2018年 10月 19日
70年後の謝罪(ノルウェー)

ノルウェーの首相エルナ・ソルベルグは、10月17日、水曜日、戦後、「ドイツの女の子」と汚名をきせられて復讐された女性たちに、国として正式に謝罪をした。
70年前の、女性に対する国ぐるみの蛮行に、正式謝罪をしたのだ。男女平等の先進国にしては遅いと思うが、 It is never too late to mend.
首相は、国連人権宣言70周年を記念する行事において、文化大臣、防衛・移民副大臣とともに、政府として、謝罪のスピーチをした。
ノルウェーは、1940年から5年間、ナチス・ドイツに占領されて、何十万人ものドイツ兵がノルウェーに駐留した。当然ながら彼らと親密な関係を結んだノルウェー女性が多数いた。戦後の1945年4月、何万人もの女性が、法的根拠も裁判もなく、「ドイツの女の子」と呼ばれて、仕事を奪われ、逮捕され、何カ月間にわたる獄中生活を余儀なくされた。また、国外追放にあった。1945年8月には、ノルウェーは市民法を改正して、1940年4月以降にドイツ男性と結婚した女性を国外追放できるとした。
ノルウェー公共放送NRKによると、第二次世界大戦時、ドイツ兵の父とノルウェー人の母の間に生まれたライダー・ガブレル(Reidar Gabler)は、NRK(ノルウェー放送協会)にこう語っている。
「謝罪は大きな意味を持っています。遅すぎましたが」
「ドイツに渡っても、自分の過去を思い辛い日々を送りました。残酷なのは、ドイツからノルウェーに移住した私の幼い息子にまで及んだのです。彼はナチス・ドイツといじめられたのです」
「罰せられたのは、『ドイツの女の子』である母だけではありません。家族やそのまた子どもたちも、なのです」
ライダー・ガブレルの母親は22歳のとき、仕事に就くためにテレマークに引っ越してきた。その地で、知人を通じて25歳のエーリッヒ・ガブラーを紹介されて、彼と恋に落ちた。問題は彼がドイツ兵だったことだ。2人にライダーが生まれた。
ホロコースト・マイノリティ・センターの歴史学者グリ・イエルトネス(Guri Hjeltnes)は、政府の正式謝罪を、こう語る。
「謝罪は大きな力となりえます。現政権が、当時起きたことに責任があったとはいえなくても、しかるべき正当な謝罪は、名誉とアイデンティティを取り戻すことを可能にします」
「ドイツ兵と結婚したノルウェー女性が、ナチス・ドイツに協力したという証拠はありません。しかしながら、女性たちは、戦争でぼろ儲けをした人たちよりもずっと厳しく罰せられたのです」
「ドイツ女性と結婚したノルウェー男性は28人いましたが、誰ひとり、国外追放されたり、市民権をはく奪されたりしていません」
いかにジェンダーによって対応が歪められてきたか。彼女の指摘は鋭い。
首相は「ノルウェー当局は、法の支配という基本原則を破ったのです。裁判によって以外、何人たりとも罰せられないとする原則です」と語った。文化大臣は「歴史を書き直すことはできませんし、女性たちに対して行った不正をないことにはできません。しかし、再びこのようなことを犯さないようにすることは可能です」と語った。
政府の公式謝罪のきっかけとなったのは、アフテンポステンの記者ヘッレ・オーネス(Helle Aarnes)の手になる著書『ドイツの女の子(Tyskerjentene):知られざる歴史』のようだ。彼女は2008年に「ベルゲン・ティーデネBergens Tidende」に連載し、それをもとに2009年に出版。それまであまり知られてなかった歴史的事実を暴いた。上の写真は、その本の表紙。
彼女によると、「ドイツの女の子」は頭髪をそぎ落とされた。路上で、衣服をはがされ裸にされて、屈辱を与えられた。蛮行は、ナチス・ドイツに対する報復として行われた。女性への虐待を、警官、検察、判事、新聞は、見逃しただけでなく、後押しする側に回った。ノルウェーは、「ドイツの女の子」に対して国ぐるみで組織的に報復措置を行った、とされる。
あらゆる歴史は、女たちの目による徹底した見直しを必要としている。
■Jeg er takknemlig for unnskyldningen (NRK)

