2018年 03月 14日
強制不妊手術被害者への謝罪・補償を
こうテレビで公言したのは豊中市議会の北川悟司議員。日本会議系の議員だ。彼は「幼いうちから男性の自覚、女性は女性としての自覚を育ててゆく」ことも強調した。
彼だけではない。”偏った学校教育”を「再生」しなくてはとする右翼的議員や団体の多いこと。各地の教育現場や教育委員会に執拗に介入する(注)。
その頂点に、日本会議国会議員懇談会の幹部安倍首相がいる。彼は以前、「ジェンダーフリーを進めている人たちは、国家家族の価値を認めないのが特徴。社会・文化の破壊にもつながっている」と発言した。そんな首相の妻の肝いりで、豊中市内に、家父長制や愛国心をたたき込む学校のプランが持ち上がった。日本会議系議員も動き「神風が吹いた」感じで…開校寸前だった。
優生保護法はなくなっても、今なお、このような議員たちが幅をきかしている。そんな日本で、障害を持った女性たちの人権は行政から長らく見捨てられてきた。
全国フェミニスト議員連盟は、優生保護法下の不妊手術被害者に対して、最高責任者2名に次のような要望書を郵送した。3月13日付。
◆◆旧優生保護法において実施された強制不妊手術被害者に対して謝罪と補償を求めます◆◆
厚生労働大臣 加藤勝信様
財務大臣 麻生太郎様
2018年3月13日
全国フェミニスト議員連盟は、男女平等社会を築くために余りに少ない女性議員を増やそうと運動を続ける市民と議員の団体です。女性の生涯に渡る健康と性と生殖に係る自己決定権の確保も重要な活動のひとつです。
「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」ことを目的とする優生保護法(1948~1996)のもと、日本では、半世紀もの長きにわたって、障害や病気を理由に、強制(または結果として強制)不妊手術が続けられてきました。被害者は、公的統計だけで、全国で約16,500名(北海道約2,500名、宮城県約1,400名、最年少9歳)、その7割は、女性です。
国の法律で「不良」な子を出生しないようにと規定された、障害や病気を持つ人たちは、子どもを産むか産まないかを自分自身で決める権利(自己決定権)をはく奪されていたのであり、たとえ不妊手術に同意したとしても、本人の本心からの同意とは言えない、と私たちは考えます。
同法は1996年「母体保護法」に改められたものの、日本政府は、過去の検証も国民へのスティグマ(人間の尊厳を傷つけるような烙印)克服の啓発も行わず、長年、謝罪や補償を求めてきた被害者の声に耳を貸そうともしませんでした。
それどころか今なお、「手術は当時の法に基づき合法的に行われた手術であり、過去にさかのぼって補償することは考えていない」として、被害者救済策をとろうとしてはいません。
こうした日本の優生手術強制に対して、国連の自由権規約委員会(1998年、2008年、2014年)、女性差別撤廃委員会(2016年)は、日本政府に被害者への謝罪と賠償を勧告しました。さらには、2016年3月、国連女性差別撤廃員会の総括所見で、日本政府に対し、関係者の処罰、謝罪及び補償を求める勧告がなされました。なおドイツ、スウェーデンは、国として謝罪と補償など被害者救済措置をとっています。
さらに昨年2月、日本弁護士連合会は、優生思想に基づく不妊手術と中絶は憲法違反(13条、14条)であり、被害者の自己決定権と「性と生殖の健康・権利」の侵害であるとし、国に対し、被害者に対する謝罪、補償等の措置を行うよう求めるとともに、資料の保全と速やかな実態調査を求めて意見書を提出しました。
そして本年1月30日、強制不妊手術を強制された宮城県の女性は、被害者救済制度を作ってこなかった国に対し、国家賠償法による損害賠償の訴えを仙台地方裁判所に起こしました。原告の義姉は「差別的な周りの目から黙って耐えてきた。国が誤りを認めて謝罪すれば国民の考え方も変わる。障がい者らが明るく過ごせる世の中に変わってほしい」と述べています。
全国フェミニスト議員連盟は、政府に、優生上の理由で不妊手術を強制(結果として強制も)された被害者への謝罪・補償と優生手術の実態解明を強く要望するとともに、産む・産まない(産めない)によって差別を受けることなく完全に個人の自由意志による選択ができる環境(スティグマ解消を含む)をつくる責務を、政府が有していることに鑑み、政府に対して、その環境づくりにまい進するよう、ここに要請いたします。
全国フェミニスト議員連盟
共同代表 ひぐちのりこ(宮城県仙台市議会議員)/ 日向美砂子(東京都小平市議会議員)
事務局 小磯妙子(神奈川県茅ヶ崎市議会議員)
【写真:現代書館から刊行されたばかりの『優生保護法が犯した罪』。内容(「BOOK」データベースより)優生保護法はなくなっても、今なお残る優生思想の陰。新たな被害証言、優生手術台帳の資料開示、日弁連「意見書」など、優生手術に対する謝罪と補償を求める運動の進展と資料を加えた増補新装版。 多くの人、なかでも議員・官僚の皆さんは必読】
【注:豊中市の日本会議系議員やその支持団体による行政への圧力を具体的に知りたいかたは、旬報社『バックラッシュの生贄:フェミニスト館長解雇事件』に詳しい】