2020年 07月 30日
北欧のパラドックス(男女平等世界一アイスランドの性暴力)
アイスランド。世界でもっとも男女格差のない国だ。
「女のゼネスト」の度重なる成功、1980年には女性大統領誕生、90年代には女性党から国会議員を輩出、首相は2人目の女性で「緑の党」のフェミニスト(44歳、1人目はレズビアンを公表している元客室乗務員だった)、国会議員の38%を女性が占める・・・・・・。
ところが、アイスランドの市民運動団体「暴力のない生活」のシグルン・シフ・ヨ―エルスドッティルは、アイスランドのかかえるDVや性的虐待の多さを見逃してはならないと、警告する。
制度としての平等は整ったものの女性への暴力はなくならない、と彼女は力説する。その根底にある「男らしさ」とは? 男女平等社会を願う私たちにとって他人事ではない。「フェミニストの楽園の女性嫌悪暴力」(ForeignPolicy 2020.7.17)からポイントを訳す。
【新型コロナの蔓延で、DVが急増している。アイスランドでは、ロックダウン後わずか1週間で女性2人がDVで殺害された。世界的には、女性への殺害の38%は男性パートナーからのDVによるとされているが、アイスランドは50%にのぼる。
アイスランドには性暴力も多い。生涯に強姦・性暴力を受けた女性は4人に1人に上る。ヨーロッパは10人に1人である。
北欧のパラドックス、それは、男女平等の進展が、男性の反感に火をつけ、イライラを増幅させて、身体的暴力に走らせることである。身体的暴力は、男性が容易に優位にたてる行動様式だからだ。この手の暴力の爆発は、男らしさを傷つけられたとする感情から湧き出るものであり、心の奥深くに根差しており、行政が太刀打ちできるものではない。
アイスランドでは、こうした暴力は法的システムによって擁護され強化されており、そのことが、こうした行動を容認したり、弁解したりにつながって、男性加害者の視点で共有されてさえいる。
とりわけ問題なのは、アイスランドの法廷では、父親による子どもの虐待を訴えた母親が無視されたり、罰せられることがある点だ。法的システムが、家族的責任は両親で平等に分かちあうもの、と理想化されていて、肉体的または性的虐待をする父親が子供たちに監督なしに近づけるため、その結果子どもへの暴力が見逃されたり矮小化されているのである。】
▲アイスランド女性党の機関誌(詳しくは「叫ぶ芸術 第57回「スカートの風、おそるべし」を)