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民主主義を鍛える開票作業(ノルウェー)

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ノルウェー地方選が終わった。投票率は64.5%。首都オスロは67.5%をマークした。ノルウェーも、地方選は投票率約8割の国政選に比べてかなり低い。しかも年々投票率が下がっていた。が、今年は違った。


比例代表制選挙なので「死に票」は出ない。一人ひとりの声が、大政党は大政党なりに小政党は小政党なりに議会に反映される。それをこの目で見たかった。ノルウェー地方自治省主催「選挙観察プログラム」に参加した。


投票時間がもうすぐ終わる9日夜9時前、オスロのベッケラーゲ(Bekkelaget)小学校に到着した。夜9時、学校のドアが閉じられた。同時に投票所となっていた体育館の片付けが始まり、開票作業所に早変わりした。


テーブルが2つ作られ、それぞれに集計係が座った。「募集に応じてくれた市民たちです。何度もやったことのあるベテランから初体験の新人までさまざまな市民がいます。全員が訓練を受けています。オスロでは多少バイト代を支払っていますが、まったくのボランティアのところもあるようです」と開票責任者が言った。2つテーブルがあるのは、座るテーブルを変えて、異なった目で票を2回調べるからだという。


投票箱から投票用紙がドサリと移される(写真上)。積まれた投票用紙を、まず、表紙に押印されているかを確かめる。印鑑がなければ無効だが、ノルウェーでは無効票はほとんどないという。この学校でも「無効票は1枚もありません」。


次に政党ごとに票を分ける作業に進む。21もある政党の候補者リスト(=投票用紙)に加えて支持政党なしの用紙もある。しばらくして、積み上げられた投票用紙の山の高さで、この選挙区の投票傾向がわかってくる。保守党の山がどんどん高くなっていく。「ここの選挙区は、富裕家族が多いところなので、いつも保守党が強いのです」と責任者が言った。


9時半ごろ、手元のスマホにメディアから政党の予想獲得率が入ってきた。「正確にはまだですが、事前投票の結果予想もあるので、予想は当たります」と、案内役の自治省職員は言った。


積みあがった政党ごとの票の山を1枚1枚数える作業が始まる。みな真剣だ。休憩もとらず、黙々と数えている。1時間以上経過しただろうか。


「誰が議員に当選したかは、この開票所では決まりません。オスロの場合、各投票所の投票用紙はオスロ市(オスロは県でもある)に送られて、そこで、投票用紙がスキャンされます。個人の加算票がスキャナーで読み取られます。それから、政党ごとに候補者の順位が決まります」と、開票責任者が説明した。


比例代表制では、政党ごとの獲得票に従って、その政党が議会に何%議員を送れるかが決まる。選挙区では、政党ごとの票の数を正確に数えるだけだという。


ノルウェーでは、投票用紙の候補者名の右にある空欄にバツ印をつけると、その候補者の票が増える。また、投票用紙の右下の欄に、他党からの候補者名を書くことができ、書かれた候補者は加算される。そのややこしい作業は「ここではなく、オスロ市役所のスキャン作業で」なのだそうだ。この個人票を加えた政党ごとの候補者リストの順番が決まるのは、今週末または来週に持ち越すかもしれないと言われている(注)。


9日深夜のテレビによると、ノルウェー全体では、第1党労働党、第2党保守党。だが、両党ともかなり票を減らした。第3党は中央党(前農業党)で、大躍進だ。政府の自治体合併政策への反対の声を集めたようだ。


オスロ市では緑の党が大躍進。地球温暖化への危機から若者を中心に支持が伸びた。オスロ緑の党代表のチャーミングな笑顔が、テレビ画面いっぱいに広がっていた。ベトナム系ノルウェー人 だ。


テレビを見ながら、深夜過ぎまで開票作業を続けていた生真面目な顔、顔、顔が浮かんできた。こうした普通の市民一人ひとりの政治参加が民主主義を鍛えているのだ、とわかったような気がした。


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【注:メディアは、選挙後、政党がどのくらい票をとったか、前回に比べてどのくらい伸ばしたか、または下がったかを報道する。もっとも大事なのは政党の獲得率であり、だれが当選したかは、重要ではないとまでは言えないが、次のステージになる。9月11日夜現在、知人の候補者4人に当落を尋ねたが、トップに登載された1人を除いて3人とも「まだわからない」という答えだった】


by bekokuma321 | 2019-09-10 18:32 | ノルウェー