2018年 12月 09日
速報:今どき男だけをうたう市民の歌でいいの?
12月8日、「今どき男だけをうたう市民の歌でいいの?」 が、富山県高岡市から山下清子さんを迎えて催された。八王子市の男女共同参画センターにて。
山下さんは、「シャキット富山35」の世話人。同会は、8月、女性がうたわれていない高岡市民の歌について、男女平等の観点から問題だと市の男女平等問題苦情処理委員会に申し出た。
高岡市民の歌(作詞林真理子)には、「御車山を曳いてくる 男たちのりりしさ あなたの父も兄もいる」とうたわれている。一方、「女たち」も「母」も「姉」もいない。合併10周年を記念して2015年に制定された。記念行事にはウン千万円、歌には500万円の公費が支払われたという。

10月31日、高岡市の男女平等問題苦情処理委員会はーー 「『ふるさと高岡』の歌詞に偏った表現が多いとか、男性だけを強調・賛美しているとは認められない」として、申し出を退けた。その結論に対して、「シャキット富山35」は、11月14日、再調査・再回答を求めたものの、門前払いに。
当の高岡市の男女平等問題苦情処理委員会だが、なぜか委員名はホームページに公開されていない。「シャッキット富山35」によれば、男女平等問題苦情処理委員会委員は、入江祐典弁護士、神川康子富山大副学長、吉川佳子人権擁護委員の3人。
講師の山下清子さんは、10代で母親を亡くし、実姉も若くして死亡した。「我慢の人生だった母や姉のような女たちの苦労を後世に残したくない」と、「個人的なことは政治的なこと、という言葉があるが、私たちの異議申し立ては、それです」と強調した。
今回、八王子市に山下さんを迎えたのは理由がある。「八王子市歌を考える会」の秋山映子代表や、井上睦子元市議、遠藤真子さん(八王子手をつなぐ女の会)、陣内泰子市議らから報告があった。
八王子市歌(1936年制定)には、1番から3番まで「奮え 多摩のますらを」とうたわれている。その一方、女性はどこにもうたわれていない。八王子手をつなぐ女の会は、かねてから批判してきた。2016年、同会らは、当局が、小中学校に市歌を歌うようにと促したり、CD化の動きがあるらしいと察知した。そこで小中学校長や音楽担当に、問題点を指摘した。また、八王子市歌を考える会は、石森孝志市長に「市や学校の行事などで歌わせないでほしい」「歴史的資料とすべきだ」などと要望書を提出した。
こうした市民運動もあってか、現在、八王子市内の学校で子どもたちに広めることはなくなった。しかし、成人式や市の記念行事などの式典では歌い続けられている。市長は「大切に守っていくべきもの」などとして、女たちの要望を尊重する意向は見せていない。
高岡市の場合、男女平等問題苦情処理委員会は第3者機関として存在しているものの、行政側の追認機関となっているようだ。頼みの綱と訴えたのだが、その期待は無残にも打ち砕かれた。しかし、それでも「私ら市民が、あきらめずに物を言い続けなくは変わらない。とくに若い人たちに男女平等に関心のない人が多く、伝えていかなくては」と山下さんは力説した。
山下さんの報告によるとーー「申し出をして1か月経って、シャキット富山35の代表が高岡市民でなかったことから、出し直しを要求されて、山下名で再提出した」「男女平等問題苦情処理委員会への申し出は過去、書類上は一件もなかった」「市民から申し出があっても、窓口で書類には書ないようにと指導されていたようだ」「今回、申し出を退けられた後、男女平等問題苦情処理委員会の話し合いを知るため会議録を情報公開したが、要旨だけだった」「その要旨によると、会議は10月18日9時半から10時10分まで40分の1回のみ」「男女平等苦情処理委員会の結論はおかしいと考えて、再調査と再回答を求めたが、行政から『少数派の意見は認めない』などと言われた」
FEM-NEWSの三井マリ子(元八王子市民)は、福井県武生市(現越前市)の男女平等オンブッド(男女平等苦情処理委員会のこと)だった経験から、日本の行政の第3者機関の実態と問題点を話した。また、女性の体の一部を富士山にダブらせた千葉県市川市の市歌には、一同のけぞった。ほかにもとんでもない市歌があるだろうが、子どもたちのためにも改善していかねば、と話し合いは続いた。

