2019年 08月 30日
無報酬でも地方議員候補が多い理由(ノルウェー)
「ダーグナードdugnadというノルウェー語をご存知でしょうか。ボランティアとは少し違います。草むしりや掃除などを近隣の人たちと助け合ってする共同作業を意味します。ダーグナード精神が地方議員にも宿っているように思うのです」
こう言うのは、地方議員に初挑戦するベアテ・ブルン(Beate Bruun 写真)。ノルウェーの首都オスロの建築家だ。
ノルウェーなど北欧諸国の地方議員は基本的に無報酬だ。職業・学業のかたわら、議員の仕事をこなす。方や、日本では無投票当選を避けるため議員の給料を上げようという声すらある。なぜ北欧では、無報酬なのに立候補する人が絶えないのか。その答えが、「ダーグナード精神」だというのだ。
ベアテ・ブルンは、60歳過ぎて初めて、今年、議員に立候補した。その理由を聞くと:
「新たな世界へのチャレンジって、おもしろいでしょ。それにオスロ全体に言えることですが、私の選挙区ウーランは、今、大変な勢いで都市開発が進んでいます。開発オンリーでいいのか。長年、建築分野で働いてきた私の専門的知識や経験が役立つと思うのです。それに子どもたちも独立して、ちょうどいい時期でしょ」
ノルウェーの首都オスロ市は、東京都のようにいくつかの区にわかれている。9月9日、オスロではオスロ市議(=都議)だけでなく区議の選挙も行われる。ベアテの立候補しているウーラン区は、富裕な土地柄ゆえか保守党が強い。区議15人中9人が保守党議員だという。彼女の党はこの区ではあまり人気のない左派社会党だ。
オスロ市の区にあたる東京都23区の議員は年平均1000万円ほどだ。さらに政務活動費の名目で200万円ほどが拠出される。一方、ノルウェーなど北欧諸国の地方議員は無報酬。にもかかわらず、さまざまな政党から大勢の候補者が出る。なぜなのか。さらに掘り下げてみたい。