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菅原一秀辞任と小選挙区制選挙

 「政治家なんて、同じようなことをいくらでもやっている。たまたま一秀(いっしゅう)さんが狙われただけの話」


一秀さんこと菅原一秀議員の大臣辞任を報じる新聞の一文だ。選挙区(練馬区)で、菅原一秀後援会にはいっている女性の声だという(1026日、朝日新聞)。


そういえば、ワインだ、うちわだ、カレンダーだ、SMバーだ、キャバクラだ、と騒がれたのはそんな昔ではない。


小渕優子元経済産業大臣は、バス26台に有権者を乗せて明治座観劇ツアーをし、名前と顔入りの紅白ワインをばらまいていた。顔イラスト入りうちわは松島みどり法務大臣だった。数少ない女性政治家の代表と期待されていた2人だが、両人とも大臣を辞任した(なぜか議員辞職はしていない)。


菅原議員の大臣辞任は、今月17日に彼の公設秘書が、選挙区の支持者の通夜で「菅原一秀です」と香典(2万円)を渡したことが引き金らしい(10月31日号、週刊文春)。


日本の公職選挙法は、「べからず選挙」と言われるほど制約だらけだ。とくに新人候補には酷だ。しかし、菅原議員は新人ではない。彼は、区議、都議、国会議員と、数えきれないほどの選挙をかいくぐってきたベテランだ。「通夜会場で、秘書に現金を渡させたら選挙違反である」ことを知らないはずはない。


 菅原一秀辞任と小選挙区制選挙_c0166264_10452953.jpgしかも彼は、選挙区の大勢の支持者に高価なカニ、たらこ、メロン、すじこなどを季節ごとにせっせと宅配していたらしい。先日、週刊文春に書かれただけでなく、10年前、朝日にスクープされている。


選挙違反と知っていても、なおかつカネで人の票を買おうとする行為。それを性懲りもなく繰り返してきた神経。なぜ、こんなことを続けるのか。それは選挙が、小選挙区制であることと関係がある。 (続きは左下のMoreをクリック)







専門書によると、世界の選挙は、「多数決制」と「比例代表制」の2つに大きく分類される。


「多数決制」では、有権者は支持する候補を選ぶ。当選するには、1票でも多くの票を勝ち取らなくてはいけない。「小選挙区制」が代表的で、複数当選の「中選挙区制、大選挙区制」もこれにはいる(三宅一郎『投票行動』)。


それに対して「比例代表制」では、有権者は政党を選ぶ。だから選挙になると、わが党はこういう政策を持っていて、こういう社会にしたいなどと、政策論争が続く。


比例代表制選挙は、政党への支持の大小を決めるもので、大政党は大政党なりに、小政党は小政党なりに、獲得票に比例して当選者の数が決まっていく。誰が当選するかは、そのあとだ。北欧では、政党が前もって決めた候補者リストの上の方から当選するが、有権者が入れる個人票も加味される。


強調したいのは、「小選挙区制では、候補者個人が顔や名前を有権者に売らなくてはならない」が、「比例代表制では、候補者個人が有権者に名前や顔を売る必要はない」ということだ。


日本の選挙の土台は小選挙区制だ。比例区もあるじゃないかという人もいるが、日本の比例区は小選挙区制にくっついたおできみたいなもの(女性衆議院議員の多くは比例区で当選しているなど、ないよりはいい)。


日本では、投票所で投票用紙を受け取って、支持する候補者名を鉛筆で書きこむ方式だ(この自書式は日本だけらしい)。ここで、一人でも多くの人に名前を書いてもらった候補者が勝者となる。


選挙運動だが、候補者がどんな政策を持ち、どういう社会にしたいと考えているかなどを有権者が知るには相当程度の時間がいる。日本のような短期間の選挙ではほぼ不可能だ。そのうえ、「べからず選挙」が追い打ちをかける。候補者から政策を伝える手段を奪っているからだーー戸別訪問はダメ、候補者が一堂に会しての討論会もダメ、政策ビラも一定枚数以上はダメ・・・。


実際、日本で選挙といえば、候補者個人が顔と名前を売ること。あの、宣伝カーでの名前の連呼、駅前での名前の連呼、笑顔のポスター…。


要は、日頃から、メロンだ、イクラだ、ワインだ、香典だ、と、せっせと鼻薬をきかせることのほうが、ずっと効果的だ。これこそ、菅原議員が長年やってきたことだ。


毎年、国会議員の懐にはいる「政党交付金」も、彼の乱費に拍車をかけたにちがいない。なにしろ世界一高額ときている。菅原議員に渡った政党交付金は、2017年だけで約3000万円だった。「政務活動費」同様、使わなかったら返還なのだが、そんなことをする人はいない。政治活動の名目でジャブジャブ使いまくる(現職なら選挙運動ではないと弁明できる)。


政党交付金は、貧しいシングルマザーも赤ちゃんも1250円出している税金だ。小選挙区制選挙に変えた時、抱き合わせで制度化された。その目的が「政党の健全な発展のため」なのは、今となっては笑うしかない。


こんな選挙制度である限り「政治家なんて、同じようなことをいくらでもやっている。たまたま一秀さんが狙われただけ」。


カネまみれの人気投票的選挙をなくすには、比例代表制選挙に変えることだと私は思う。「いや違う、他にいい方法がある」という人は、教えてほしい。



【写真:メロンやイクラの値段を知るためネット検索してたら、こんな写真が楽天からドッサリ届いた。高額なので私は買えないが、ミニサイズにして写真を使用させいただくことにした】




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by bekokuma321 | 2019-10-27 11:27 | その他