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娘への性暴力で父に懲役10年の逆転有罪(名古屋高裁)

312日、日本の女性にとって非常に重要な判決があった。


3年前の2017年、娘(当時19歳)への性的暴行を準強制性交等罪に問われた父親(50)は20193月、一審で無罪になった。この無罪判決は、性暴力に抗議する「フラワーデモ」のきっかけとなって、各地で女性たちは沈黙を破って語り始めた。


その控訴審で、このほど判決があった。名古屋高裁の堀内満裁判長は、一審判決をくつがえして懲役10年という有罪判決を出した。写真の下に、名古屋高裁への傍聴に出かけた市民運動家の報告を掲げる。


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312日、私は、名古屋高裁に向かった。裁判は、当時19歳の実の娘に性暴力をふるった男性被告の控訴審だった。

裁判所前には、手に手に「性暴力は許さない」「#MeeToo」というプラカードを持った女性たちがいた。マスコミも大勢いた。「勝訴、有罪」と伝えられて、歓声と拍手が湧き起こった。それから待つこと30分余。

裁判所建物から北原みのりさん(フラワーデモ呼びかけ人・作家)、山本潤さん(性暴力被害者等でつくる「Springスプリング」代表理事)、具ゆりさん(フラワーデモ・名古屋での呼びかけ人)たちが出てきた。拍手で迎えた。みな涙目になっていた。彼女たちの言葉は的確、かつ気持がこもっていた。こちらも涙がにじむ。

法廷で、堀内満裁判長は、開口一番、「一審破棄。量刑は10年」と言ったそうだ。その瞬間、法廷内には号泣する声と拍手が湧き起こったという。有罪とした逆転判決内容はこうだ。

女性が性行為を拒んだ時にあざができるほどの暴行を受けたことなどを挙げ、「一審判決が抗拒不能(抵抗が著しく困難な状態)を否定した事情は、むしろ肯定する事情となり得る」などと指摘し、「娘は、抵抗できない状態ではなかった」として加害者を無罪とした一審をくつがえした。一審判決を「父が実の子に対し、継続的に行った性的虐待の一環だという実態を十分に評価していない」と断じた。さらに無罪判決を、「準強制性交等罪の構成要件を正当に解釈せず、誤った結論に至ったものと言わざるを得ない」と批判した。

山本潤さんは「親から性虐待を受けることがどういうことかを正しく認識していただいた。一審判決が誤った結論に至った、と言い切った」

具ゆりさんは「被害者の女性に『よく頑張ったね』とまずは言いたい。あなたの後ろにいる人をどれだけ勇気づけたか・・・」

北原みのりさんは「裁判所が性暴力を勉強してきたな、と感じる。私たちが挙げてきた声が裁判官に届いた、そして社会の空気を変えたのじゃないかな」

この判決で、社会は信じるに値する価値がある、と私は感じた。これからも前を向いてこの社会を生きていく勇気をもらった気がした。コロナウィルス対策のため傍聴席を2席ずつ空けた人数しか入廷できなかったこともあって、裁到所着が少し遅れた私は傍聴できなかったが、法廷に入れずとも、この場にいっしょにいたことを幸せに思った。

被害女性を励ましてきた認定NPO法人「CAPNA」の水野真由さんに感謝したい。被害者代理人の岩城正光弁護士は、この「CAPNA」の理事長を長く務めていた方で、「判決を聞いて涙が出たのは今回が初めて」と語った。

被害者のコメントを、判決後に岩城弁護士が読み上げた。正確を期するため朝日新聞(3月13日)から引用する(注)。

「被害を受けるたび、私は決まって泣きました。『私にはまだ泣ける感情が残っている』ということ、それだけが唯一の救いでした」「父を許すことは絶対にできません」


岡田ふさこさみどりの会


【写真は名古屋高等裁判所ホームページより】

【注:被害女性コメント全文は左下Moreをクリック】








多くのメディアが、被害女性が出したコメントの一部を報道している。NHKは、全文を載せた。性暴力がいかに被害者の全人生を狂わせるものかが伝わってくる。これを刑法の抜本的改正へ広げなくては、彼女の苦しみが報われない。NHKに感謝をこめて性的暴行罪父親に有罪の逆転判決 被害受けた娘のコメント全文(NHK 2020年3月12日 20時18分)から被害者の全コメントを掲げる。


