題視せず、ただ持ち上げるだけの「日本文学の学会」に反論したいと思った。異論を唱えようとする前に制止されて、言うことができない雰囲気がある。女性差別が続いていて現代に通じる問題なのだから私は批判的に読む必要があると思う。しかし、売春があって当たり前だと疑いをもたない学生が多い。

「北欧モデル」三井マリ子
買春禁止の北欧モデルはスウェーデンが最初。ノルウェーでは10年間議論して、買春禁止法を制定。ノルウェー人は国内だけでなく外国でも買春を禁止されている。性を売る側は合法。しかしその行為はワーク(労働)ではない。売春婦の居場所作り、再出発を促すことに国家予算が投じられている。2016年、フランスでも買春禁止法ができた。「北欧モデル」には4つの柱がある。性を買う者は犯罪者/性を売る者は合法/性を売る場を抜け出すための支援/買売春に対する偏見の除去や社会の気づき促進

参加者から
・吉原、非正規雇用、漫画での女性の扱い方など、男の神話に過ぎない。漫画の絵を担当しているが、原作者も編集者も男である。性差別は正していきたい。
・慰安婦問題を大学院で学んだ。売買春に肯定的な社会で変えるのは難しい。でも、奴隷制も無くなった。性搾取も無くせる日が来ると希望を持ちたい。
・カナダ人。 日本の子ども向け番組の多くで男は強く、女は弱いと決め付けているのは問題だ。洋服も女の子は娼婦のような可愛らしさが強調されたもの。
・性の問題をどう考えればいいか行き詰まっている。日本の妊娠中絶は女の体が粗末にされていて世界から見て遅れている。性産業でアルバイトしている中身を表明する学生もいる。
・13歳。援助交際をしていると噂のある同級生がいる。

瀬野 喜代(元荒川区議)

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【注】 「性と政治」年表 (敬称略)
1997・3 足立区議会中学での国歌斉唱不起立を問題視。増田都子処分。  
1999・7 男女共同参画社会基本法成立
2000・2 都議会で土屋たかゆき、東京女性財団作成「ジェンダー・チェック」は不適切と指摘。ジェンダーフリーは日本の伝統を否定し、トイレや更衣室も男女で同じにするとキャンペーン。
2001~2006 小泉構造改革 格差拡大 非正規雇用増大
2002・4 国会で山谷えり子が日本女性学習財団「未来を育てる基本のき」を行き過ぎと発言。産経新聞が一面で報道
2002・6 山口県宇部市男女共同参画推進条例「男らしさ女らしさの尊重」
2003・7 都議土屋たかゆき 七生養護学校の性教育を問題視。都知事石原慎太郎「あきれはてる」産経新聞キャンペーン。
2009 東京地裁で教員らが勝訴
2003・10・23入学式卒業式日の丸起立、君が代斉唱義務づけ通達
2003・10 荒川区で区長が今の男女共同参画推進基本計画は問題があり男女共同参画社会条例審議会のなかで検討するとして、林道義・高橋史郎・八木秀次による審議を設置。弁護士会推薦の委員が辞任。1年後、公明党区議団が反対に変わり、取り下げ。
2004・3 館長三井マリ子、豊中男女共同参画推進センター雇止め(2011最高裁勝訴)
2008・11 「こどもの貧困―日本の不公平を考える」 国立人口問題研究所 阿部彩 
2008・12 年越し派遣村
2010・3「出会い系のシングルマザーたち―欲望と貧困のはざまで」鈴木大介
2010・10 「神待ち少女」黒羽幸宏
2015・8 「下層化する女性たち 労働と家庭からの排除と貧困」小杉礼子・宮本みち子

【更新 2020.9.19 】


by bekokuma321 | 2020-09-18 11:23 | 北欧