2018年 12月 22日
政治分野の男女格差 世界125位
12月18日、ダボス会議で知られる「世界経済フォーラムWEF」は、「男女格差ランキング2018」を発表した。世界149か国中、日本は110位。右の表は、1位アイスランド、2位ノルウェー・・・と149か国がならんでいて、赤マーカーが日本だ。
男女格差ランキングは、経済、政治、教育、健康の4フィールドで男女平等を指数化して決める。日本110位は、経済117位、政治125位、教育65位、健康41位の平均だ。政治分野の男女格差が最も大きい。その調査項目は、閣僚・国会における女性率と、女性首相が何年間いたか、の3つで、そこから125位とたたきだされた(朝日新聞2018.12.19)。
WEFの原典 にあたってみた。
政治分野の主な内容に「クオータ制」があがっていておもしろい。訳はFEM-NEWS。
●女性参政権を得て何年か
●女性の首相は何人誕生したか
●国政選挙にクオータ制をとっているか
●地方議会選挙にクオータ制をとっているか
●政党が自主的にクオータ制をとっているか
●国会上院における女性議員率
クオータ制(Quota system)は、選挙の候補者を決めるとき、一方の性に偏らないように少なくとも女性40%などと決める制度だ。暫定的特別措置のひとつで、世界の国々の半数が何らかのクオータ制をとる(IDEA)。
当然ながら上位5か国――1位アイスランド、2位ノルウェー、3位スウェーデン、4位フィンランド、5位ニカラグアーーは、何らかのクオータ制をとる。一方、日本は、国政、地方議会、政党もクオータ制を採用していない。朝日新聞は、このクオータ制について、1位のアイスランドを例に、こう書く。
「90年代に複数の政党がクオータ(割り当て)制を採用するなどして増え、4~5割を占めるまでになった」
しかし、朝日は、アイスランドをはじめ上位5か国とも、比例代表制選挙中心の選挙だということに触れていない。比例代表制を論ぜずして、クオータ制をいうのは、土台がないのに家を建てようとしているに等しい、と思う。
なぜならクオータ制は、比例代表制でこそ生きる。比例代表では、有権者は政党に1票を入れる。政党の獲得票に比例して、その政党から何人議員を出せるかが決まる。例えば3人とすると、政党が決めた「候補者名簿(リスト)」の上から順に3人が当選する。
リストは、選挙前に選挙区ごとに開かれる政党の会議で、話し合って決められて、選管に出される。その政党の会議で、クオータ制の威力が発揮される。2位のノルウェーの多くの政党は、70~80年代からクオータ制をとっているが、現在、リストはほぼ男女交互に並ぶ。1番が女性なら2番は男性・・・。
一方、日本の小選挙区制(大選挙区制も含む)はどうか。候補者は、選挙区ごとに、個々人が手をあげて決まるのがほとんどだ。先に手をあげるのは、現役議員、議員だった親類縁者を持つ人、国会議員の秘書・・・そこにクオータ制の出る幕はほとんどない。
地方議会選挙もそうだが、選挙区から1人しか当選しない衆院選は、なおのことクオータ制を入れるのは絶望的だ。比例区があるではないかと思う人がいるかもしれない。だが、例外を除いて比例候補は小選挙区候補なのだから、日本の比例代表制は、小選挙区制のおできみたいなもので、比例代表制のよさが出ない。
そうは言っても日本で比例代表制選挙にすぐ変わるとは思えない。現制度の下で、一人でも多くの女性議員を誕生させなくてはならない。「候補者男女均等法」施行後初の統一選挙が来春やってくる。とにかく候補者に女性が増えなくては話にならない。
女たちよ、全国で選挙に打って出よう!
そして、各地で候補者調整が行われている今こそ、政党や政治団体に、以下のような提案をしたい。
●政党や政治団体は、「女性ゼロ議会」をなくすことを目標にかかげ、そのために女性候補のいないすべての自治体に、少なくとも一人、女性候補を擁立すること
●政党や政治団体は、引退議員や亡くなった議員がいる選挙区には、その自治体の議会の半数が女性議員になるまで、その議員のあとに女性候補を擁立すること
●当選には相手候補に1票でも差をつけなくてはならず、現役と同じような基盤(年齢、住所、職業、同窓会、PTA活動など)を持つ人を敬遠しがちだが、立候補を希望する女性がいたら、政党や政治団体は、同じような基盤の人でも擁立すること
●現職女性議員がいて、その立候補が予定されている選挙区の場合、女性候補が増えると、「女性同士の争い」と否定的評価をされがちだ。しかし、男性同士の争いは当たり前なのだから、矛盾する。政党や政治団体は、選挙区によっては複数の女性候補を擁立をしよう
●選挙区の議員定数が1人の場合は、女性の当選を、複数定数の場合は、複数女性の当選をめざすこと
日本を含む東南アジア諸国が男女平等になるには、今後171年かかるそうだ(WEF)。だが、このままの選挙制を続けるなら、日本の女性が議会の半分を占めるには、もっとかかるだろう。いや、女性だけではない。非正規労働者、心身障がい者、アイヌ民族など、社会的弱者を政策決定に増やすには、小選挙区制では絶望的だと思う。小選挙区制をやめて、比例代表制にすることを真剣に考えよう!
■比例代表制は男女格差を縮める(世界経済フォーラム2017)
【2018.12.23 更新】