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立候補は民主主義をつくるため(ノルウェー)

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「普通の女性が議員になることが大事なのです、と立候補を頼まれました。民主主義のシステムつくりに参加することは義務だと考えていた私は、立候補を承諾しました」


北欧の地方議員は無報酬だ。だから、議員になっても、それまでの仕事は続く。そのうえ、男性の家事育児参加が進む北欧といえども、家事育児の主な担い手はまだ女性である。ということは、女性たちは、有給の職業と家事育児に、さらに議員の仕事が加わる困難を承知の上で立候補することになる。


いったい、どんな動機で立候補を決意するのか。ノルウェーの市議会議員だったが今回立候補していない女性に聞いた。選挙真っ最中のベアテ・ブルンとは違った答えが聞けるかもしれない。


公立病院のX線検査技師を退職したばかりのグロ・クリステンシェン(写真)は、立候補した動機を冒頭のように私に言った。「民主主義のシステムづくりへの参加は義務だから」というのだ。日本なら政治学の著書でしかお目にかかれないような言葉だ。


グロ・クリステンシェンは、2011年までエルベルム市の市議会議員(労働党)だった。立候補を依頼された当時、大病院で50人以上の職員をまとめる部署の部長職という重責にあった。仕事が猛烈に忙しいことと家庭の事情もあって悩んだ末の決意だった、という。


投票日が近づいても、病院での仕事は日々続く。いったいどんな選挙運動だったのか?


「選挙運動ですか? 新聞の”討論”のページに意見を載せたほかはとくにしませんでした」という(注)。初めて立候補した人が、選挙運動をほとんどしなかったというのだ。日本の選挙では考えられないことで、比例代表制ならでは、だ。比例代表制選挙では、有権者は候補者に1票を入れるのではなく政党に1票を入れる。だから候補者個人は顔や名前を売ったりする必要がない。


とはいえ彼女には個人票も多くはいった。「党の候補者リストの23番でしたが、8番にあがって当選しました」。職業柄、多くの人から信頼されていたのだろう。ノルウェーの地方選では有権者がリストの順番を変えることができ、その加算票を多く取った候補者がリストの上位になって当選に結びつく。


当選後、職業と政治家をどう両立させたか、市議としての活躍ぶりなどを、またの機会に紹介したい。




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【注】新聞の「討論」欄は声の欄のようなもの。グロ・クリステンシェンの意見が載ったのは地方紙の「討論」欄。通常1ページだが、選挙のある夏ごろから数ページに増える。著者名と政党名に顔写真が載って、議論の分かれるテーマについて持論が展開される。さながら紙上政策討論会となる。グロは、病院・福祉分野の民営化反対の意見を出したそうだ。

【2019/11/3 更新】

by bekokuma321 | 2019-09-07 18:28 | ノルウェー