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女性差別撤廃条約選択議定書を批准すべき理由

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日本女性の未来は、女性差別撤廃条約選択議定書を批准するかしないかで、大きく違ってくる。


●バックラッシュに抗するために

「選択議定書の批准は、日本の男女にとってだけでなく、アジア地域にとって、きわめて重要です。多くの国々で、バックラッシュ――とりわけ女性の権利に対してーーが実際に起きており、市民社会が萎縮させられています。日本の批准は、人権推進へ確実にコミットするんだという政府当局の証となります」


スイスの法律家パトリシア・シュルツさんは力説した。彼女は、国連女性差別撤廃委員会の個人通報作業部会の会長だ。このほど、 日本女性差別撤廃条約NGOネットワーク(JNNC)の招きで来日講演した。


●バックラッシュの司令塔「日本会議」

バックラッシュとは、この場合、女性の権利に対する反動的流れをさす。日本では、2000年ごろから、右派の地方議員を中心に、「性別をなくそうとするジェンダーフリー」などという嘘をばらまいて、男女共同参画条例を形骸化させたり、女性センターの予算削減をさせたりしては、快哉を叫んできた(注)。その司令塔は「日本会議」だ。日本会議は、日本最大の右派的改憲団体であり、「日本会議国会議員懇談会」をかかえる。実は、昨日、組閣された安倍内閣のほとんどは、この「日本会議国会議員懇談会」会員である。


シュルツさんは、日本の女性がいつまでたっても低い地位に置かれている最大の障壁を、はからずも言い当てた。日本政府やNGOによって委員会に出された報告内容を熟知する彼女は、さらに日本政府をこう批判した。


「日本は、『検討している』と繰り返して、批准に向けて何もしていないことを正当化しています。残念ですが、日本では、差別的な規範の改正に、きわめて長い時間がかかっています」


「選択議定書」は、FEM-NEWSでも扱ってきた。


東京都小金井・八王子・三鷹市などの市議会が「女性差別撤廃条約の選択議定書の批准を求める意見書」 を採択したことも紹介した。


しかし、まだよく知る人は少ない。選択議定書という言葉のせいか。かといって英語オプショナル・プロトコルに言い換えると、もっとわからなくなる。ということで、やはり選択議定書と呼ぼう。


●女性差別撤廃条約を批准しても選択議定書は未批准

選択議定書は、条約を補う国際文書のことだ。「条約で守られている権利が侵害されたら、国連に訴えることができますよ」と保障してくれる道具といえる。条約とワンセットだが、やっかいなのは、それぞれを批准しないと使えないことだ。


女性差別撤廃条約を1985年に批准した日本だが、選択議定書は批准していない。だから差別に苦しむ個人や団体が直接、国連に訴えることはできない。たとえば、「夫婦同姓を強制する民法は女性差別撤廃条約違反だから、なんとかしてほしい」と、国連に訴えることはできない。


●スイスは比例代表制で4党連立政権

シュルツさんは、日本政府の批准への遅さを嘆いて、「政治的意思」の必要性を述べたとき、次のように自分の住むスイスの国会を語った。


「スイスでは、日本のように議会の多数を一党が占めることがない。長年、多くの政党が議会に存在していて、現在は7政党から議員が出ており、4政党で連立与党を組んでいます。政権内でも4党間での話し合いが必要で、法律ひとつ通すにも、常に異なった政党間で協議します。さらに国民投票という直接民主主義の伝統があります。3つの異なった言語、2つの異なった宗教、地方と都会の大きな違いのあるスイスでは、政治は、常に市民の支持、市民とのコラボで進められていて、うまく動いています」


シュルツさんにとって当たり前すぎて「選挙=比例代表制」と言わなかっただけで、「比例代表制選挙の国スイス」を忘れてはならない。比例代表は民意が素直に議席に反映する。


一方、日本は、289選挙区から最高得票の1人のみ当選する小選挙制中心の選挙だ。他の人に入れた票はすべて死に票となる。それが1強多弱の国会となり、”日本会議内閣”を生んでいる。当然ながら、女性議員の極端な少なさも。


●バックラッシュと小選挙区制

バックラッシュ(女性の権利に対する反動的流れ)と小選挙区制。日本女性を従来からの否定的役割に押しとどめる二大障壁だ。これで得をするのは? どんな人たちかは、容易に想像がつく。しかし、この障壁を切りくずすハンマーがある。それが批准国109カ国となった選択議定書だ。



「日本会議」に向かって闘いを挑んだ本:『バックラッシュの生贄』を読んで(加島 康博)

今も続く右翼的攻撃の楯となる本:『バックラッシュの生贄』を読んで (岡田ふさ子)

館長雇止め・バックラッシュ裁判HP

浅倉むつ子「男女共同参画社会実現のための訴訟でした」

バックラッシュ勢力に司法の鉄槌下る

男女平等を嫌う反動勢力の実像 ~日本にはびこるバックラッシュ現象~



【注:2009年8月、国連の女性差別撤廃委員会は、女性差別撤廃条約の実施状況について、日本政府に対する総括的所見を出した。そこに「委員会は締約国において男女間の不平等が根強く存在しているにもかかわらず、女性の人権の認識と促進に対する『バックラッシュ』が報告されていることに懸念を有する。」(29項)とある】


【写真:パトリシア・シュルツ国連女性差別撤廃委員会個人通報作業部長。国際女性の地位協会チラシより】


【2018.10.6 ミスを訂正して更新した】



by bekokuma321 | 2018-10-04 17:36 | ヨーロッパ