2020年 02月 15日
ドキュメンタリ『カネが物を言う:マラウィの女性と選挙』
土埃の舞う道を大勢が何やら叫びながら走ってくる。トラックの荷台で政治家のTシャツを身に着けた人たちが歌って踊る。そこにこんな字幕が流れる。
「マラウィでは、政党は1選挙区に1人の候補者を立てて選挙を闘います。なぜなら、マラウィは最も多くの票をとった候補者が当選する、小選挙区制です。この選挙制度では、選挙にカネがかかるため、より多くの資金を持つ人が有利なのです」
マラウィの女性候補たちは、ノルウェーのインタビューに答える。
「膨大な選挙区を回って選挙運動をするためには乗り物や人手がいり、それにはカネがかかります」
「選挙区を回ると、道をつくってくれ、とか、小さなことをよく頼まれますが、カネのかかることばかり」
「私は農場を持っていたので、農産物を売って貯めた資金がありました。それを元手に借金をして、選挙資金にしました」
「私は無所属なので、カネを出してくれる政党はなく、自分の貯金がすべてです」
「選挙運動をするときには、伝統的な踊りや歌が必要で、それには資金がいります。踊ってもらってハイ、さようならとはいかない」
「ここマラウィ北部の選挙区で女性の候補者は、5,6人しかいません。こんな調子では、50%に増えるには100年かかります」
「現在行われているような制度のままでいいならば、私たちの飛躍は疑わしい。政党が選挙区で最強の候補者を立てるのは明らかだからです」
フィルムは、マラウィの「50対50」という運動も追う。父権制度と闘って、女性議員を増やそうという組織だという。その運動にかかわる男性はこうきっぱり。
「もしも僕が立候補したいと考えたら、車や家を売って、立候補を決意します。でも、もしも妻が立候補したいと考えたら、まず夫の僕に立候補の許可を得なければなりません。女性はスタート地点から不利なのです」
アフリカのマラウィにおける女性候補たちを通して、カネのかかる選挙を描いた、この短編は、ノルウェーの女性の学者ラングヒル・ルイーズ・ムリオースが、ヴィべーケ・ワンらとの協同プロジェクト でつくった。
2人によると、マラウィには選挙に公的支援はまったくなく、選挙運動にかかる歌や踊りの費用はすべて政党や候補者負担だという。一方、日本には、選挙ごとに公費が投じられ、加えて政党には「政党交付金」が毎年助成されている。1億5千万円を投じて「小選挙区金権印」選挙をした党もあったが、これも政党交付金だろう。
さて、そのマラウィだが、国会議員(一院)の女性割合は、23%で世界85位。165位の日本を抜く(IPU 2020.1.1)。またジェンダー・ギャップは、マラウィ116位と、これまた121位の日本の上を行く(世界経済フォーラムGlobal Gender Gap Report 2020)。
「このままのシステムでは女性が50%に増えるまでに100年かかる」と嘆くマラウィの国会議員候補。マラウィと同じ小選挙区制システムのわが日本は、150年先か200年先か。民主主義の名の下に世界最高額と言われる税金を投じているだけ、詐欺的であり、その罪は重いと思う。