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ノルウェー新内閣とIS問題

124日(月)、ノルウェーに新内閣が発足した(写真下)。保守党、キリスト教民主党、自由党の3党連立による中道右派の少数政権だ。

保守党党首のアーナ・ソールバルグ(Erna Solberg)は首相を続投。閣僚20人のうち、保守党12人、自由党4人、キリスト教民主党4人。

注目したいのは、教育・平等大臣となった弁護士アビド・ラジャ(自由党)。パキスタン系ノルウェー人で弱者の味方。父は工場労働者で母は専業主婦。暴力が絶えない家庭で彼も暴力におぼれて学校を中退、少年院に。その後、高校に再入学して大学へ。弁護士、政治家、人権活動家として活発に発言を続ける。

女性の入閣は8人で、40%クオータ制をかろうじてクリアした。

前内閣の崩壊は、連立を組んでいた右派の進歩党が閣僚を離脱したことによる。メディアから要約すると、シリアにわたっていたパキスタン系ノルウェー女性(29)の帰国に猛反対をしていた進歩党は、政権内での帰国賛成派を覆すことができなかったからのようだ。進歩党は厳格な移民政策を党是としてきた。


件のパキスタン系ノルウェー女性はオスロ在住だったが、2013年、シリアにわたってIS戦闘員と結婚。5歳と3歳の幼い子どもが2人いる。イラクのアルビルからウィーン、さらにコペンハーゲンを経由して、2020年1月17日、オスロ空港に到着した。ノルウェー外務省によると、「病気の子どもをかかえて恐ろしくなりノルウェー帰国を選んだ」という。女性はNRK画像によると、目だけを出した黒いニカブで全身を覆っている。


首相は、病に冒された5歳の子どもだけを帰国させて緊急治療をと考えていたが、それができず母子の帰国となったと語る。女性は、保安上の理由からノルウェー当局の監視下に置かれている。


2019年11月時点で、40を超す国々から12300人の外国人が、シリアのキャンプで暮らしていて、うち8700人が子どもだという(NYTがセーブ・ザ・チルドレンの調査を引用したもの)。一方

ISメンバーやその家族たちの帰還問題は、ノルウェーだけでなく、長い間ヨーロッパ諸国の悩みの種となっていて、 ISに加わろうと祖国を離れた人たちの責任・処遇について、多くの国で議論が続けられている。


ノルウェー政府は、1月初め、エリトリアとソマリアの難民で、リビアの拘留センターからルワンダに移動させられ、その後ノルウェーにやってくる500人を受け入れると発表していた。今回は、シリアにわたってISと関わった元ノルウェー在住者。ノルウェーにたどり着く移民・難民の長く複雑な道程に驚くばかりだ。


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▲ノルウェー政府ホームページより。https://www.regjeringen.no/no/om-regjeringa/solberg/Regjeringen-Solberg/id753980/



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by bekokuma321 | 2020-01-28 18:09 | ノルウェー