●●今日の名古屋高等裁判所の判決を受けて(令和2年3月12日)●●


1.私は、実の父親からこのような被害を受けてとても悔しい気持ちでいっぱいです。

「逃げようと思えば逃げられたんじゃないか。もっと早くに助けを求めたらこんな思いを長い間しなくて良かったんじゃないか・・・」。

そう周りに言われもしたし、そのように思われていたのはわかっています。

でも、どうしてもそれができなかった一番の理由は、幼少期に暴力を振るわれたからです。

「だれかに相談したい」、「やめてもらいたい」と考えるようになったときもありました。

そのことを友達に相談して友達から嫌われるのも嫌だったし、警察に行くことで弟達がこの先苦労するのではないかと思うと、とても怖くてじっと堪え続けるしかありませんでした。

次第に私の感情もなくなって、まるで人形のようでした。

被害を受けるたび、私は決まって泣きました。

「私にはまだ泣ける感情が残っている」ということ、それだけが唯一の救いでした。

私が一人っ子だったら、何も迷わずにもっと早くに訴えられていたかもしれません。

やっぱり大切な弟たちのことが心配だったのです。

そんな弟たちと離れなくてはいけなくなること、生活が大変になるかもしれないこと、ただそれだけを考えると、嫌でも仕方なくてじっと我慢するしかできませんでした。

今も弟たちに会いたい。

話したい。

その気持ちでいっぱいです。

今も会えないのは苦しいです。


2.二度と会いたくないのは、父親です。

あの人が私の人生をぶち壊したんです。

返してください。

私のこの無意味に空費した時間を!気に病んだ時間を!全部返してください。

やってみたかったこと、本当はいっぱいありました。

でも全部諦めました。

今、すべてのことを振り返ってみると、ひたすら悔しい気持ちです。

父との毎日は非常識であり、ただただ気持ち悪かったです。

どうしたらあんなことができるのか、わかりません。

私たちはただ普通に暮らしたいのです。

暴力も暴行も、無慈悲な言動のない普通の生活がしたいんです。

もう二度とこんな思いはしたくありません。

これから私は無駄にしてしまった時間を精一杯埋めていきたいので、邪魔しないでもらいたいです。

私は父を許すことは絶対にできません。

不安と苛立ちに押しつぶされそうな苦しい毎日でした。

そして今も同じです。

私や弟たちの前に二度と姿を現さないでほしいです。


3.無罪判決が出たときには、取り乱しました。

荒れまくりました。

仕事にも行けなくなりました。

今日の判決が出て、やっと少しホッとできるような気持ちです。

昨年、性犯罪についての無罪判決が全国で相次ぎ、#MeToo運動やフラワー・デモが広がりました。

それらの活動を見聞きすると、今回の私の訴えは、意味があったと思えています。

なかなか性被害は言い出しにくいけど、言葉にできた人、それに続けて「私も」「私も」と 言いだせる人が出てきました。

私の訴えでた苦しみも意味のある行動となったと思えています。


4.私が訴え出て、行動に移すまでにいろいろな支援者につながりました。

しかし、「本当にこんなことがあるの?」と信じてくれる人は少なかったです。

失望しました。

疑わずに信じてほしかったです。

支援者の皆さん、どうか子どもの言うことをまず100%信じて聞いてほしいのです。

今日、ここにつながるまでに、私は多くの傷つき体験を味わいました。

信じてもらえないつらさです。

子どもの訴えに静かに、真剣に耳を傾けてください。

そうでないと、頑張って一歩踏み出しても、意味がなくなってしまいます。

子どもの無力感をどうか救ってください。

私の経験した、信じてもらえないつらさを、これから救いを求めてくる子どもたちにはどうか味わってほしくありません。


5.私は、幸いにも、やっと守ってくれる、寄り添ってくれる大人に出会えました。

同じような経験をした多くの人は、道を踏み外してもおかしくないと思います。

苦難を生きる子どもにどうか並走してくれる大人がいてほしいです。

最後に、あの時の自分と今なお被害で苦しんでいる子どもに声をかけるとしたら、「勇気を持って一歩踏み出して欲しい」と伝えたいです。

一人でもいいから、本当に信用できる友達を持つことも大切だと思います。


以上 被害者 Aより



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▲旧名古屋高等裁判所(現名古屋市政資料館)。現在の名古屋高裁(冒頭の写真)に変わって40年ほど経つ。だが、女性への偏見・差別はさほど変わっていない。




by bekokuma321 | 2020-03-15 13:26 | その他