2019年 11月 25日
「北京行動綱領」を墓場から陽の当たる所に出さなくては
2019年11月22日、内閣府男女共同参画局が主催する「北京+25 包括的国内レビューについて聞く会」に参加した。
「北京+25」とは、北京会議から25年の2020年、「北京行動綱領」がどう実行されたかを話し合う国連の会議だ。女性運動団体との話し合いを踏まえて出された各国の報告書をもとに、来年3月、ニューヨークで会議が開かれる。
● 熱気あふれた1995年「北京会議」
思えば、1995年9月、北京で開かれた世界女性会議の会場は、照り付ける太陽と世界中からかけつけた女たち5万人の熱い気持であふれていた。
三井マリ子さんと私は「女性の政治参加」のワークショップを開いて、NHKも取材してくれた。三井さんはプレスセンターで記者としても働き、私はあちこちの会場をかけめぐり、ベティ・フリーダンに会ったり、ヒラリー・クリントンの演説を聞いたりした。
● 1996年「女性議員と読む行動綱領」の集い
帰国して、「北京行動綱領」の12領域、361条をひとつずつ検討した。翌年は、婦選会館で「女性議員と読む行動綱領」の集いを開催して国会議員に日本の現状を語ってもらった。内閣総理大臣官房・男女共同参画室のトップだった名取はにわさんも熱心に聞いてくれた。主催は全国フェミニスト議員連盟。
●男女共同参画局「北京+25」会議は墓場だった
北京会議は、太陽のような力を与えてくれたが、それに対し、2019年11月22日の「北京+25 包括的国内レビューについて聞く会」は、墓場にいるような気持を抱かせた。こんなことをやっていたら日本は、世界の”男女平等最低国”になるのも近いと思った。
国連「北京+25」に出す予定の日本政府がつくった報告書は、参加者の机の上に置かれていた。
「北京行動綱領」は、361条にわたる男女平等に向けての行動プログラムだ。この12領域、361条に向き合った言葉はひとつもなかった。ただ、国連女性の地位委員会からの質問への回答が官僚答弁的にまとめられていた。なんら新鮮なことはなく、1999年制定の「男女共同参画社会基本法では」という空疎な言葉が大手をふっていた。
● 165カ国出した「報告書」日本は未提出
そもそも「北京+25」の報告書は、日本政府から国連に2019年5月1日に出すことになっていた。しかし、日本政府は提出しなかった。
全世界の国の政府は、5月1日までに国の報告書を提出して、それぞれが属する領域(日本ならアジア地域)で検討して、その後、来春の国連女性の地位委員会で話し合う、そんな手順になっていた。もう半年も遅れているのに、日本政府は今の今まで提出していない。
「165カ国が報告を提出しているのに、なぜ日本は出さなかったのか」の質問が続出した。参画局は「女性活躍推進法で、動きがあったら、それを書き入れたいため」などと下手な弁解をした。
●300人会場に5、60人
300人は入れる大きな日本学術会議の講堂に、わずか5、60人位しか参加者がいなく、ガランとしていた。時間は16時から17時45分という短時間。参加希望者には前もって報告書を送り、当日意見を出してもらうことなど、考えもしなかったにちがいない。パネリストたちにさえ、この報告書はわずか一週間前に送られたばかり、という。それに、忙しい中参加した会場の人たちに、10分間位しか質問時間をとってなかった。
●怒りがさく裂
これまでさまざまな会議に参加したが、これほど実りのない会議は初めてであった。「北京行動綱領を徹底するためにどうするかの会」を、 「包括的国内レビュー」などと訳の分からないタイトルにしたことにも怒りを持った。
最後の発言者の「今日の会議には男性が一人も参加していませんよ!」という怒りの声を聴いて、私の中の怒りがさく裂した。
そうだ!私たちは、新しい形のジェンダー平等運動を始めなくてはならない。一つは小学校から大学迄ジェンダー平等教育を必修科目にすること。もう一つはジェンダー平等を求めて運動している女たち、男たちがもっと近づいて大きなうねりを起こすこと。
中嶋 里美(全国フェミニスト議員連盟初代共同代表、元埼玉県所沢市議)
■1995年「北京宣言・北京行動綱領」 (←361条すべて読める)
北京で開かれた国連世界女性会議で日本政府を含む189カ国の政府が採択した:たとえば、政府や地方自治体や非政府機関などは、次のアクションをとること、と明記されている。「暴力を受けた少女及び女性に対し,医療面,心理面その他のカウンセリング・サービスとともに十分な資金を与えられた避難所及び救援物資,さらに必要な場合には,無料または低料金の法的支援,並びに彼らが生計手段を見つけることができるようにするための適切な支援を提供すること。」[北京行動綱領 125 (a)]