2020年 03月 28日
コロナウイルス感染と女性差別

▲世界の看護師の男女比。黒が女性、赤が男性(世界保健機構より)
世界を危機に陥れている新型コロナウィルス感染。それと同様、危険きわまりないのが、女性差別感染だ。
そこで、コロナウイルス感染とジェンダーについて。
「政策決定においてもっとも目立たないのは女性だが、医療保健危機対応においてもっとも目立つのは女性たちだ」。こう警鐘を鳴らすのは、「コビット19の影響・回復になぜジェンダー問題が大事か」と題したエッセー。シドニーに本拠を置くシンクタンク「Lowy Institute」が、3月20日に公表した。
世界保健機構WHOは、2019年「世界の保健従事者の67%は女性である」と公表したが、看護分野の女性のシェアは79%に上る(上の棒グラフ)。
WHOの調査を踏まえて「その(世界の保健従事者の)7割近い女性の多くは、パートタイム労働者、臨時雇いであり、経済危機には、解雇や労働時間短縮にさらされる」と同エッセーはいう。
そして「男性に比べて、女性には、病欠制度や職場から離れて仕事ができる環境に置かれている人は少ない。さらに、看護師や家事手伝いの多くを担う移民女性の場合、低賃金と臨時雇いという働き方に加えて、賃金カットや失業、保健保持器具の入手困難、など二重の差別におちいる」
「子どもが家にいなければならないとしたら、だれが仕事を休んで子どもたちを見てあげるのか。家族、隣人、友人が隔離されたら、子どもたちに、だれが食事などをさせるのか」
続いて、DV(家庭内暴力)。
自宅隔離というが、安全な家ばかりではない。「DVは、コロナウイルスに間接的に影響され、ストレスの増えた危機的家庭で起きる」と同エッセーはいう。
実例は5,6年前の西アフリカ。エボラ出血熱の蔓延で、女性と少女は性暴力や性的虐待にさらされ、逃げ場を失った。彼女たち性暴力被害者に、(妊娠中絶など)不可欠の保健医療を施すことも不可能となった。しかし、語られないまま終わり、「沈黙のエピデミック」 と衝撃的表現で報道されている。
こうした悲劇を繰り返してはならない。とくに日本は、衆議院議員のわずか10%しか女性がいない。世界193カ国中、166位。下から数えたほうが早い。目を地方自治体に移せば、女性議員が誰もいない「女性ゼロ議会」は全体の2割程度もある。
「政策決定においてもっとも目立たないのは女性だが、医療保健危機対応においてもっとも目立つのは女性たちだ」ーーーが最もあてはまる国のひとつ、それは日本だ。
同エッセーが示唆するように、ジェンダー専門家が、エピデミック予防・対策・回復などの全政策過程に不可欠である。だが、いったいどうする安倍政権。
■Gender equity in the health workforce: Analysis of 104 countries
■Why gender matters in the impact andrecovery from Covid-19