2018年 09月 01日
音楽祭にクオータを(ノルウェー)
ノルウェーの夏。輝く太陽のもとイベントが続く。とりわけ、野外音楽祭の多いこと。全国津々浦々、大勢の老若男女が酔いしれる。
今夏、ノルウェー訪問のかなわなかった私は、ノルウェーから届くニュースを楽しんだ。そのなかに「音楽祭にジェンダー・クオータを」という見出しを見つけた。ジェンダー・クオータはノルウェー語でkjønnskvotere。日本のNHKにあたるNRKの記事だった。
クオータ制は、政界や経済界などに女性を進出しやすくするために考え出された。ノルウェーの政党は、70年代から自主的に導入した。男女平等法で「公的委員会等の構成員の40%を一方の性に」と定めたのは、80年代だ。90年代にはいると、家事育児の父親参加を促すためのパパ・クオータが始まった。2000年代には、企業の取締役の少なくとも40%を女性にする法律ができた。
音楽祭のクオータ制とは何だろう。記事を読んでみよう。
「新しい年に新しいスコア」。だが、変わらないのは「ノルウェーの音楽祭のアーテストのほとんどは男性である」という現実だと書く。
記事のポイントは、その男性偏重の音楽界を変えようとしている2人の女性の主張だ。ヘイリー・シーHaley Shea、カヤ・グヌフシェンKaja Gunnufsen。なぜ彼女たちは変えたいと考えているのか、どう変えたらいいのか。NRKはまとめている。
「でも、みんな音楽祭で楽しい時をすごしているんだから、なんでジェンダーなの?」
ヘイリー・シーは答える。
「ジェンダー・クオータは大切です。なぜなら聴衆は女性と男性で構成されています。音楽を通して表現される物語は両方の性を代表することが重要です。女性から女性にだけでもなく、女性から男性にも。女性は男性と異なった視点を持ち、男性とは異なった表現をします。音楽祭はそうした多様性を必要としています」
カヤ・グヌフシェンは、今夏、ロフォーテン諸島のヘニングスヴァ―ルで行われた夏祭りTrevarefestに出演した。
さらに続けて
「フェミニストとして、クオータ制に疑問を持っていましたが、変革の時にはクオータ制が必要だという結論に達しました」
2人は、音楽祭に女性を増やすには、「バンドで演奏したい女性の力をつけること」「主催者にジェンダー平等の確信を持ってもらうこと」の2つが必要だと言う。
2人は、そのための組織AKKSを立ち上げた。なんという実行力。「AKKSはジェンダーによるバランスとジェンダーの平等を進めて行く理想的な団体だ」。ヘイリー・シーはAKKSの代表をつとめ、カヤ・グヌフシェンは主任教員。女性だけの学校らしい。
「男の子を差別しているのではありません。男の子はバスやドラムを演奏し、女の子は歌をうたったりピアノを弾くというジェンダーによるお決まりコースをさけるための場を創ったのです。AKKSは、バンドを演奏する女の子をより見つけやすくし、バンドをする女の子によりやる気を起こさせます。数年たったら、音楽生活における男性優位を変えていくでしょう」
NRKは、2人の考えを補強するように、人気ロックシンガー、ソンドレ・ユスタSondre Justadから、こんな言葉を引き出している。
「悲しい現実に驚いてはいません。社会を反映しているのです。僕たちは、ジェンダー平等の目標に達していません。音楽界には、この分野ですべきことが多い。僕たちは、前に進むべきですし、このことを真剣にとらえなければなりません。50対50というクオータ制がいいとは思いませんが、音楽業界の男性は、女性を前に出す特別の責任を持っていると思います。意識の問題です」

■ついに映画産業にクオータ制
■●連載● クオータ制は平等社会への一里塚 第2回
■大学のクオータ制